8.ミッション前夜
お越しくださりありがとうございます。
その夜、私に与えられた小部屋で、アン姉さまと明日からの作戦を考えました。
「サラ、私たちはまずミネルバお嬢しゃまとジョセフ野郎の懐に入るわよ」
「アンお姉しゃまがジョセフしゃま担当なのにその調子で大丈夫ですか? 気持ちはしゅごく分かりますが」
私たちは、二人で一人対応するよりも、各々別々に受け持って担当する方が効率がいいだろうという事で、既にミネルバお嬢様に使え始めた私がミネルバお嬢様担当、アン姉さまがジョセフ様になりました。
「ミネルバお嬢しゃまを幸せにしゅるという使命の為ならば大丈夫よ」
その割には唇を強く噛んでいます。
元は一人で一卵性の双子です。性格も似ていたはずですが、ここ最近別々に行動していたせいか、若干違うところも出てきた気がします。
まあ、おだやかなミネルバお嬢様について侍女の仕事の手伝いをしていた私と、お父様とお父様の部下たちと訓練を積んでいるアン姉さまだったら、これからどんどん違っていくのでしょうね。
寂しく思いながらも強い意志を感じつアン姉さまが誇らしく思います。
そんなことを考えていたら、アン姉さまが何やらごそごそ出してきました。
「サラ、これかけて」
それはどこにでもあるようなメガネでした。
アン姉さまが同じメガネをかけると、同じ顔だし、生まれた時から毎日見ている顔のはずなのに、顔の印象がぼやけました。
「アン姉しゃま、これは?」
「これは顔の印象を残らなくしゅる魔道具よ。ほら、ここに魔法石が埋め込まれてるの」
見ると、メガネの留め金の所に魔法陣の描かれた魔法石が埋め込まれていました。
「サラには迷惑かけるけど、私は影だから。表で顔が知られてはいけないの。だから、同じ顔のサラもこれをかけて生活してくれる? 不便をかけてごめんね」
「謝らないでアン姉しゃま。私たちは二人で一人でしょう? アン姉しゃまのお手伝いできるなら嬉しいわ。しょれに、今回の作戦では、子供は一人と思わしぇていた方が身動き取れやすそうでしゅわ」
「なるほど。確かに。でも、お互い可愛い顔をしているのに残念ね」
なんて言って笑い合いました。私たちは亜麻色の髪にクリッとした瞳の、ミネルバお嬢様に言わせると「子リスちゃん」と言った風貌をしていました。前世だったら確実にキッズモデルになれるレベルです。まあ、この世界ミネルバお嬢様をはじめ、人外なヴィスクドールレベルのお方がたくさんいらっしゃるのであまり目立ちませんが。
それを隠して生きる。別にそれは構いません。顔を認識されなくても、私は侍女として表舞台で生きていけるのですから。でもアン姉さまは……。
そうだ!
「アン姉しゃま、私たち二人の共通の名前作りましょうよ」
「共通の名前?」
「はい。これからアン姉しゃまは影として生きていきますが、私とアン姉しゃまは二人で一人です。それを忘れて欲しくないのです。いつでも私がいることを感じていて欲しいのです。私もアン姉しゃまが私といつも共にあると感じていたいのです」
私の言葉を聞き、アン姉さまは私を抱きしめました。
「実はね、私ずっと考えていた名前があるの」
「どんな名前でしゅか?」
「サラ=アンって言うの」
もったいぶった割にはただ名前をくっつけただけです。それに、
「こういう場合、アン姉しゃまが先じゃないですか?」
「ううん。サラ=アンじゃなくちゃダメなの。サラ=アンって早口で読むとサランって聞こえない」
「サラアン、サラ―ン、サラン……、あ、なりますね」
「ほら、忘れた? 私韓流ドラマ好きで良く見てたでしょう?」
「見てましたねえ。あのドロドロした愛憎劇がいいんですよね~……あ、サランって!」
「そう。韓国語で【愛】って意味よ」
「なるほど。前世の私たちの名前ですね」
「ね。私たちにぴったりでしょう」
「はい! これで、いつでもアン姉さまと一緒ですね」
私たちはこの日から、サラ=アンとして活動していくことになりました
次の日、私たちはおそろいのメガネをかけ、同じ髪型、同じ洋服に着替えました。元々一卵性双生児なので、お父様お母様以外の人には区別がつかないでしょう。
「サラ=アン、ミネルバお嬢しゃまをよろしくね」
「サラ=アン姉さまこそ、ジョセフしゃまを……ほどほどにでしゅわ」
こうして私は、ミネルバ様のいる東屋へ、アン姉さまはジョセフ様のいる執務室へと歩き出しました。
ミッション開始です。
お読みくださりありがとうございました。
気に入っていただけましたら評価くださいましたら嬉しいです。
よろしくお願いします。




