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3.別々の道へ

お越しくださりありがとうございます。

 早速次の日から特別に用意してもらった子供用のメイド服を着て、ミネルバお嬢様のお世話にお母様と一緒に加わった。

 初日にメイド服を着てミネルバお嬢様挨拶に向かうと、

「あら、可愛いメイドさんね。これからよろしくねサラ」

 と優しく微笑んでくださった。もうそれだけでやる気がみなぎる。

 そうはいっても、私にできることなどまだほとんどない。お母様の後をちょこちょこついて回っては、侍女の仕事を見て覚えるくらいだ。

「サラ、それ運んでちょうだい」

「はーい」

 ミネルバお嬢様には毎日手紙やらプレゼントが山のように届く。

 それをお嬢様に渡すもの、私たちで処理するもの等仕分けるのも侍女の仕事だ。

 今は仕分け終わり、私はお嬢様へ渡す手紙の束を抱えた。

「ミネルバお嬢様、ほんじちゅのお手紙で、きゃっ!」

 私は何もない所で転び、お嬢様の目の前で手紙をばらまいてしまった。

「こらサラ!」

 さっそくお母様からの叱咤が飛んでくる。

 やってしまった。もう消えてしまいたい。私は床に大の字で寝ころんだまま沙汰を待つ。

「ぷっ」

 可愛い笑い声が聞こえてきた。

「ふふふ……ごめんなさい私ったら。こんなに豪快に誰かが転ぶのを見たのは初めてで……クスクス」

 天使が笑っている。私はぼうっとミネルバお嬢様の笑顔に見惚れました。

「サラ早く起きて謝りなさい」

 お母様の声で我に返り、慌てて起き上が……として、手紙を踏んでまた転びました。

「ぶっ」

「あははは」

 これにはミネルバお嬢様だけでなく、お母様まで笑ってます。

「ちゅ、ちゅみません」

 慌てて立ち上がり謝罪すると、

「サラがいてくれると毎日楽しくなりそうね」

 と、ミネルバお嬢様は最上の笑顔でおっしゃってくださいました。

 ミネルバお嬢様の侍女になれて良かった。

 私一生ミネルバお嬢様を推します!

 そう誓ったのでした。


 その頃アンは、

「これから我々と共に行動を共にする仲間だ。アン挨拶を」

「はい!」

 アンは動きやすいシャツとズボンというシンプルな格好で、カラス部隊の前で緊張して立っていた。

「ほんじちゅよりカラス部隊の一員として頑張りましゅ。よろしくおねがいしまちゅ!」

「ん。まだ幼いとか、俺の娘だとかで忖度することは許さん。カラスの一員として皆と同じように扱え、分かったな」

 カラス部隊の皆「はっ」と揃って返事をした。

「では、アン。お前はこれからカラスの時は名前を捨てて行動することになる。その覚悟はあるか?」

「もちろんでしゅ!」

「よし。ではお前にコードネームを与える。お前のコードネールは“ハミングバード”だ」

「ハミングバード?」

「ハミングバード」

 場に微妙な沈黙が流れる。

「……嫌です」

「なっ! なぜだ? 父上が一生懸命考えたのに」

「なぜコードネームが本名より長いんでちゅか?!」

「……」

「お父様?」

「以上! 解散!」

「はっ」

 カラスたちは一瞬のうちに散って行った。


 侍女の仕事って多岐に渡るのね。

 私は始めてのお務めでくたくたになって家に帰った。

 向こうからアン姉さまもヨロヨロと戻ってくる。

 アン姉さまの方も大変だったのね。

「アン姉さま、お疲れ様。初日どうでちた?」

「……聞かないで……」

 さぞや大変だったのね。

「カラス合ってないの? 侍女のちごとと替わりましゅか?」

 私は心配になって、交代を提案してみる。

「そういう事じゃないの。そういう事じゃ……」

 何か訳のわからないことをつぶやきながら寝てしまいました。


 でも、心配は杞憂のようで、初日以降はアン姉さまもカラスの仕事を楽しそうにやっているようでした。

 私も侍女の仕事が合っているらしく、毎日充実しています。

 そうして引っ越しまでの2か月は、私もアン姉さまも、それぞれの道に進む準備を進めつつ、今までお互い放置だったけれど、私たちもお父様、お母様も、なるべく会話を心掛け、極力家族全員で過ごした。


 2か月経つ頃には、今までの他人以下な関係が嘘のように、理想として思い描くような仲の良い家族になっていた。

 出立の日、お父様とアン姉さまが寄宿舎の部屋の中で見送ってくれた。馬車の前は正式にミネルバお嬢様の出立儀式が行われるため、家族での時間は取れなかった。

 あの、ほぼ家に戻らず、帰って来てもほとんど口も聞かなかったお父様が、今は顔から色んな水を流してお母様に抱き着いている。無表情がデフォだったお父様が嘘のようだ。

 こんなのでカラスの頭領できるのかしら。私もアン姉さまも心配になってしまいます。

「シイラ、サラを頼んだぞ」

「あなたもアンをお願いね」

 お母様も涙ぐんでいました。

 私たちも最後の挨拶をしました。

「サラも。お母ちゃまをよろちくね。離れても、わたち達は二人で一つでじゅ。ぐじゅ……」

「ええ、二人で一つでちゅ。アン姉さまもお父ちゃまをよろちくでじゅわ、うっうっ……」

 私たちも顔中の水を垂れ流して抱きしめ合いました。

 離れたくない!

 だって体は幼児ですから。

 心も引きずられて幼児になってしまったみたい。

 みんなで大泣きした後は、晴れやかに手を振って別れました。


 生まれてこのかた、というか前世から離れるのは初めてです。不安が無いわけはありません。

 でも、きっと私たちなら大丈夫。

 希望を胸に、初めてそれぞれ別々の道を進むことになりました。

お読みくださりありがとうございます。


暑いですね。今私の中のブームはあずきバーです。

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「悪役令嬢(仮)の華麗なる(主観的)考察記録 -悪役令嬢に転生したような違うような。自分の立ち位置しっかり見極めて、目指すはほのぼののんびりライフですわ-」

https://ncode.syosetu.com/n0201ii/


サラが大きくなって侍女として活躍しています(※主役ではありません)

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