32-3・トンナンの夜
テーブル席に合流をして一緒に食事をしながら、互いの状況を語る。
「早璃に会えたのは驚いたけど、
早璃のボディーガードが源と吉見ってのはもっと驚いたよ」
僕等3人の中で一番強いのは、多分、真田さんです。真田さんにボディーガードは必要ありません。僕等のことは「取り巻きAとB」くらいに考えて下さい。
「2人とも『戦いになったら後で驚いている人』タイプじゃん。
良く今まで生き残れたね」
「そんなことないよ!
吉見は機転が利くし、尊人くんなんて超強くなって、
あたし、何回も助けてもらってるんだよ!」
「吉見への評価は、まぁ、納得できる。
でも、源の評価は、早璃補正を差っ引いて考えなきゃだろうね」
「・・・補正?」
なんの補正かは解らないけど、「超強くなってる」が過大評価しすぎなのは正解です。
「凪ちゃんは?ここで何やってるの?ずっと南東村にいたの?」
「うん、転移した時からずっとこの村。
ちょっと前までは青と赤の騎士団が我が物顔をしてたから息を潜めてたけど、
いなくなったおかげで、楽々と出歩けるようになったよ。
まぁ、その所為で、さっきみたいなガラの悪い奴がのさばってるんだけどさ」
南東村は南都市と東都市の中間に在る緩衝地帯で、数日前まではサウザン兵とアーズマ兵が手柄争いをしていた。だが、チートの襲撃で両軍共にダメージを受けて、今はどちらも撤退をしてしまった。
つまり、今のトンナンには、治安を維持する者が不在で、自衛をしなければならない状況なのだ。
「早璃は?今まで何してたの?源や吉見とはいつから一緒?」
「吉見とは、30日くらい前に帝都で合流したよ」
「一番聞きたい答えがスルーされた。源とは?」
「え~~と、北東村で合流した」
「答えになってない!いつから?」
「吉見のちょっと前」
「いつ!?」
「え~~~~と・・・転移した直後」
珍しい光景。強気で口が達者な真田さんがタジタジになってる。
「え~~~~~っ!!!?マジで!?
もう50日近く一緒にいるってことじゃん!!」
「うん・・・まぁ・・・」
「見損なった?想像通りだった?期待以上だった?
早璃補正が入ってるくらいだから、見損なってはいないってことだよね?」
「うん・・・まぁ・・・」
「それで?」
「なにが?」
「少しくらい何かあった?」
「『何か』って、なによ?」
「もうっ!じれったいっ!どうなの、源!?」
何の話題か解らないのに、飛び火をしてきた。
「あの・・・なにが?」
「こんなに可愛い早璃と50日間も一緒にいて、血迷ったりしないの?」
「血迷うってなに?意味が解らないよ」
誤魔化したけど、意味は解っています。何度か血迷いそうになったけど理性で抑え付けているので、50日間も行動を共にできていると自負している。血迷っていたら、とっくに嫌われてるよ。
「こりゃダメだ。話にならん!ヘタレ!根性無し!」
「・・・ん?」
なんで怒られた?僕、怒られるようなこと、何にもしていないよ。
「ヘタレの話は広がりそうにないから、もういいや。
それで、50日間も、どこでどうやって生き抜けたの?
さっき、ここにいる理由を『色々あって』って言ってたけど、何が有ったの?」
「・・・うん」
それまでは笑顔だった真田さんの表情が暗く沈む。僕と吉見くんも同じ。語りたくないこと。だけど、説明しないわけにはいかない。
北東村から西都市に移動したこと、道中で柴田くん達の脱落を知ったこと、智人と袂を別って帝都に行ったこと、目の前で藤原くんや櫻花ちゃんの脱落を見たこと、僕等はチートに敗北をして逃げたこと、そして、残った仲間を集める旅をして南都市経由で南東村に来たこと。真田さんが中心になって、僕と吉見くんが補足をしながら説明をする。
「縫愛も死んじゃった。・・・あたしを助ける為に」
真田さん、涙ぐんでいる。失った直後に比べれば元気な顔を見せてくれるようになったけど、辛さを忘れたわけではない。僕だって同じなんだから解る。「絶対に現実世界に帰る」を希望にしておかないと、今でも、辛くて潰されそうになるからね。
「そっか・・・縫愛や藤原まで・・・」
「・・・うん」
「残念だし悔しいけど、私達が住んでいた現実世界とは違うんだよね。
後悔するよりもさ、早璃達が今まで頑張って生き残れたことを誇りなよ」
そう言ってもらえると、少し気が楽になる。
「特にさ、源はちょっと見直したかも。
町や村を合計で10カ所も廻るようなアクティブな奴なんて、
早璃と源くらいしかいないだろうね」
北東村からスタートして、北都市→北西村→西都市→西宿場町→帝都、北宿場町を含めてあちこちを動き廻り、南宿場町→南都市、そして今は南東村。内地の13地域のうち、まだ行ったことが無いのは東都市と南西村と東宿場町の3地域だけになる。
「何度か死を覚悟したけどね」
真田さんがいなければ、「ヘタレ」を1㎜も覆せないまま、とっくに自分の命を諦めていただろう。非力な僕が「まだ死ねない」と生にしがみつくことができたのは、ずっと真田さんが一緒にいてくれたから。それだけはハッキリと実感している。
「それでね、南都市でカミフ様の依頼を受けて、調合師さんに会いに来たの」
真田さんが説明を続ける。
「そっか、カミフさん・・・ね。
それなら問題無いかな」
「ん?なんの問題?」
長野さんの意味深発言が引っ掛かったので、質問をする。
「調合師ね、
だいぶ気難しいから普通に会いに行っても聞く耳を持たないんだけど、
『カミフさんの紹介なら大丈夫かな?』って思ってね」
「えっ?調合師を知ってるの?カミフ様の紹介が無いと会えないの?」
質問の解答を聞いて、長野さんの発言の意味深ぶりが増した。
僕等は、カミフ様の紹介で調合師に会いに来ている。逆を言えば、カミフさんの依頼が無ければ、調合師に会う理由なんて無い。だから「カミフさんの紹介があれば大丈夫」の意味が解らない。
「早速行こうか」
もう、だいぶ前に食事は終わっており、長野さんが立ち上がった。
「えっ!?今から!?調合師って気難しいんでしょ?」
「うん、だいぶ面倒臭い」
「なら、失礼になる時間じゃなくて、明日の朝の方が・・・」
「ど~せ、いつ行っても怒られるからさ。それなら早い方が良いでしょ」
そんなに気難しい人なの?怒られるの確定?どんだけ人嫌いなの?ものすご~く行きたくない。
僕は自分のことをコミュ障気味と思ってるけど、調合師のコミュニティ能力は僕以下なんじゃね?
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