甘い見通し
秋の涼しい時期に見通しの良い緩い左カーブの道を車で走る。
青いジャージを着た中学生らしき人達が年1回の行事「長距離走大会」で学校の敷地の外を走っている。
まばらだが大勢いて、車道に出て走っている生徒もいる。
主人公が乗った車の目の前にも、車道の中央からやや左側を、その車と同じ方向に走っている背の低い生徒がいた。
少し避ければ大丈夫と思い、ハンドルを少し「左」に切って進むと
「ドン!!」と音がした。
避け切れずにその生徒に衝突してしまったようだ。
周りには多くの生徒が同じ方向を走っているので、しかも見晴らしがいいので事故が起きたことはすぐに周囲の人たちに分かる。
しかしすぐには車を止めず、50メートル位進んでから車を止めた。
そして車の外に出て後ろを見ると、衝突したと思われた背の低い少年は倒れておらず、走ってもおらずただその場に立っているようだった。
さっきの「ドン!!」という衝突音は何だったのだろう?
生徒たちは何事もなかったように走り続けている。