5.作戦決行でしゅ
お越しくださりありがとうございます。
次の宿泊する街に着くまでの道中、できる限りの情報を得ようと、私はミネルバお嬢様を質問攻めにしていた。
「お嬢しゃま、断罪された王太子の婚約者しゃまはどうなったんでしゅの?」
「そうねえ。ついこの間起き……いえ、きっと新しい素敵な男性に出会って、彼女も幸せになったはずよ」
なるほど。ついこの間、そうですわね。まだ10日ほど前のことです。きっと断罪された婚約者様は、ご実家で軟禁状態。沙汰を待っているのでしょう。これは調べてみる必要がありますわね。
私は頭にメモしました。
「では、選ばれなかった男性たちはどうなったのでちゅか?」
「これ、サラ。聞き過ぎです」
お母様が慌てて止めに入ります。そうですわよね。ジョセフ様の事ですものね。
でも私、何にも分かりません。幼児ですから!
「なんででちゅか? おもちろい物語だったのでもっとしりたいでしゅ」
「いいのよ。シイラ。そうねえ……」
ミネルバお嬢様はしばし考えます。
「婚約者の大切さに気づいて、前より仲良くなって幸せな家庭を築いているんじゃないしら」
「婚約者しゃまはそれでしあわちぇですの? 一度は裏切られたのに?」
ミネルバお嬢様は目を丸くしました。
「そうね。婚約者様も歩み寄りが足りなかったのかもと反省したのだと思うわ。だから一度は許したんじゃないかしら」
「これサラ。もうおしまい。お嬢様、うちの娘が大変失礼いたしました」
「良いのよ。少し疲れたから休むわね」
「かしこまりました」
その後すぐ休憩に立ち止まった時、私とお母様は、お嬢様が寝られるようにと、他の使用人の馬車に移動した。
私は先ほどまでの会話を思い出していました。
『婚約者の大切さに気づいて、前より仲良くなって幸せな家庭を築いているんじゃないしら』
これはきっとお嬢様の願望。
『そうね。婚約者様も歩み寄りが足りなかったのかもと反省したのだと思うわ。だから一度は許したんじゃないかしら』
そして後悔。
絶対お嬢様を幸せにしてみせる!
次の宿屋に着いたとき、アン姉さまとお父様からの手紙が届いていました。
“マクライン邸で会おう”
お父様が動いてくださるとは!
アン姉さまが説得してくれたのですね。グッドジョブです。
次の日、私達ミネルバお嬢様一行はマクライン邸へお昼すぎには到着しました。
向こうのご両親と婚約者であるジョセフ=マクライン様が出迎えてくれました。
ジョセフ様は、なるほど。攻略対象者なだけあって、かなりのイケメンです。ダークブロンドの髪をさらっと流し、エメラルドグリーンの涼やかな目元は、見つめられるとドキドキしてしまいそうです。
でも、ご両親は笑顔で出迎えてくれましたが、肝心のジョセフ様は笑顔を見せることなく、型通りの挨拶をしてきました。
「遠路はるばるマクライン領までお越しくださりありがとうございます。今宵はごゆるりお休みください」
ジョセフ様とミネルバ様は少し視線が合ったような気がしましたが、ジョセフ様はすぐに顔をそらしてしまいました。
「では、私は仕事が残っておりますので」
そういうと早々に立ち去ってしまわれました。
ご両親が大きなため息と共に謝罪をくれました。
ミネルバ様は内心はともかく、笑顔で謝罪を受け入れました。
挨拶も済ませ、お嬢様が向こうのご両親とお茶をしている間、私達は今日からお嬢様が快適に暮らせるよう、部屋の準備を始めました。
バタバタしたいるうちにあっという間に夕刻です。
私達も自分たちの荷物を片付けるため、割り当てられた部屋へと向かいます。
ドアを開けると、
「サラ!」
「アン姉しゃま! お父しゃま!」
2人が走り寄ってきました。状況を知らないお母様が驚いています。
「まあ! あなた達一体どうしてここにいるの?」
「お母しゃま、ミネルバお嬢しゃまの、一大事です」
「何を言っているのこの子は」
「お母様もご存知でしゅよね? 馬車で聞いた物語はお嬢様の婚約者しゃまに起こった事なのでしょう?」
「そ、それは」
「お母様、このままでいいんでしゅの? このままでは、ミネルバお嬢様は確実に不幸になられましゅ」
「でも、一介の使用人に、何ができるというの」
「できましゅ。私達家族ならば!」
何やらお父様が「家族……」と呟きながら、感無量で涙ぐんでいます。
「そうだね、アン、サラ。シイラ、私達で私達の大事なミネルバお嬢様の未来を明るく照らして差し上げようではないか」
「あなたまで」
お母様が困ったようにため息を1つ。そしてそのままの顔で笑いました。
「そうね。私もミネルバお嬢様には幸せになってもらいたい。私達家族ならばできるわよね」
「できましゅ! 名付けて【カルダン家一丸となって、ミネルバお嬢しゃまを幸せに導くぞ作戦】でしゅわ!」
私が叫ぶと、みんな「オー!」と叫びました。
気合が入ります。
お読みくださりありがとうございます。