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32-2・長野さん

「おうっ!なんだ、この飯は!?虫が入っているじゃねーか!!

 こんなもんに金を払わす気じゃねーだろうなぁっ!?」 


 ご飯屋さんで食事をしていたら、荒野で馬に乗って「ヒャッハー」って叫んでいそうな怖い感じの3人組の1人が騒ぎ出した。怒鳴り声を上げて店員さんを呼んでいる。


「うわぁ~・・・漫画の登場人物みたい」

「住人の知能レベルが低い世界だからね」


 真田さんは「汚物を見る」ような目で、ヒャッハー達を眺めている。


「対応する店員さんが可愛い女の子だったら助けてあげようか?

 源君と真田さんなら余裕だよね?」


 転移をしたばかりの頃は、ヒャッハー関係の人になんて、怖くて近付きたくなかった。だけど今ならば「格好と態度だけが怖い」程度の人など、楽勝できる自信がある。

 

「・・・まぁ、多分、余裕だけど」

「助けてあげたら『あるある』が発生するかもしれないよ」

「『あるある』は要らないなぁ・・・」

「懐かれれば、ご飯を無料にしてもらえるかもしれないじゃん」


 吉見くんが興味深そうに様子を見ていると、僕達と同世代くらいの女の子の店員さんが対応するために寄って行った。


「テメェ!この店は、客に虫を食わすのか!?

 間違って食っちまったじゃねーか!慰謝料寄こせ!」

「お客様がご注文なさったのは、うちの店の名物料理ですよね?」

「それがどうしたってんだっ!?」

「うちの名物は虫スープです!メニュー表にも『虫入り』と書いてありますよ」


「え゛っ!?」×3


 虫入りが前提の料理?僕等は慌てて自分達の注文した料理の具に虫が入っていないかを確認する。


「良かった~、入ってない」

「あたしのも大丈夫みたい」

「うわっ!マジか!?入ってた」


 吉見くんは店員さんに聞いてオススメを注文したので、虫入りだった。メニュー表を確認したら、よく解らない名前が付いている。多分、虫のことだろう。


「てんめぇっっ!俺様に恥をかかせやがったなっ!」


 赤恥をかかされたヒャッハーの人が店員さんに掴み掛かる!


「助けよう!」

「うんっ!」


 懐かれるのはメンドイけど、無視はしにくい。・・・ああ、念の為に言っとくけど、今の「無視」は「虫」と引っ掛けてるわけじゃないからね。

 僕達が店員さんを助けるために席を立った直後、カウンターで食事をしていた人が割って入り、ヒャッハーの頬に平手打ちを叩き込んだ。


「底辺は村から出ていけっ!」


 黒髪ポニーテールの若い女の人・・・てか、あれは?


「・・・えっ?凪ちゃん?」


 唐突だったので「人違いかも」と思ったけど、真田さんの言葉で「間違いない」と解った。クラスメイトの長野さんだ。


「このアマッッッ!」


 ヒャッハーが殴りかかるが、長野さんは楽々と回避をする。


「下手に出てりゃ、つけ上がりやがって!」

「はぁ、あんたバカなんだね?いつ下手に出た?」 


 ヒャッハーの人は、ポケットからバタフライナイフを出して、如何にもヒャッハーの人って感じに手の中でカチャカチャと廻しながら刃を出して、ヒャッハーらしく刃をペロリと舐めてから構えた。それまでは厭らしい笑みを浮かべながら眺めていたヒャッハー②と③が立ち上がって、如何にもヒャッハーの人って感じに拳を手の平で掴んで、指の骨をポキポキと鳴らす。


「うっへっへ!俺の刃がテメーの血を求めてる!」

「ねーちゃん!泣いて謝るなら今のうちだせ!」


 ヒャッハーの人達が、ヒャッハー語で長野さんを威嚇する。


「刃物を出したってことは、相応の覚悟ができていると解釈していいね!」


 長野さんが「本気の目」になって構えた。


「助けなくても大丈夫っぽいね」

「凪ちゃん、普段から強いからね」


 僕等は加勢をせずに見守る。なんかもう、噛ませ犬フラグ全開すぎて、ヒャッハーの人達が可哀想になってきた。


「死ねやっ!」

「ヒャッハー!!」


 ヒャッハー①が、ヒャッハー語を叫びながら長野さんに突進して、バタフライナイフを振り回す。ヒャッハー②と③が、長野さんを捕まえるため、背後に回り込んで手を伸ばす。しかし、長野さんは後方をチラ見した後、バックステップでヒャッハー②と③の間を擦り抜けて、厨房にいた店員さんに向かって手を伸ばした。


「その麺棒貸してっ!」

「はいよっ!」


 店員さんが投げた全長40センチくらいの麺棒をワンハンドキャッチして、ヒャッハーの人達に連続突きを叩き込む。


「ハァァッッ!!」

「ひゃッハ・・・あ・・・」 「ぐはぁ!」 「がはぁ!」


 はい、終了。一切、期待を裏切らない展開。ヒャッハー①②③は、白目を剥いて仰向けに倒れた。

 長野さんは、「返しておいて」と言って、絡まれていた店員さんに麺棒を渡す。長野さんが男子だったら、きっと店員さんは惚れている。・・・てか、長野さんは女子なんだけど、格好良すぎて同性から惚れられそうだ。


「凪ちゃんっ!」

「・・・ん?」


 真田さんが長野さんに駆け寄って行く。


「おおっ!早璃!なんで、ここにいるの!?」

「えへへっ!色々あってねっ!」


 2人は抱き合って再会を喜んだ。


 長野凪ながの なぎ。出席番号21番。なぎなた部。正確には剣道部なんだけど、「うちの学校にはなぎなた部が無い。なら作れば良い」と言って、剣道部に間借りをして勝手になぎなた班を発足させた。練習場の関係で、剣道部の人達とはたまに喧嘩をしている。剣道部エースの近藤くん以外は、なぎなたvs剣道の勝負で勝っているらしい。勉強の成績は上の中くらい。

 真田さんグループのリーダー格。気の強い長野さんと穏やかな沼田さんは性格が正反対に近いけど、真田さんが潤滑油になっている。

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