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31-5・プレゼンテーション

「僕等がチート討伐に成功した場合は、

 カミフ様が僕等を見出して部下にしてチートを討たせたことにする。

 ビジネス面での宣伝効果は抜群ですよね?」


 吉見くんが膝行(正座のまま前に進む)をしてプレゼンを始めた。


「僕等を保護するのではなく、僕等への投資と考えてもらえませんか?」

「ほぉ、おもしろい。続けたまえ」


 カミフ様が吉見くんの意見に興味を示して、ビジネスモードの顔になる。


「特に、北都市ノスは、公爵を失い、町はチートの軍に焼かれました。

 チート討伐の総大将という肩書きがあれば、復興を商売に繋げられますよね?」

西勇者チートを敵視しているノスならば、抜群の効果が得られるだろうな」

「ノスだけでなく、東都市アーズマもチートを敵視していますし、

 先日のルービイ騎士団襲撃で、この南都市サウザンとも険悪です。

 それどころか、足元のパルー騎士団にも火種はあります。

 チートは、慢心をしすぎて、周りを省みず、敵を増やし続けています。

 僕等が討てば、貴方はどの都市でも英雄扱いに成りますよ」

「確かに君の言う通りだ。だが、勝てる見込みは?

 私は、君等と共倒れになって何もかもを失う気はないぞ」

「正直言って、勝算が高いとは言えません。だから仲間を集めて勝算を上げます」


 クラス1の頭脳派と、才覚で成功を収めた大商人の弁舌を、僕等は黙って聞いているだけ。何か喋っても邪魔になりそうだし、なによりも、吉見くんみたくポンポンと言葉が出てこない。それどころか、聞いてるだけで脳ミソが飽和してきた。


「それでも、討伐に失敗をする可能性は有ります」

「私に、そんな自信の無い君等と組めと?」

「信頼を得たいので嘘は付きたくないんです。

 だから、包み隠さずに真実を説明しています。

 敗北をした場合は『無関係』または『騙されて利用された』ことにして下さい」

「つまり、トカゲの尻尾切りをして良いと言うのだな」

「討伐失敗の汚名は、僕等が背負います。

 貴方が背負うリスクは僕達への投資金、リターンはチート討伐成功の知名度。

 ハイリターンを求めるビジネスにノーリスクはありませんよね?

 これでどうですか?」

「成功の確率が高いとは言えないが、成功した場合の利益は莫大。

 対する損益は、少年少女数人を数日間養う経費だけ・・・ふむ、悪くないな」

「では、話を受けてもらえ・・・・・・・・・」

「悪くない話だが、まだ前提が整っていない。

 私は、まだ君達を信用したわけではない。

 先程も言ったが、君達が打倒勇者と仲間集めのフリをして、

 『今日もダメだった』『そのうち決行する』などと言って、

 何の実績も示さずに穀潰しを続けるようでは話にならない」


 そりゃそうだ。吉見くんのプレゼンは見事だけど、あくまでも「僕等がかなり能動的に動く」が大前提になっている。まだ僕等を信用していないカミフ様が、「僕等が能動的に動く」を受け入れるわけが無い。


「1つ、私の依頼をクリアしてくれ。

 それが、君等を食客として向かえ入れる条件だ」


 南都市サウザン東都市アーズマの中間にある南東の村・トンナンに、優れた調合師がいる。その調合師が作った薬は、薬草を煎じた従来の薬の10倍以上の効果があるらしい。


「あれ?それって、帝都で我田さんが矢の傷に塗った薬?」

「そう言えば医者が『サウザン産の合成薬』って言ってたな」


 カミフ様は、合成薬を安定的に確保したいので、調合師を屋敷に招こうとした。しかし、調合師は「他人の庇護下では窮屈」と言って受け入れず、今でも南東村トンナンで気の向くままに合成薬を作っている。


「需要の高い薬なのだがね、供給のスケジュールが調合師の気分次第なんだ」


 今は、カミフ様、もしくは、使いの者が、数日おきにトンナンに行き、合成薬が有る場合は買い付けているらしい。


「何日かかっても良い。

 君達がトンナンに行って調合師を説得して、サウザンに連れてきてくれ。

 成功をすれば、トンナン滞在中の経費は全て払う」

「説得に失敗したら?」

「もちろん、全ての出費が君達の自腹。私の信用も得られない。

 『ハイリターンを求めるビジネスにノーリスクは無い』

 それは、私だけではなく君達にも該当するってことだ」


 さすがは、転移した世界で財を築いたビジネスマン。一筋縄ではいかない。


「な、なんか都合良く、難易度の高いパシリに使われてしまったような気がする」


 吉見くん、だいぶ頑張ったけど「負け」なんだろうな。僕だったら「惨敗」どころか、話も聞いてもらえなかっただろうけど。

 モンスターに襲われてる人を助けたら大富豪だったとか、由井さんを贔屓しているオッサンが実は大富豪だったとか、世間知らずの高校生のプレゼンで簡単に説得される・・・などなど、そんな御都合主義は起こらないらしい。

 第5話で尊人が紙の話題を出した時点で、終盤に紙商人がパトロンになる展開はイメージしていた。尊人は「現実世界の技術を持ち込めば商売になるかも」と考えながら、モーソーワールドに永住する気が無いので実行しない人。紙商人は実行をしてモーソーワールドで財産を築いた人。どっちが正解かは、それぞれの価値観で変わるんだろうな。

 紙商人はあえてビジネスモードで少年少女を試しているけど、実際は、ビジネスに関係無くハナっからパトロンになるつもり。尊人達にチートを討つ意思が無くても保護をするつもりで接している。

 食客への出費予算、北都市の被害額と紙商人が割り込んで商売をした場合の上限利益、チートを討伐した場合の宣伝効果、各領主から信頼を得た場合にどう商売に繋げるのか、これらの数字が全く無いプレゼンなど、ただの理想論。吉見は頑張っているけど、紙商人は「吉見のプレゼンなんてどうでも良い」と思いながら熱意を確かめている。

 モーソーワールドの住人なら、あのプレゼンでも説得できるだろうけど、紙商人はリアルワールドからの転移者なので、世間知らずに説得されるようなバカではない。

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