30-2・白騎士ホワイ
予め決めておいた南門付近の空き地で、吉見くんと無事に合流する。
「お疲れ様っ!」
「まだ薄暗い時間帯だからね。路地を上手く使って逃げれば楽勝だよ。
・・・てか、馬が4頭?どうしたの?」
「真田さんと我田さんが白騎士からパクってくれたんだよ」
「へぇ・・・やるじゃん!」
装甲馬のままでは「他人の馬」とバレちゃうので、吉見くんを待っている間に鎧は外しておいた。
「旗は?」
「無事にゲットできたよ」
吉見くんに見せるために、脇に抱えていた旗を広げようとする・・・が、視界の先、空き地の入口に白騎士が立っていた。薄暗いけど、白い鎧とマントなのでハッキリと解る。
「えっ!?見付かったっ!?」
吉見くんが尾行された?それとも集合場所が解りやすすぎて予想された?白騎士団をなめすぎていたようだ。「交戦やむなし」と剣を抜いて構える。
「待ってくれ。君等と争うつもりは無い。
君達がここにいたことを、チート様に報告するつもりも無い」
白騎士は、帯刀していた剣を地面に置き、両手を上げて「無抵抗の意思表示」をしながらゆっくりと近付いてきた。知っている顔だ。
「あなたは確か・・・」
「騎士長のホワイ。
『君等が西都市にいた頃は、チート様の副官をしていた』
・・・と言えば思い出してもらえるかな?」
確かに、僕と真田さんがセイに住んでいた時、智人にコキ使われていた人だ。だけど、僕が彼の顔と名をハッキリと覚えたのは、その時ではない。
「櫻花ちゃんを捕まえていた人」
数日前のチートとの交戦時、チートの指示でおーちゃん達をテントから引っ張り出した人。コイツの所為で、僕は、思い通りにおーちゃんとの合流ができなかった。チートの指示に従っただけなのは解るけど、憎くて仕方がない。
「それ以上近付くな!争うつもりが無いなら、何の用なの!?」
真田さんが声を荒げる。僕も同じ気持ちだ。
「源君、真田さん、そして我田さんも・・・少し落ち着いて。
彼と争うかどうかは、彼の話を聞いてから決めよう」
吉見くんが数歩前に出て、構えている僕達を牽制する。
「何で止めるの!?チートの副官なんだから、敵以外には考えられない!」
「戦いの渦中にいた君等は気付けなかっただろうけどさ・・・
僕には、『彼は織田さんに弓を奪われた』のではなく、
『倒されたフリをして提供した』ように見えたんだ」
確かに、それなりに訓練している騎士が「アッサリと弓を奪われた」なんて有り得ない。吉見くんの説には一定の説得力がある。
「簡単に納得するつもりはないけど・・・どうなの?」
白騎士を睨んだら、両手を上げたまま頷いた。
「君達や北の勇者の敗北は、俺が望んだ結果ではなかった。
チート様の横暴を止められる者は、もはや、西都市にはいない。
だから、俺はチート様の敗北を望んでいた」
「智人の副官が何を言ってるの!?そんなんで信用できるわけがない!」
「俺は、チート様に忠誠を誓ったわけではない」
「どういうこと!?」
「我が忠心は亡きホーマン公に捧げたもの。
残されたボウイン婦人とお嬢様達への尽力はおしまない。
ゆえに、ホーマン公の仇討ちの戦では、チート様に従った。
しかし、チート様の私闘に使命を賭すつもりはないということだ」
まだ信用したわけではない。だけど「チートが転移して40~50日くらいしか経っていないのに大都市の軍隊を掌握した」よりは現実味がある言葉だ。
「俺は、君と君が、『チート様の攻撃で消滅した』以外の理由で消えたと
・・・つまり、『何らかの富醒で逃走した』と予想していた。
だが、チート様には報告をしていない。
まぁ、この程度の言葉で信用を得られるとは思っていないがな」
チートが灼熱半球を発動した時、ホワイは、僕を挟んでチートの真反対にいた。確かに、僕と真田さんがリターンの入り口に飛び込む状況が見えていたはずだ。
「何の為にチートの意思に反することを?」
「チート様を権力の座から引きずり下ろしてもらう為。
チート様が、ホーマン公のお嬢様達を大切にしてくれるなら、
ホーマン公の後継はチート様でも良いと思っていた。
だが、今のチート様は、お嬢様達を蔑ろにして、
秘境者の女ばかりを寝室に招いている」
ホワイは悪意ではなく誠意で智人の素行を打ち明けている。それは解るんだけど、「秘境者の女」の中に櫻花ちゃんが含まれていたことを考えてしまって、胸が苦しくなる。
「尊人くん」
真田さんが僕の腕を掴んで、怒りと動揺で振るえる僕を落ち着かせてくれる。
「俺は、チート様がセイの中枢に立つことを認めない!
権力をホーマン家に戻す為ならば協力を惜しまない!
君等が欲するなら、チート様の情報は何らかの形で伝えよう!」
「条件が良すぎて、気味が悪いです」
「利害の一致。君等は俺を、俺は君等を利用すると解釈してほしい」
「信用して・・・良いんですね?」
「馬はこのまま提供する。
彼(吉見)に逃げられ、馬を全て失った・・・
チート様にこんな無様な報告をすれば、無能扱いは免れんだろうな。
だが俺は、チート様からの評価など、どうでも良い」
一定の信用をしても良さそうだ。だけど、この人の所為で櫻花ちゃんと合流できなかったって事実は変わらない。だから握手はしない。
「解りました。敵ではないけど、完全な味方でもない。ただの利害の一致。
そう解釈させてもらいますね」
「それで構わん。
呼び止めてすまなかったな。明るくなる前に発つが良い」
ここは地平線の無い世界。空が明るくなってしまったら、僕等が街道を南に向かう姿を、他の白騎士に見られてしまうかもしれない。明るくなる前に、可能な限り帝都から離れるべきだ。
ホワイさんに別れを告げ、早々に帝都を発つ。
・・・で、略奪した軍馬は4頭。僕は真田さんの駆る馬の後ろに、吉見くんは我田さんが駆る馬の後ろに乗って、それぞれが騎手無しの馬を一頭ずつ引く。
「オメー等?馬に乗れねーのか?男のクセに情けねーな。
何の為に4頭キープしたと思ってんだよ?」
僕と吉見くんは、馬に乗れません。
「面目ない」
「申し訳ありません」
「我田さん、ジェンダーレスだよ」
「ヘボはヘボ。都合の良い言葉で甘やかさねー方が良いぞ」
一応、真田さんがフォローをしてくれるが、我田さんの皮肉に一切反論をできないまま、南宿場町に向かう。
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