32-1・南東の村トンナンへ
本音では南東村・トンナンなんて行きたくない。「寄り道」としか思えない行動などせず、仲間集めに専念したい。だけど、後ろ盾を得る為に「必要な遠回り」と割り切る。
「6人で動くのではトンナンでの滞在費が大変だろう。
数人は仕事を斡旋して面倒を見てやるぞ」
確かに、調合師に会って勧誘をする任務に6人も必要無い。一番必要なメンバーは、弁が立つ吉見くん。戦闘ができる僕がボディーガードとして同行する。まだ怪我が完治していない我田さんには残ってもらうべきだろう。
「あたし、トンナン組っ!」
真田さんが立候補をする。
「私は残ってもいいかな?ちょっとまだ、東の平原には行きたくない」
輪島さんは「残る」を選んだ。トンナンまでの道中にはチートの襲撃でたくさんの仲間を失った戦場がある。僕だって、櫻花ちゃんや藤原くんを失った戦場は可能な限り避けたい。だから、気持ちは理解できる。
「アタシは・・・う~~ん、どうしよっかな~?
サウザンとトンナンで、どっちが面白いかな~~?」
由井さんは迷っている。
「カミフ様、調合師さんって、男性ですか?女性ですか?」
「女だが、それがどうした?」
「トンナン行きは、僕と真田さんと吉見くんね!」
由井さんには転移時に与えられた特殊能力とは別で「オッサンキラー」のスキルがあるっぽいので、調合師さんが男性なら一緒に来てもらおうと思った。反面、由井さんには「女性をイラッとさせる」スキルというか、真田さんのペースを乱しまくるスキルがあるので、調合師が女性ならば連れていくメリットが無い。
「由井さんは接客が上手だから、サウザンに残って僕等のために稼いでおいて!」
「りょうか~い!」
今から発てば、暗くなるまでにはトンナンに到着できるだろう。由井さん&我田さん&輪島さんを残して、僕達は駆け足で宿に戻って出発の準備を整える。
「あ~~~・・・ミスった」
トンナン行きのメンバーで馬に乗れるのは真田さんだけ。馬移動ができるのに全員で歩くのはバカげている。つまり、真田さんが馬に乗って、僕と吉見くんは歩く。もしくは、どちらかが真田さんの後ろに乗って、1人は歩くという選択になる。
「う~~~~~~まだ、体が重い」
しかも、吉見くんは、まだ筋肉痛から回復していない。
「真田さんの後に乗せてもらいなよ。僕は歩くからさ」
「申し訳ないけど、そうさせてもらうよ」
誰が決めたわけでもないけど、真田さんの一緒に馬に乗るのは、沼田さん以外では僕だけ。なんとなく、「僕専用の場所」みたいな気分になっていた。だけど、僕が独占をする権利なんてあるわけがない。
「尊人くん、1人だけ歩きで大丈夫?」
「部活動で鍛えてるから、平気!」
「歩かせちゃってすまないね、源君」
「気にしないで、吉見くん」
体力的には問題が無いので、虚勢は張っていない。だけど、気持ち的にはやせ我慢をしている。なんでだろう?僕が吉見くんに馬を譲ったのにさ。真田さんと吉見くんが馬に2人乗りしてるのを見ると、軽くイラッとするというか、ちょっと寂しい。
「いい加減、馬に乗る練習をしなきゃだよな」
僕が馬に乗れれば、吉見くんを後に乗せて、真田さんの後は空けておくことができた。そう思うと悔やまれる。
だいぶ前(20日くらい前)から「馬に乗れるようににならなきゃ」と思っているんだけど、未だに一度も練習していない。ヤバいな。「そのうちやる」と言いながらやらないのは、「やる気が無い人」「できない人」「やらないのに言い訳だけ立派な人」の思考。そ~ゆ~スタンスは嫌いなんだけど、馬に関しては「できない人」になりつつある。
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道中ではリザードマンの1グループを蹴散らして、日が完全に沈む前には南東村に到着した。
村の規模は北東村と同程度だけど、雰囲気は少しのんびりした感じかな?南都市と東都市の中間に在る緩衝地帯で、普段はサウザンの兵とアーズマの兵が「大きなトラブルにならない程度の意地の張り合い」をしているらしいが、今はどちらの兵も常駐していない。
「村の北側って言ってたよね。ど~する?」
カミフ様からは、「調合師は村の北西に在る小さな家に住んでいる」と聞いている。
「明日の朝から探そっか。
さすがに、この時間帯に押しかけるのは失礼だよね」
真田さんが「明日の対応」を提案して、吉見くんが賛成をする。もちろん僕も賛成。気難しい人だったら、怒らせちゃうかもしれない。
「なら、今日の宿を決めてご飯にしよう」
調合師の勧誘に成功すればカミフ様が支払ってくれるんだから、この村で一番高い宿に泊まって、すっごい御馳走を食べて贅沢をしよう!・・・なんて度胸は無い。
堅実に、村の北方面(調合師の居住区側)に在って安い宿をチョイスする。
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