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31-3・ゴウちゃん

 もちろん、2人部屋2つ(女子用)と団体部屋のベッド2つに変更しました。

 宿の手配を終えたあと、ご飯屋さんに行くついでに、カミフ様のお屋敷を再確認する為に、町の中心部に戻った。


「受付の人、さっきと同じだったね」


 別の人に交代していたら再アプローチをしたかったけど、カミフ屋敷の門番は怖い人のままだった。

 仕方が無いので素通りをして、閑散とはしていないけど混雑もしていないご飯屋さんに入る。


「おぉっ!メニューにライスがあるぞ!」


 お米は帝都にもあったけど、メッチャ高額で「お金持ちの食べ物」って感じだったので、食べる機会は無かった。僕がご飯(白米じゃないけど)を食べたのは、40日くらい前。西都市セイのホーマン邸でご馳走になって以来になる。 

 南都市サウザンでは、比較的安値で食べることができるのだ。米食が懐かしくて、全員がライスを注文する。


南都市サウザンは、米を栽培しているからね」


 感動しながらお米を食べていたら、お店の主が教えてくれた。米は、カミフ様が持ち込んで栽培に成功して以降、南都市サウザンの名産になっているらしい。


「・・・カミフ様ですか」

「カミフ様が来るまでは『米を炊けば美味くなる』なんて発想が無かったからな。

 稲なんて、ただの雑草。実は動物か虫の餌になるだけ。

 誰も育てようとは思わなかった」


 米を炊くなんて、現実世界の知識が有れば誰でも解る。カミフ様が「米をご飯にする」技術を持ち込んで、水が豊富なサウザンで米栽培を推奨したのかな?カミフ様が転移者の可能性は高いように思える。


「カミフ様って、どんな人なんですか?

 会うことってできますかね?」


 紙商人の情報が欲しい。「何かの糸口になるかも」と、お店の主に尋ねてみた。・・・が、運悪くお客さんが来店して、会話は途切れてしまう。


「いらっしゃいませ!」

「とりあえず、美味い酒をくれや!」

「んぉぉっ!?」


 来客を見た由井さんが奇声を上げた。角刈りで眉毛が太くて強面の40代くらいの男性だ。


「おや?ユイじゃねーか!」

「パパぁっ!」

「オメー、こがいな所でなにやってんだ?」

「ん~~~~・・・ちょっと色々とね。

 そんなことより、パパのおうちってこの辺だったの?」

「まぁ~な」


 顔が全然似てないけど、由井さんのお父さん?ど~ゆ~こと?父娘で転移してた?

 真田さんも全く同じ疑問を感じたらしく(・・・てか、全員が同じ疑問を持つよね)、由井さんに確認をする。


「ちがうちがう!

 ホントのパパぢゃなくて、お友達ね」

「二廻りも年上の人と、どこで友達になったの?」」

「帝都に出張があると南宿場町ミドメリデに寄って、

 アタシがバイトしてた宿に泊まってくれたお客さんなの。

 名前は遊び人のゴウちゃん。

 パパって呼んであげて、一緒にご飯食べてあげると、お小遣いくれるんだよ」

「えっ?・・・援交的なパパ?」


 真田さん、ドン引きしてる。真田さん以外(僕含む)もドン引きしてるけど。


「一緒にご飯食べるだけで、変なことはしないから、エンコーぢゃないよぉ」

「変なことしなくても援交でしょ」

「パパでも、友達でも、援交でも、何でもええ。

 ここで会うたのも何かの縁じゃ。

 オメー等の飯代くらいおごっちゃるけぇ、好きなもんを腹一杯食え!」

「んぉぉっ!ありがとっ!パパ、太っ腹っ!」

「おうっ!そこ、ちいと詰めてくれや」


 6人でいっぱいのテーブル席なのに、ゴウちゃんさんが相席を要求して由井さんの隣に座った。


「おい、オッサン!狭ーよ!飯を食いたきゃ1人で食え!」


 隅に追いやられた我田さんが、睨み付けて文句を言う。


「おう、ねえちゃんよぉ!

 好きなもんおごっちゃるんじゃけぇ、

 『狭い』くらいでガタガタ抜かすんじゃねー!」


 だが、ゴウちゃんさんに一喝されて黙り込んだ。


「・・・で?ユイは此処に何をやりよるんじゃ?」

「ん~~~・・・

 カミフ様に会いに来たのに受付の人に追い払われちゃって困ってんの」

「ほぉ・・・カミフに?何の用が有って会いに来たんじゃ?

 わしゃカミフとダチじゃ。理由次第では繋いじゃってもええでぇ」

「さっすが、パパ!え~っとね、カミフ様の財産でアタシ達を養って・・・」

「由井さん、それ以上は・・・」


 目的はカミフ様にパトロンになってもらうこと。大っぴらに話すような話題ではないので口止めをしたんだけど、由井さんは「パパは信用できる」と言って説明を続ける。


「ねぇ、源君」


 吉見くんが袖を引っ張って僕の注意を引いてから耳打ちをしてきた。


「なんかさ、これって“お約束”と言うか“あるある”だよね?」

「吉見くんもそう思う?」


 僕も若干、「テンプレじゃね?」と感じていた。カミフ様との面会が許されて、会ってみたらゴウちゃんさんで、「えぇっ!貴方はあの時のゴウちゃんさん!」「がっはっは!黙ってて済まなかったな!オマエ等の人間性と真意を確かめたくて、正体を隠して接近したんだ」ってパターン。昔話や童話で良く聞くやつだ。


「・・・つまり、ゴウちゃんさん=カミフ様と気付かないフリをしつつ」

「『僕等が好青年』と印象付けなければならないってことだな」


 僕と吉見くんはアイコンタクトの後に頷き合い、好青年ぶりアピール作戦を開始する。


「ゴウちゃんさんって、なんのお仕事をしているんですか?」

「わしゃ遊び人じゃ!仕事なんてしねー!

 さっきユイが説明したのに聞いとらんかったのか!?」

「ああ・・・すみません」

「カミフ様とはどんな関係で?」

「ダチ言うたじゃろう!オドリャー、耳が無ーのか!?

 次に下らねーこと聞いたら、

 耳を削いで、口に釘を打ち込んで開けんようすんぞ!」

「ご、ごめんなさい」


 ダメだ。強敵すぎて僕等では対処できない。ゴウちゃんさんのご機嫌取りは由井さんに任せて、余計なことをしない方が良さそうだ。

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