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睦姫③愛美との決着

「・・・そっか」


 アイミは、権力がある者にしがみつく傾向がある。私はそれを、物分かりの良いダチと勘違いしていた。

 周りから認められてスクールカーストの1軍になる者がいる。そこにしがみついて、「1軍の仲間だから自分も1軍」を演出する者がいる。私やフミヤは前者、アイミは後者。自分は1軍のつもりなのに、周りからは「スクールカーストに拘っていない織田よりも下」と認識されていた。


「なぁ・・・アイミ」


 人を信じられなくなったアイミは、それでも、しがみつける場所を探していた。

 自分達の意思を通すためにチートとアイミから離れた尊人達。個よりも集を優先させて、アイミとの合流を優先させなかったフミヤ。どちらも間違っていない。だけど、アイミは「正しさ」を通す覇気を失っていた。そして「自分を見てくれる」を欲していた。「チートの傍」を居場所に決めたアイミにとって、織田や菅原は、足元を崩しかねない驚異だったのかもしれない。


「傍にいてやれなくて、ごめんな」

「もう、おせーよっ!」


 フミヤが行動を起こしていた頃、私は隠遁に近い生活をしていた。もし私も行動を起こしていれば・・・フミヤ達と合流をしていれば・・・「アイミと合流しよう」を主張していたのかな?アイミのSOSをキャッチできたのかな?


「オマエは間違えすぎた。

 だから、現実世界に帰ったあと、オマエを一発ぶん殴る。

 オマエも、気か利かねー私を一発ブン殴れ。それでチャラにしねーか?」

「何言ってんだ、ムツキ!?私は現実世界に帰る気は無いっ!」

「他の連中がオマエを冷たい目で見ても、私だけは味方だ!」

「もう、遅いって言ってんだ!今更、友達面をするなっ!!」

「オメーがクラスで何番かなんてどうでも良い!

 だけど、アイミは私の一番のダチなんだよっ!」


 アイミを倒す覚悟はできている。話を聞いて、アイミを現実世界に強制送還したあとで、縁を切らない覚悟もできた。

 下がり藤の旗を勢い良く翻してから、竿頭をアイミに向けて構える!


「現実世界に帰るため、オマエをこの世界から排除する!」

「やれるもんなら、やってみろっ!!」


 刺突の姿勢で、アイミに向かって突進をする!アイミも剣を振り上げて突進をしてきた!この激突で決着を付ける!

 私はアイミの急所一点を目掛けて、躊躇いなく刺突を放った!


「・・・えっ?」


 衝突の寸前で、アイミが剣を手放した。そして・・・竿頭に突っ込んでくる。「もっと早く来いよ」と言って、アイミが笑ったような気がした。


「アイ・・・ミ?」


 気付いた時には、下がり藤の旗竿が、アイミの胸のど真ん中を貫いていた。


「ぐはぁっっ!!」


 慌てて竿頭を抜こうとしたけど、アイミが旗竿を掴んで更に踏み込んだので、竿頭はアイミの胸を深く抉る。


「アイミっ!!」


 脱力をしたアイミは仰向けに倒れた。


「なんで!?オマエわざとっ!?」


 想定をしていない決着だ。突き刺さった旗を抜いて、アイミを抱き起こす。


「おいっ!」

「言ったろ・・・来るのが遅ーんだよ、ムツキ」


 明らかな致命傷。それなのに、アイミは笑っている。


「私なりにプライドってのがあってな・・・源や真田には倒されたくなかった。

 敵わないって思ってるヤツに倒されたかった。

 もう、フミヤとコウジがいないんだから、ムツキしかいないと思っていた。

 どうせ来るなら、もっと早く来てくれよな」

「オマエ・・・ハナっから死ぬ気で?」

「織田がいなくなって解った。私はあのクソイイ子ちゃんに負けたんだ」


 アイミが息を荒くしながら懺悔をする。

 織田櫻花は、アイミとチートを恨んでいた。それなのに、討つチャンスを棒に振って尊人を助けた。


「なんであの状況で、人助けが優先できるんだよ?」


 アイミは絶望の中で「間違い」にしがみついた。だが、織田櫻花は同じ状況で絶望に沈まず、希望を紡いだ。


「イイ子ちゃんすぎて・・・

 私なんて眼中に無いって無視された気分になって・・・

 私が織田に比べて小さいような気がして・・・ムカ付きすぎて・・・

 目障りって思ってたら・・・織田が死んだんだ。チートに刺されてな」


 それがスイッチになって、アイミは退くに退けなくなった。皆から悪人扱いされるのが怖くて、何よりも、好いた男から蔑まれるのが怖くて、気が付いたら、フミヤを刺していた。


「智人の№2の地位を不動にしたのに、少しも達成感が無かった。 

 フミヤがいなくなって、やっと解ったよ。

 この世界の頂点に立って、この世界の住人に認められたいんじゃなくて、

 現実世界のヤツ等に認められなきゃ意味が無かったんだ」


 アイミは自責で自壊して、自分で自分を止めることができなくなり、ずっと「倒してくれる私」を待っていた。


「やっと・・・楽になれた」


 アイミの体が白い靄に包まれる。この世界での命が終わったのだ。


「約束だぞ、ムツキ。

 友達・・・続けてくれよな」


「ああ、約束だ」


 アイミがキラキラと輝きながら消滅をしていく。



 アイミは私よりマセていた。まだ何となく仲良くなりかけだった中学の頃、アイミが彼氏と喧嘩をして殴られてた。ちょっと見た目が良くて、口先が達者なお調子者だ。男のくせに、私のダチを殴って泣かせたヤツが許せなくて、フルボッコにしてやった。アイミは泣いて謝る元カレを見て、泣きながら笑っていた。そんな情け無ーヤツを「格好良い」と勘違いしていた自分がマヌケに思えたらしい。

 以降、アイミとの友好関係は続いている。


「アイミ!ごめん、アイミっ!最後の最後しか一緒にいてやれなくてごめんなっ!

 うわぁぁぁっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!」


 いつ以来だろう?アイミがいる時は我慢をしたけど・・・久しぶりに大声を上げて泣いた。

 大切なダチをブッ壊しやがったこんな世界、私は断固拒否をする。何があっても現実世界に帰って、アイミと一発ずつ殴り合う。

 リーダーシップ、人脈、スポーツ、勉強、何らかの周りから認められる武器が有ってスクールカーストのトップにいる人、または、スクールカーストを意識していないけど周りから1軍扱いされる人。スクールカーストにしがみついて1軍のフリをしている人。2種類の1軍がいて、前者はどこに行っても上手くやるんだろうけど、後者は基礎を積み上げていないので、社会に出てスクールカーストが無くなった途端に、2軍3軍に負けて落ちていく。

 前者が藤原や武藤や櫻花。智人は後者に成り損ねた人。早璃は2軍で尊人は3軍なんだろうけど、キチンと基礎を積んでいるので、なんちゃって1軍を超える人。

 安藤愛美は後者なんだけど、武藤睦姫が、その危うさに気付いた。きっと、現実世界に戻ってからの安藤は、武藤に性根を叩き直されて成長をするんだろう。


 当初、最終決戦で武藤と戦うのは別のキャラで、武藤の格好良さだけを描く予定だった。安藤が智人側のキャラと決めた時点で、武藤vs安藤を思い付き、今回に至る。「安藤が殺されに行くラスト」は、武藤vs安藤を思い付いた時点で決めていた。


 リアリティーを考えれば、組織の№2で、戦闘系の特種能力を持たない安藤が、単身で彷徨いているなんて有り得ない。安藤の部下達が乱入してきて武藤が劣勢になるんだけど、安藤が一騎打ちに拘って部下を追い払う。そんなシーンを入れたかったんだけど、どこに入れても蛇足感が出てしまうので入れることができなかった。


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