第29話 圧巻
管理協会。エレモンの保護、エレモンと人間の関係を良くする。などと掲げて、実績のないテイマーからランクの高い、珍しいエレモンを保護している。
彼等はゴッドリーグなどに行っていない、その他実績のないテイマーは、エレモンの理解、貴重なエレモンを不用意に扱ってしまう危険性を鑑みて保護をする。
そんな彼等の前に唐突なニュースが飛び込んできた。
『エレ塾生、謎のエレモンを保有する!!!!』
見たことのないエレモン、宇宙衛星でもその異様な力が確認できていた。信じられない速度でロケット超えるような推進力と速度を併せ持つ、機械仕掛けの黄金のドラゴン。
この事態に彼等は飛びついた。
──表向きは……保護を歌い、実質的には、ただ、欲しかった。あれを研究したかった。
それだけだった。珍しいのがあったら欲しいのが性なのだ。
『ラリック君、決勝進出おめでとうございます』
「会長、ありがとうございます!」
『決勝戦はアムダ君のようですね。彼は手強いですがそれはヴェルディオンなどだけ、エレモンが良いだけなのです。なぜなら彼は駆け出しですからね』
「彼にはすぎたエレモンです、私が優勝をして管理協会が保護すべきと身をもって証明してきます」
『よろしい。エレモンの為にもそれが良いのでしょう。それでは。決勝を楽しみにしていますよ。それと──例の新薬を使うことを許可します』
「はい! 必ずや!! 勝利を!!」
これはとある、試合前のやり取り。管理協会ラリックの手には赤いタブレットが握られていた。
──決勝
アムダの前には二刀流のボーン剣士。ラリックの前には一刀流のボーン剣士。
「さぁ、始めましょうか。負けた時の言い訳を考えておきましたか?」
「あ、え? それって、俺が考えること……?」
決勝まで上がった2人が激突する。
◾️◾️
管理協会ラリックね……。知らない名前だな。ただまぁ、油断は禁物かな。負けるはずないけども。
しかし……《《あっちのボーン剣士様子変じゃないか》》?
妙な紅のオーラが出ている気がする。これって……エレパラの第2シリーズが使ってくる紅不可思議錠を使った時の演出に似ているような気がする。
ステータスを1,5倍にする効果を持っているんだっけ?
「行きなさい! ボーンブレイド!!」
ボーンブレイド、威力50ほどだけど。副次効果で攻撃力を5ターン、10上げる。アクティブスキルは『奥義』にしたら威力が跳ね上がり効果も上がるけど、これはそれほどじゃないなぁ
「左に避けて」
「ボン!?」
奥義化はしてない。かと言って、先ほどの試合より威力が上がっているのは確実。俊敏性も上がっているな
避けさせるつもりの指示が、攻撃を当てられた。
「ははは、遅いですね! 君もこの程度ですか!」
絶望的なステータスの差があれば回避指示とか意味ないんだけど……それほどじゃないな。
もう、見た。
今度は修正して、下がらせる。
いや、下がらせるより剣に剣を当てて威力を殺す方がいいか……。いや、両方でいい。
「ボーンブレイドッ!!」
「左に避けて」
「ボーンブレイド!!」
「右だ、剣で止めて」
あっちはスキルの効果で攻撃が上がっている。しかし、そこまで大きくはない。だが、タブレットを使っているとすればこちらが防御に回り続けるのは危険……と普通は考える。
俺もボーン剣士同士の戦いでは防御に回るのは良くない……それが、タブレットを使っていようがいまいが関係なく……
試合前まではそう考えていた。だが、違う。試合前に俺は違う考えをボーン剣士に伝えた。
手数の多さ……二刀流なら防御と攻撃を同時に行えるのではないか。
ボーン剣士は二刀流、その強みは手数の多さだ。単純に攻撃回数を増やして会心率を増やすのが強み。
しかし、戦いながら防御にも使えることに気がついた。剣が一つ弾かれて、本来なら刃が当たるタイミングでも、もう片方がある。
体の前に二つの剣を置いていればいい。避けながらも常に纏わせておけば……
「《《片手でボーンブレイド》》、《《片手で左防御》》」
「ボン!」
「──ぼっ!?」
「なに、カウンターですか!?」
──片手によるボーンブレイド。威力は半分になるが、片方を防御に当てながら攻撃ができる。
単純だが、面白い。ゲームでは考えられないな、単純にステータスだけで殴り合う世界観だったからな。
ボーン剣士はカウンター戦法が面白いかもしれない。そもそも二刀流で俊敏性が落ちてしまうなら、この戦い方は寧ろ弱みを強みにしている。
俊敏性で他の剣士に劣るなら、別の場所で勝負する。防御は俺が指示をして、剣を合わせてもらう。
──ボーン剣士にこれを教えるのはちょっと骨が折れたけど。ボーン剣士だけに
わざわざ、一度俺が持っている二刀流のボーン剣士を呼んだ。そして、クイーンと協力して、この片手攻撃片手防御カウンター戦法を実践し、それを真似させた。
説明するより、実際に見せた方が早いからだ。
この大会のボーン剣士は俺の言うことを素直に聞いてくれる。非常に助かった。
「くっ! ボーンブレイド!!」
「右からくるよ。左でボーンブレイド!」
「ボボん!!」
「ボッ!?」
「会心!? くそ、運はいいようですね!!」
右から振られた剣を右手の剣にて止める、あっちの方が威力が高いから微かに傾くが、カウンターをするにしては十分だった。左側の剣にて、ボーンブレイドを叩き込む。
会心が出たことで二倍、しかし、本来半分となる威力なので通常ダメージ。
だが、これを続ければ結果は見えてくるだろう。あっちはひたすらにスキルと使うだけで、魔素がいずれ尽きる。
「くっそ、会長、会長の願いを!! くそ……勝てるはずなんだ!!! ボーンブレイド!!」
「右で止めて、左にボーンブレイド」
「ありえない、勝てるはずなのに!!」
「隙ができた、ダブルラッシュ」
指示をせずにイライラしているテイマー。タブレットの効果で力が向上されているが、本来のポテンシャル以上の力に困惑しているエレモン。
そこに、二刀流によって、4回攻撃となった【ダブルラッシュ】。ボーン剣士によって、放たれた4連撃は
通常よりも大きなダメージとなり、4回連続で敵の剣士を切り裂いた。
──まさか
「4連続!?? こ、ここで!! 運が、運だけの!!」
ボーンブレイドで攻撃も向上しているからな、結構入っただろう。相手の剣士もたじろいでいる、テイマーも冷静ではない。
「ダブルラッシュ」
再び、4連続の──
「おいおいおいおい」
「ふざけるな!! こんなの不正だ!!!」
俺も思わず、呟いてしまった。相手は不正を訴えた。確かに、そう言いたくなる気持ちもわかる。
──8連続、会心!!!
ふっ、勝ったな。タブレットを使ってても、ここまでの攻撃値を叩き出すのはあっちにはできなかったしな。
二刀流にて手数を増やして、会心を増やし、ジリジリとダメージを稼いでトータルダメージを上げる戦法だったのだが。
まさに最後に豪運を引いた。
まぁ、今回は借りたボーン剣士に助けられたな。普通にセンスあった気がするし。
「──そこまで! アムダ選手の勝ち!! 優勝は!! アムダ選手!!」
しゃ! やったぜ!! ゴッドリーグはエレメンタルコード18個と、なんらかの大会で3回優勝すればいける。
これで2回ね。
コードはさっさと集められる時に集めよう。




