31-1・サウザンの町
森を抜けた直後、斜め前方にモンスター2人を発見。オーガ(雄)とオーグリス(雌)だ。オーガは鉄の胸当てと革の腰布、オーグリスはビキニアーマーを装備している。
「真田さん!」
「了解!」
今は少しでも戦闘経験を積みたい。オーガ達は街道から離れたところにいる。素通りをすれば交戦せずに済むけど、真田さんにお願いして馬の進行方向をオーガ達に向けてもらった。
「富醒・レンタル!ファイヤーウインドミル!」
馬上(真田さんの後)から、オーガ達目掛けて火の玉を連射!相変わらずノーコンだけど、何発かは着弾した!
「そのまま馬を走らせて通過してっ!」
真田さんの駆る馬がオーガの脇を通過!
「アーマーファンブル発動!」
先生の剣を抜刀して馬の背から飛び上がり、オーガに斬りかかる!
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剣の腕と特殊能力を駆使してモンスター2人を瞬殺!・・・できれば格好良いのかもしれないけど、オーガ&オーグリスに圧勝なんて無理。真田さんが馬上から火炎魔法で援護をしてくれて、どうにか倒すことができた。
「どっかで、紙商人とか、紙商人の娘がモンスターに襲われてないかな~」
「ん?なんで?」
「だって、あたし達が助けてあげれば、恩を売れて、信用してもらえるじゃん。
こ~ゆ~時って、だいたい、そ~ゆ~展開になるんだけどな~」
そんなに都合よく話が進んだら、誰も苦労はしない。
「真田さんて、そ~ゆ~『あるある』は嫌いじゃなかったっけ?」
「うん、『人生舐めてる』感があって好きじゃないんだけどさ、
今は切羽詰まってて悠長なこと言ってられないから、
少しくらい『御都合主義』に頼りたいな~って思っちゃってね」
確かに、「紙商人と面識を作る」はただの通過点で、大変なのはそのあとなんだろうから、途中経過くらいは手を抜きたい。だけど、周辺を見廻しても、都合よくモンスターに襲われている豪華な馬車や気品有る娘さんなんていない。
「苦戦せずにオーガを倒すなんて凄いじゃん!」
我田さん&吉見くん、輪島さん&由井さんが、馬を駆って寄ってきたので、気持ちを切り替える。
「オーグリスのビキニアーマー、我田さんに似合いそうだけど戦利品にする?」
「いらね。乳と股しか防御してねー鎧なんて、エロいだけで、役に立たねーだろ」
「なら、アタシが装備しようかな~」
由井さんが立候補をしたので、ちびっ子がビキニアーマーを装備した完成図を想像してみる。
「・・・サイズが全く合わないだろうから、止めた方が良いんじゃね?」
僕の腿に真田さんのローキックが入った。
「イテッ!」
「尊人くん、今、エッチな想像したでしょ?」
「してないよ~!」
正確には「想像しなかった」ではなく、「全体的に幼児体型な由井さんには似合わなすぎて想像できなかった」です。
「この胸当て、どう思う?」
オーガの胸当てを剥いで装着してみた。胸当てなのにお腹まで隠れてるし、二の腕が1/3くらい胸当ての中に隠れちゃってる。
「もの凄く動きにくくなりそうだよね」
「・・・だよね」
僕は鎧が無いので、オーガの装備していた鉄の胸当てが欲しかった。でもサイズが大きすぎる。胸当てとは、防御力が低い代わりに動きやすさを重視した鎧なのに、サイズが合わなすぎて動きにくくなったら本末転倒だ。アジリティの特殊能力を活かす為には、機動力優先の装備をしたい。
「尊人くんの体格だと、ホブゴブリンの鎧を奪うのが丁度良いんだろうね。
金の胸当てを装備しているホブゴブリンがいれば良いのにね」
「そんな上等な鎧を着ているホブゴブリンなんていないでしょ」
「オマエがメスのビキニアーマーを装備したら良いんじゃねーのか?
動きやすそうだし、華奢で“男らしさ”が足りねーから、似合うんじゃねーか?」
我田さんがムチャ振りをする。
「尊人くんなら、案外似合うかも」
しかも、真田さんが悪のりで同意をしたので、僕がビキニアーマーを装備した完成図を想像してみる。
「そ、それじゃ・・・ただのヘンタイだよ」
剣、盾、雄の胸当てを戦利品として回収して馬に積み、南都市に向けて出発をする。
道中でモンスターを見付けるたびに襲撃をして、戦闘経験値と戦利品を獲得していた。僕等に敵意の無いモンスターを倒すんだから、罪悪感はある。だけど、「僕等が見過ごしたら、次に通過する人達が襲われるかもしれない」と割り切っている。
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南の都市・サウザンが見えてきた。町を守る高い防壁の外側には、幾つもの水田があった。
「やっぱり、お米作りが盛んなんだね」
町の広さ的には北都市や西都市と同程度なんだけど、帝都の広さに慣れてしまったので、それほど驚かない。
「うわっ!赤いっ!!」
目に見える範囲の建物の屋根が全部赤い。町全体を覆っている石壁や建物の壁が全部赤茶色だ。領主の趣味、もしくは、住民性なんだろうか?
「目が疲れそう」
「そのうち慣れるでしょ」
門を通過して町の中に入ったら、人工的に作られた道や小型構造物も赤茶色で、「植物と土以外は赤と赤茶色しか無いんじゃね?」って町並みだった。
「僕達の格好・・・目立つね」
住人達の服も赤系ばかり。必然的に白やグレーやベージュ系の服を着た僕等は、町から浮いて見えて、「余所者」感が丸出しだ。
「赤い服、買おうか?」
この都市の騎士隊はチート率いるパルー騎士団に敗北をしたばかり。余所者を警戒するのではないか?
「部外者を見る目は厳しいだろうけど、無駄な出費は避けたい。
僕等みたく“目立ちすぎる露骨な余所者”なら、
むしろ警戒されずに済むと思うよ。」
「・・・なるほど」
「赤服を買うかどうかは、この町を拠点にするかどうかを決めてからにしよう」
吉見くんが言う通り、「町に馴染む気の無い余所者感」が丸出しなら、他都市のスパイや内通者とは誰も思わないだろう。
「あの塔、西都市の塔みたく登れるかな?」
「おぉっ!いいねっ!」
1㎞くらい離れた場所に建っている赤茶色の物見用の塔を指で差して提案をしたら、真田さんが直ぐに同意をしてくれた。
「源君、真田さん、観光に来たんじゃないんだよ」
吉見くんに反対をされたけど、言うまでも無く、僕は観光をしたいわけではない。
「違うよ!塔に昇って、紙商人の家を探すの!きっと大きいお屋敷だろうからさ!
余所者感丸出しなら、観光客っぽく塔に昇っても違和感ないよね」
「でも、今は警戒態勢だから、昇れるか解らないよ」
「昇れないかもしれないけど、とりあえず行ってみようよ!」
「う~~~ん・・・目立つ行動は控えるべきだと思うけど・・・
どうしても昇りたいなら、君達だけで行ってきなよ」
なおも吉見くんは反対をする。何か不安要素でもあるのだろうか?以前なら、南都市は西都市と同盟状態だったので、手配書でも廻っていてチートに報告が入る可能性は有っただろう。だけど、今のサウザンは、一方的にチートから攻撃をされて信頼関係は崩壊しているはずだ。
「吉見、筋肉痛だから塔の階段を昇りたくないんぢゃね?」
「あ~・・・・・・なるほど」
由井さんの予想は正解だったらしく、吉見くんが恥ずかしそうに頷いた。
面倒臭がる我田さん、敵勢力(青騎士団)に属していたので目立ちたくない輪島さん、そして筋肉痛で満足に動けない吉見くんを下に残して、僕と真田さんと由井さんが、塔の階段を駆け上がる。
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