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31-2・紙商人のお屋敷

 一定の警戒態勢だったので、塔の中段までしか登れなかった(最上階は監視体制になっている)。だけど、町を眺めることくらいはできた。町の中央付近に建つ庭付きの超大きなお屋敷が、この町の領主の邸宅だろうか?屋根だけではなく壁も赤い。騎士団も赤いし、「赤」は領主の趣味?この都市の法律で「赤」に決められている?


「あれかな?どう思う?」

「あれだよね?」

「どう考えてもあれしかないね?」


 領主の大邸宅の東側(手前)に、赤茶色の外壁と赤い屋根の洋風の建物に混ざって、1つだけ“日本の城”が建っている。領主の家と同じくらいの大きさで、一軒だけ色違いなので、もの凄く目立っている。


「行ってみよう!」


 階段を駆け下りて吉見くん達と合流して「領主の家より目立つ和風の城」について説明をする。


「赤が風土としか思えないこの都市で別の色が許されていて、

 しかも大邸宅ってことは、領主すら気を使うほどの権力者ってことになる。

 家の造りが違うのは、現実世界の知識がある証明。

 紙商人の屋敷かどうかは解らないけど、転移者と関係がありそうだね」


 吉見くん達も同意見だったので、早速、和風のお屋敷に向かう。



 馬で移動をして1時間弱。僕等は、和風のお城前に到着した。あきらかに、周りの建物と雰囲気が違う。城郭に囲まれていて、簡単には中には入れそうにない。正面に大きな門が在り、江戸時代の旅装束みたいな衣装(小袖&股引&引廻し合羽を着て、草鞋を履いて、手甲&脚絆&脇差を装備している)の強面の人が2人立っていた。

 

「紙商人の家じゃなくて、テーマパーク?

 受付の人・・・かな?」

「話しかけてみなよ」

「なんかちょっと怖い」


 え~っと・・・あれだ。テレビの時代劇でしか見たことが無い「任侠の人」ってイメージだ。


「あ~ゆ~の我田さんの得意分野でしょ?脇坂くんもあんな感じだよね?」

「脇坂は粗忽なだけ。モノホンじゃねーよ。

 オマエが言い出しっぺなんだから、オマエが行け!」

「え~~~~・・・僕が?」


 眺めていても話が先に進まないので、正門に寄っていって、受付の人に話し掛ける。・・・てか、話がしたいだけなのに、受付の人が帯刀した脇差の柄に手を添えて構えた!


「・・・あの」

「何の用じゃ、小僧!?見ん顔じゃのぉ!」

「このお屋敷は、紙商人さんの・・・」

「オドリャー!なして、ここがカミフ様の屋敷と知っとる!?」

「さては、カミフ様の成功を妬む組織の刺客じゃのぉっ!!」

「・・・ち、違います。紙商人さんとお話しがしたくて」

「つばえるな小僧!おととい来やがれっ!

 カミフ様が、オドレみてーな得体の知れんガキに会うわけが無いじゃろう!」


 全く話にならない。深々と「ごめんなさい」をして、離れて見守っている仲間達の所に戻る。


「ダメだった」

「見てれば解るよ」

「どうする?塀をよじ登って忍び込む?」

「無断で侵入したのが見付かったら、『どこの組の者だ!?』とか言われて、

 問答無用で殺されそうだね」


 そもそも論として、大きな都市の領主と同等の権力者なのに、アポ無しでいきなり押し掛けて会わせてもらえるわけがない。社会人なら当たり前のことなんだろうけど、まだ高校生の僕等は、その常識を知らない。


「これからどうする?

 『紙商人さんのお屋敷か?』って聞いたら否定しなかったから

 間違い無いと思う。

 『カミフ様』って名前らしいね。」

「今日はどっかの宿に泊まって、明日もう一回来てみる?

 明日なら、受付の人が怖くない人になってるかもしれないし・・・」


 真田さんの案に乗っかりたいけど、明日になったら受付の人が優しい人で「誰でも簡単に通してくれるようになる」とは思えない。


「もしくは、『カミフ様』が出て来るまでお屋敷の前で待つとか?

 商人なんだから、ずっと家に引き籠もってるってことは無いよね」


 待ち伏せしてるだけでも、受付の人に文句を言われそう・・・と言うか、受付の怖い人達、さっきからずっと僕達を睨んでいる。


「吉見くんの特殊能力ストラテジーで、『カミフ様』と接触する作戦を立てられないの?」

「攻略相手のデータ0じゃ無理だよ」


 カミフ様がどんな人か解らないと、吉見くんでも攻略不可能。


「アタシのお色気で受付の人を誘惑しよっか?」


 クラス1の幼児体型で、皆から「小坊」扱いをされてる由井さんに誘惑される人などいないだろう。・・・もとい、一定数はいるかもしえないけど、それはそれで怖い。


「とりあえず、泊まる場所を確保しようか。

 ず~っと受付の人に睨まれ続けるのキツいし・・・」

 

 都市中心部の宿は高いので、郊外に移動して古宿に入る。部屋の手配は「慣れている」って理由で由井さんに任せた。


「全部で6人泊まりま~す!

 お風呂は入るけど、ご飯は要らないから安くしてね~!

 アタシ、宿のバイトしてて相場は解るからぼったくらないでね」

「やれやれ、お嬢さんには適わないな。了解、サービス料金にしとくよ」

「団体部屋のベッド1つと、3人部屋を1つと、

 シングルの個室1つでお願いしま~す」

「・・・・・・・・・・ん?」


 色々とおかしい。シングルの個室1つって誰の部屋?由井さんだけ1人部屋で、真田さんと我田さんと輪島さんは3人部屋?


「違うよぉ~!

 こ~ゆ~お宿って、空いてるベッドを入れて3人部屋まではできるけど、

 スペース的に4人部屋は難しいの。

 アタシはみんなとお話ししたいから、3人部屋で寝るよ」


 そもそも論として、なんで団体部屋のベッドを1つしか手配しない?6人いるのに、5人分の寝床しか無いじゃん。


「バカップルはベッド1つで寝てもらうの!

 こ~ゆ~ところで経費節減しなきゃね!

 古い宿だから“声”は筒抜けになっちゃうから気を付けてね!」


 バカップルって誰と誰?吉見くんと我田さん、もしくは、吉見くんと輪島さんかな?全然気付かなかったけど、吉見くん、誰かと付き合ってたの?


「バカじゃねーし!」


 僕としては、僕はサッサと団体部屋のベッドを獲得して、1人部屋は吉見くんと、我田さん、または、輪島さんに押し付けるつもりだったのに、真田さんが反応しちゃった。


「真田さん・・・先ずは『バカ』以外の部分を否定しようよ」


 真田さんが「バカ」しか否定しないから、由井さんは毎回のように、僕と真田さんを相部屋に押し込もうとするのではなかろうか?



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