第33話 主人公の家
午前はフルーツ系アイドルとコラボ動画を撮った。その後、飯に誘われたが主人公であるモエの家に呼ばれたので断った。
「むっしゃ!」
「……」
うむ、武者マルと人の姿のクイーンと一緒に主人公の家を訪れていた。玄関から大きな門がある。まるで貴族の家みたいだ。
正直、モエの家には興味がある。俺も主人公としてゲームをプレイしていたから、家の内装とかは把握している。
しかし、みてみたい。どこまでゲームと同じなのか興味がある。まぁ、コミュ障だから人と話すことに慣れておきたいと言うのもある
「いらっしゃいですわ。イヴちゃんと武者マルも来たんですのね」
家の扉が開いた。そこにはジャージ姿の主人公が待ち構えていた。ふむ、普段はもっと派手なドレスっぽい服装だが新鮮な感じだ。
「2階でチカも待ってますの」
「そうですか……」
「因みにですが今日は家には護衛エレモンが数体いるだけで誰もいませんわ」
「それは沢山家に居ると言うのでは?」
ふむ、見事なツッコミだ。小声でボソボソと話してしまっているが、それだとしても以前よりも話せるようになってきている。
階段も凄い派手というか赤いカーペットが常に敷いてある。ゲームでもこんなないそうだったなと思いながら階段を登る。
「ここですわ」
「あ、はい」
「一応、レディの部屋ですので」
「はぁ……な、なるほど?」
「き、緊張とかしないんですの? な、なんか複雑な気分ですわね。い、一応お父様を除けば初めての異性なのですけども」
あ、そういうことを気にするんだ。俺も恋愛とかに関しては疎いから、詳しくはないけども。異性を初めて招いて、その異性が適当な感じで部屋に入ろうとしているから、複雑な感じになっているのかな。
主人公って恋愛とか気にするんだ。俺が主人公だった時はエレモンしか気にしてなかったけども。
やっぱりゲームと現実は違うのだろう。
「ここがわたくしの部屋ですわ」
「あ、アムダくんー、久しぶりだね?」
「チカは少し緊張しているようですが、気にしないであげてください」
「おい、余計なこと言うなよ」
「ほほほ、なんのことでしょう?」
仲良いなこの2人。主人公とライバル枠だからな。まぁ、俺も歴代最弱ライバル枠って言われてましたけども。
「お腹空いてるでしょう? わたくし達でお昼を作っておきました。簡単ですが、パスタですわ」
ミートソースパスタか。簡単って言うほどの、代物じゃない。かなり拘って作られているような気がするな。
かなりたっぷりソースがかかっているようだけど。
「これはチカが作りましたの」
「あ、つ、作ったんだぁ?」
「チカ、アムダくんみたいな話し方になって、わたくしの後ろに隠れてますけど気にしないであげてください」
うむ、気にしないでおこう。
「ちょっとは気にしてあげてくださいまし。お話ししたいでしょうから」
「おい! 余計なこと言うなよ」
「では、このままで良いのですか? お礼を言いたいのでは?」
お礼、何かしたっけ? 最近忙しすぎて、記憶が曖昧だ。うーむ、午前はフルーツ系アイドルと動画撮影してたし、やはり毎日が忙しすぎて思い出せない。
「ま、まぁ、そうだけどね。あ、あのさ、この間一緒に空に飛んだじゃん?」
「……午前中の話じゃないですよね?」
「は? 誰と勘違いしてる?」
「あ、すいません。べ、別人と勘違いしてました」
なんか怒ってる。まぁ、人違いなのは申し訳なかった。うーむ、やばい……あ、この間の件か。
なんか絡まれてたから俺がイライラしてついでに八つ当たりをしたやつだ。
「あ、あれか」
「そう! それだよ! あ、あの時から、ちょっとさ、お礼をちゃんと言いたかったって言うか」
「気にしないでいい、けども……」
律儀な人だ。確かにライバル枠として人気だったチカだけども、性格が良い部分も人気な秘訣だった気がする。
彼女と話していると、クイーンの人の姿が俺の首に手を回してハグしてきた。そして、武者マルも腰元に頭を埋めた。
はい、可愛い、可愛いなぁ。最高だな。やはり俺のエレモンは最高だぜ
「良いなぁ……ぼくもイヴちゃんみたいに妹だったら……」
「まぁ、お礼言えただけで及第点ですわね。アムダ君、わたくしからも話がありますわ」
「えっと、なに?」
「今、わたくしはエレメンタルコード7つ集めたんですの。ただ、ちょっと伸び悩みがありまして」
ふむ、主人公が伸び悩みか。そんなイベントゲームであったかな……? 負けイベントとかも特に無かったし。
「わたくし、どうすればもっと強くなれますか」
どうすればもっと強くなれるかと言われても。ふーむ、取り敢えずストーリーをクリアするだけならレベリングをしておけと言う答えになるけども。
「えっと……レベル上げるとか?」
「確かにそうですわね。レベルもちょっと伸び悩みがありまして」
「そう、ですか」
うーん、そんなことあったかな?
「まだまだ、わたくしは弱い。アムダくんはお父様に勝ったのでしょう? 貴方の答えが、貴方の考えが欲しいんですの」
「あ、そうですか」
「いや、冷めすぎでは? こ、こう見えて結構恥ずかしいことを言っているのですが」
「え、えっと、取り敢えずレベリングをするのが良いかなって」
「そ、そうですのね?
レベリングすれば大体はなんとかなると思うけども。モエはとりあえずは納得をしたようであった。
その後は、チカとモエとクイーンとトランプをしたり、お昼寝したりして過ごした。主人公の家は少しだけ懐かしい感じがした。
──島に帰り、数日が経過した
今日も島を開拓する俺にあるニュースが飛び込んできた。
『ゴッドリーグテイマーグレンさんの娘であるモエさん。そしてその後友人のチカさんが、ガイア帝国と名乗る組織に誘拐されました。誘拐場所は英石の町であると思われ──』
は? 負けたのか?
主人公が……おいおい、ここはつまずくような場所じゃ……
その時俺はハッとした。
歴代最弱ライバル枠、アムダ。なぜ彼が歴代最弱と言われていたのか……それは《《圧倒的な経験値要因》》だったからだ。
ライバル枠とは何度もエレモンバーサスをすることができる。そこで経験値を稼いで次のバトルに繋げる、レベリングをするのだ。
まぁ、正直言えば他に効率の良い方法はあったりするのだが、何度も何度もアムダを叩き潰すことで楽にレベルを上げられる。
それがないから……伸び悩みがあったのだろうか?
も、もしかして俺のせいかな……? しょうがない、ここは……
「行くぞ! ガイア帝国の支部に殴り込みだ!」
多分、7つ目のコードを手に入れてからガイア帝国と戦うイベントはあった気がする。それに加えて、そのイベントは英石の町付近で起きて、近くに支部もあった。
支部を主人公が潰すイベントのはずなんだが……
「今回は俺のせいかもな……それなりに本気で行こう。《《極マル》》」
エレモンには進化が存在する。進化することで強くなるのだが、逆に退化も存在しており、進化個体を進化前に戻すこともできる。
武者マルはビジュアル的に好きなので退化させているが、極マルに進化させたほうが明らかに強い。
「まぁ、支部をお前と潰すのはゲームを入れて二度目になるけど……問題ないよね。救いに行こう」
「きわっ」
一応、影にGランクエレモン仕込んで、ホーリーマジックモンでテレポートとかもして……あとは極マルで倒そう




