第31話 コラボ
フルーツ系アイドル『ミックスジュース』。チャンネル登録者70万人を超える超人気エレチューバーとしても活動をする4人の少女のグループである。
リンゴ、レモン、スイカ、ブドウの4人である。
そんな彼女たちは全員が幼馴染で、仲良しである。そんな4人中、レモン、リンゴの2人は同じ部屋で過ごしていた。
「私達、伸び悩みですよー!」
レモンが大きな声でつぶやいた。彼女はエレフォンに表示されている、チャンネル登録者数を見て、ため息をこぼす。
レモン、名前通り黄色の髪の毛を持っている。彼女は上昇志向が激しく、常に成り上がりたいと思っている。
彼女がいるのは、彼女が共同で使用している大家である。そのリビングにてソファの上で彼女は悩みの表情を浮かべる。
「あー、そうー?」
「リンゴちゃん、何か案はないんですか? このままだと100万人いけませんよ!」
「そのうちいけるでしょー」
レモンに対して、リンゴは特に気にしている様子はない。
リンゴはエレメンタルコード15個持ちの凄腕テイマー。最近彼女はアムダを推している。
リンゴは雑誌を読みながら、レモンの言葉に答える。地ノ国ゴッドリーグ雑誌に彼女は夢中である。座布団の腕で優雅に寝転がり、雑誌を読み続ける。
「グレンさん、最近試合増やしたみたいだねぇー。全盛期より、すごいー」
「私達も頑張らないと!!」
「70万人でよくねー?」
「もっと頑張らないといずれ、オワコンですよ!!」
リンゴは雑誌をひたすらに読み込んでいる。レモンほど、上昇志向はない。
「リンゴちゃん、もっと過激なことをした方がいいと思いますか! 水着姿もっと出すとか!」
「わたしは嫌だよー。アムダ君、エロ釣り嫌いらしいし」
「そんなこと言ってました?」
「前動画で、ラリラ博士が水着披露しようか? とか言ってたらエロでこの動画釣りたくないとか言ってたよー」
「……へぇー。そうなんですか。リンゴちゃんってアムダ君に好かれたいんですか?」
そう言われるとリンゴはなんとも言えない顔をする。少し悩みながら、あることを呟いた。
「会ってみたいんだよねー。ほら、エレモンすごいじゃん? ジーググラモンなんて、古代の時代。古代文明の産物らしいじゃんー? こりゃみたいー」
「まぁ、みたいですけど。コラボとかできればチャンネル登録者増えそうですし」
「一回、なんとか会えないかなと思ってるんだけどねー。エレッターとかはそんなにみてないみたいだし」
「コラボ打診も無視ですし」
レモンはコラボ動画を出して、チャンネル登録者を増やす。リンゴは会ってみたい純粋な興味。
──そんな2人の元に3人目のメンバーがやってくる
「あ、スイカちゃん! お帰りなさいです!」
「おー。スイカーぁ。アイス買ってきてくれたぁ?」
「…………うん」
高身長、白髪、マスク、紅の瞳。スイカと言われる少女は買い物から帰ってきた。彼女は見た目は大きいが、中身は小心者。
「…………会った」
「誰にですか?」
「宇宙人とかー?」
「…………アムダさん」
「「ええ!?」」
ボソボソと呟いた事実が驚くべきことだったので、思わず2人は声を荒げた。特にリンゴは目を見開いて、肩をゆすった。
「どこ! どこにいたー!」
「…………怖い」
「あー、ごめん、つい、どんな人だったー?」
「…………かわいい」
「へー、ジーググラモンいたー?」
「…………いない」
リンゴはスイカの話を真面目にすごい聞いている。彼女は基本的に気にならないことには、本当に興味を示さず聞き流すのでそれほどまでにアムダに対して興味を持っているということだ。
「ジーググラモン。みてみたいなぁー」
──そのタイミングでリンゴのエレフォンが鳴った
「んん? ……誰だろ? わたしがフォロー返してないとエレッターはDMできないように……ふぁああああああああああああああああああ!!!!」
大人しい言動が目立つリンゴが大声を上げた。
「…………うるさい」
「リンゴちゃん!? どうしたんですか!?」
上昇志向のレモンが珍しい光景に驚きの声を上げる。無言でうるさいのが苦手なスイカは耳を塞いでいる。
「あ、アムダ君からコラボしたいって!!」
「おおおおーー!!! チャンネル登録爆増チャンスキタァ!!!!!」
「「あああああああああああああああああ」」
レモンとリンゴは激しく声を荒げた。
「…………うるさい」
うるさいのが苦手なスイカは耳を塞いでいた。
◾️◾️
「ブドウちゃんは今日、どうしても来れないなんて……風邪ひいちゃったかぁ……」
「しょうがないよー」
レモンのため息に対して、リンゴは淡々と切り替えるように促す。アムダとコラボをする日、待ち合わせしていた場所に彼女達は訪れていた。
レモン、リンゴ、スイカ、3人だけであるがとある森に訪れていた。最後のメンバーのブドウは風邪をひいてしまい、相手にうつさないようにするためにも休むことを選択した。
「…………どこ?」
「アムダ君、まだきてないんですかね?」
「どうだろねー」
──三人が人目がない森で辺りをキョロキョロしていると、唐突に光が現れた
「あ、えと、は、初めまして……どうも」
「はいはいー! どうーも? 博士ですよー!」
黒いフードをかぶって黒いマスクをかぶっているアムダと白衣を着ているラリラ博士が現れたのであった。
「初めまして! フルーツ系アイドル『ミックスジュース』のレモンです! 今日はありがとうございます!」
「ふふふ、アムダ様は会話が苦手ですからね! ここからは僕が取り仕切ります。全員エレフォンのGPS機能を切ってください。そしたら、撮影場所にアムダ様のホーリーマジックモンがテレポートさせてくれます!!」
アムダの後ろにはSランクエレモン。ホーリーマジックモンが佇んでいた。リンゴはそのホーリーマジックモンの完成度に驚きを隠せない。
(グレンさんの、みたことあるけど……それより上……間違いなく。こりゃすごいねー。すごいわー)
全身が白いローブに隠れている、しかし、眼と口だけがLEDライトのように発光して形作られている。
通常のホーリーマジックモンと130センチほどの大きさも変わらない。しかし、彼女はアムダのホーリーマジックモンが、あのゴッドリーグテイマーグレンのスタメンを超えていることに気づいていた。
(感覚っていうか、生き物の本能的な何かでわかる……なるほどね。ヴェルディオンが切り札と思ってたけど……いや、切り札なのはあっている。でも、切り札は一つではない)
(──他にもこのクラスを保有してるんだ……こりゃ規格外だねー。戦っても負けるだけだー。正直、一回バーサスしてみたかったけど……無理そう)
(──わたしは、見る目はあるって言われるけど、テイマーとしてエレモンを育てたり、勝負したりするのは凡人だからなー)
紛れも無い天才、その名に恥じぬ底知れなさを感じた。
エレフォンのGPS機能を切り、彼女たちはホーリーマジックモンにてテレポートをした。
目を開けると……そこは島だった
「…………どこ?」
スイカがそう呟いた。レモンはびっくりして辺りを見渡している。
「ええ!? そもそも、あ、アムダ君ってテレポート持ちエレモン持ってるんだ!? 珍しくて、それだけで仕事とかも食いっぱぐれないレベルなのに!?」
「アムダ様はそれくらい当然ですね!」
ラリラ博士は胸を張りながら、自慢をする。別に彼女は褒められていないのだがなぜか自慢げだ。
「アムダ君ー、初めましてー。リンゴだよー」
「どうも……」
「…………久しぶり」
「あ、どうも」
リンゴとスイカに囲まれ、アムダはぺこぺこ頭を下げながら目を逸らしている。
「わたし、聞きたい……」
「え?」
「貴方は、なにもの?」
「……何者とかもないですけども……」
彼女は思わず聞いてしまった。駆け出しとしてはエレモンが強すぎる
(ホーリーマジックモン、ヴェルディオン……完成されすぎている)
(《《否、完成を超えて究極、至高として目の前に存在してる》》……駆け出しとか、ゴッドリーグとかそういう枠組みとかで収まらない)
(──そして、何よりも神話や伝説すらも《《究極や至高として育て上げられるのだから》》)
──ビリビリと大気が痺れるのを彼女は感じた。目の前には、古代文明の遺産、永遠を生きる
Lランクエレモン
ジーググラモンが空より、飛来した




