表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/61

31-4・カミフ様

 翌朝、カミフ様のお屋敷に行って、強面の受付の人に話し掛けたら、「話は聞いている」と言ってすんなりと通してくれた。


「さっすが、パパ。ちゃんと、カミフ様にお願いしてくれたんだね」

「ゴウちゃんさんがカミフ様ご本人だからね」

「はぁ?ミナちゃんなに言ってるの?パパがカミフ様のわけないぢゃん」


 由井さんは“お約束展開”に突入していることに気付いていないらしい。まぁ、ゴウちゃんさん的には、「カミフ様とご対面」で「僕等は仰天する」的なパターンを期待しているんだろうから、魂胆はバレバレだけど、驚く演技はした方が良いのかな?

 ちなみに最近、僕は由井さんからは「ミナちゃん」と呼ばれるようになった。女の子の名前みたいでイヤなので「やめてくれ」とお願いしたけど、変更してもらえない。


「うわ~・・・スゴい」


 門を通過した先には、広大な庭が広がっていて、整った道が延びており、左右には美しく飾られた庭木が並んで、此処が財力を惜しみなく見せ付けようとする権力者の所有地であることを伝えている。所有者の命を狙って飛び込んでくる連中が馬を暴走させられないように、噴水や彫刻像などが道の真ん中に建っており、意図的な障害物、兼、権力を魅せるアートの役割をはたしている。

 同じ広すぎる庭でも、品があるホーマン公のお屋敷とは違って、成金趣味って印象だ。


「商人のお屋敷ってより、ヤ○ザのお屋敷・・・だよね?」


 その敷地の中心に、3階建てで、城壁と緑瓦の天守閣ふうの立派なお屋敷が建っている。近くで見て確信に変わった。中世ヨーロッパの町並み(しかも赤一色)で一際異彩を放つ純和風の建物。間違いなく、この世界の住人とは違う価値観の持ち主=転移者のお屋敷だ。


「ユイお嬢様!お連れの方々、よくぞいらっしゃいました!」


 お屋敷の前で、受付の人と同じ江戸時代の旅装束(小袖&股引&引廻し合羽を着て、草鞋を履いて、手甲&脚絆&脇差を装備している)の人達・・・つまり、江戸時代のヤ○ザファションの人達が整然と並んで出迎えてくれる。


「由井さん以外の情報は『その他大勢』としか伝わってないのかな?」


 靴を脱いで板の間に上がり、執事っぽい人(・・・と言うか若頭っぽい人)に案内してもらって広い玄関から階段へ。

 玄関には金色の馬車と繋がれている羽の生えた白馬の剥製が、階段の踊り場にはライオンと蛇と山羊の頭が付いた四足歩行の獣の剥製が、2階の上がり口には全長3mくらいのドラゴンの剥製が飾られている。


「ペガサスとキマイラとドラゴンパピー?」

「馬に羽の飾りを付けたんでしょ」

「いえ、外地で狩ったモンスターの剥製でがんす」

「・・・・ああ・・・そうなんですか。すごいですね・・・」


 この世界には、僕等が知らないモンスターが多数存在しているらしい。


「こちらの部屋で、しばらく待ってつかぁさい」


 通されたのは、学校の教室と同じくらいの広さの畳の部屋だった。上座は「お殿様が座る場所」みたく一段高くなっているけど、庭や廊下みたく“成金趣味”は感じられない質素な部屋だ。


「こ~ゆ~のって部屋の真ん中で待てば良いのかな?

 それとも隅っこに座ってた方が良いのかな?」

「・・・わかんない」


 僕等は高校生なので「組長さんを待つ時の礼儀作法」なんて知らない。社会人になれば習うのだろうか?「とりあえず端にいれば無礼にはならないんじゃね?」と考えて、壁際に並んで正座をして待つ。



 数分後、口ひげを生やして“トランプのキング”みたいな服を着た恰幅の良い中年男性が入ってきた。「お殿様が座る場所」には座らず、並んで正座をしている僕等の前に腰を降ろして胡座をかく。


「やぁ!私が、商人のカミフだ!

 君達が転移者のユイちゃんと愉快な仲間達だね。

 詳細はゴウさんから聞いてるよ」

「えぇぇっっ!?」


 もちろん、僕と吉見くんは驚きました。だって、ゴウちゃんさんじゃないんだもん。お約束展開に突入してなかった。ゴウちゃんさんは、本当にカミフ様の“ただのダチ”だったらしい。


「仲間を集めて西の勇者チートを討ちたい。

 だが、その為には拠点と経済力が必要。

 仲間集めに集中をしたいから、稼いでいる余裕は無い。

 だから、私の後ろ盾が欲しい。

 君達の要望は、これで合っているかな?」


 ゴウちゃんさんがシッカリと伝えてくれたっぽい。話が早くて助かる。


「若人を支援したい気持ちはある。だが、私はビジネスマンだ。

 なんのメリットも無いことには金を出せない。

 君達が打倒勇者と仲間集めのフリをして何の実績も示さなければ話にならない」

「僕達は本気です」

「ならば、その『本気』を示してほしい。

 君達に出資をするメリットはあるのかね?」


 仲間集めと打倒チートは本気で考えているけど、示す手段なんて無いし、成功を約束することもできない。カミフ様が僕等を養うメリットなんて何も無いんだから、提示なんてできるわけがない。

 だけど、困惑する僕等とは対照的に、吉見くんは自信を持った表情でカミフ様を見詰める。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ