001.入学
きっかけは、小6の時に近所のイオンで吹奏楽部が曲を演奏してた事だった。
聞き慣れない大きな音、だが繊細でしなやかなメロディーや縦のラインがしっかり揃っている伴奏。そんな演奏に俺は聴き惚れていた。
かれこれ10分ほど聞いているうちにこんな司会の声が流れた。
「アンコールありがとうございます!それでは最後の曲、宝島を演奏させていただきます!」
宝島、なんて美しい響だろうか。そんなことを思っていると、演奏が始まった。
それはもう綺麗で、エンディングとしてふさわしい曲であった。
そこで俺は心に決めた。吹奏楽部に入ることを。
そして中学では吹奏楽部に入って3年生に出たコンクールにて金賞を取ったが惜しくも関西大会出場権は獲得できず。
このまま諦めれない。高校に入っても部活を続けよう、そう思った。
そして今日、俺は私立柏木中学校に入学する。
敷地内に一歩踏み出した。
「おーい!」
そこで俺の親友、岡西タツがきた。こいつとは中学吹奏楽部で知り合って小学校から一緒にいたわけではないが、俺の思う中で一番仲がいい。
「よっ、タッツー。お前部活何にするか決めたか?」
「おう!もち吹部だぜ!」
「安心したわ」
「そういえば、小早さんっていたじゃん?」
「小早さん?アルトの?」
「そうそう、お前のライバルの」
小早さんは俺とタツの同級生で、これまた吹奏楽部だ。美人だが凄く人嫌いらしく、多分俺も嫌われている。
だが吹奏楽には人一倍情熱があり、ソロコンに2年出場し、優秀賞を二つ取っていた。
「ライバルって…俺そんな」
「いや、あっちがライバルって言ってたの風の噂で耳にした」
「んなもん直接言うなよ。それで?その小早さんが何って?」
「小早さんもここ入ったらしいぜ」
「え?マジで?」
確か小早さんは公立にいくと聞いたのだが
「大真面目。多分吹奏楽も続けるだろうよ」
「そりゃそうでしょ…ってそんなことは良くて、クラス分けだよクラス分け。俺のクラスどれかなー」
「案外あっさりしてんな。俺は手前だけ見てればいいから簡単だぜ」
「俺の苗字西宮だから15〜30まで見なきゃいけんのよ」
「ええっと〜あった。1-6だな」
「俺もあったわ。1-6。同じだな」
「ぼっち確定回避できて安心したわ!」
「どっちかというと俺の方がコミュ力ないけどな」
「でもハーフ顔だからモテるしもてはやされるじゃんかよ」
「それはダウト。みんな珍しい顔立ちみたいだけ」
こんなしょーもない話をしていると早速1-6についた。
「よし、入るか」
「そうだな」
俺らがきたのは本当、始業すぐだったから人は1人しかいなかった。
その1人は、俺もタツも知っている人だった。
チッ
静かな教室に舌打ちの音が響き渡る。どうしようか。
小早さん。