表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

彼氏殿が来る前に……消す!

 髪もメイクも過去最高の出来。

 この日の為にジムに通って体をしぼりにしぼり、動きやすく女の子らしいデート用の服も新調した。

 張り切り過ぎて待ち合わせ二十分前に着いちゃったけど、まぁそれはご愛敬。

 

 そう、今日は彼氏殿との久しぶりのデート。

 

 仕事以外ほほほぼ外出しないスーパー出不精な私。

 その私がジムに通って服を買いに行って美容院行って、ビューティーアドバイザーさんを巻き込んで半日かけて化粧品を選んでひたすら練習して……。

 そんな待ちに待った彼氏殿との久しぶりのデートなのに……!

 

 同じく駅前で待ち合わせしていた人たちが悲鳴を上げ逃げ惑い、その向こう側にはでっかい……土偶。

 十四階建てビル相当のでっかい土偶が、ゴットンゴットン音を立てこちらに向かって来てる。

 土偶ははじめて見たし、生物なのかも怪しいけど、謎の巨大生物が襲来するのは良くある事。

 その都度、魔法少女(と言う名の特殊部隊)達が出動し、半ば見世物のようなハデな技で戦う。

 待ち合わせまであと二十分ある。

 彼氏殿が来る前に、魔法少女が倒してくーー。

 

 〽️ピンポンパンポーン。

 『やあ、久しぶりだね。引退した君に頼むのは申し訳ないけれど、目の前のそれ、ちゃちゃっと倒してくれ』

 

 音程のずれたチャイムと共に、目の前に現れたウインドウにはそんな文字が。

 

「はーい無理です無理でーす! 引退してますしこの服見て貰えば分かると思いますけどこれからデートですしぃ!? 髪もメイクも勿論服も乱したくないんですよねー! 一般人です一般人です早く保護して下さーい! 早く魔法少女寄越して下さーい!」

 

 思いっきり叫ぶと、またチャイムと共にウインドウが開く。

 

 『あっははは! それが派遣したくてもね、魔法少女も人手不足でね。彼氏殿が来る前に消しちゃってくれ。そんな怒らなくても、ちゃちゃっと倒してちゃちゃっとデートすれば良いじゃないか。「彼氏殿にバレる前に、普通の女性に戻ります」なんて言ってたけど、君が今戦えば彼氏殿の笑顔が守れるんだぞ?』

 

 かかかか彼氏殿の笑顔は最高ですありがとうございます神よ彼氏殿をこの世に遣わして下さりありがとうございます神よぉ!

 彼氏殿の笑顔を思いだし神に祈ってる間に、どうやら私が戦う事が決定したらしい。

 ウインドウは『(ゝω・´★)b』と、なんともふざけた表示になり動かなくなっていた。

 

 ふと見上げると、巨大土偶は駅前通りのビルを破壊し、ロータリーのすぐ側まで来ていた。

 早く仕留めないとこのままでは駅が破壊される!

 今日、彼氏殿は「たまには手を繋いで街を歩きたいから電車で行く」て言っていた。好き。

 俄然やる気が出た私は、ロータリーの噴水を壊し始めた土偶に向かい走り出す。

 その直後、ポケットから着信音が聞こえて来た。

 スマホを確認すると【彼氏殿】の表示。

 息を吸ってーはいてー、喉のチューニングチューニング発生練習あーあーあー。……よし。

 準備万端、急いで電話に出ると、走っているのか荒い呼吸音と足音が耳に飛び込んで来た。

 

 『もしもし? ごめんね、遅れて。なんか駅でトラブルがあったみたいで電車が止まっちゃって、降りて今走って向かってる。ホントごめん!』

 

 荒い呼吸セクシー度最高潮でそれだけでももうありがとうございますなのに、電車降りて走ってくれてるとか……好き。

 と言うか、遅れてごめんって?

 時間を確認すると、もう待ち合わせの時間になっていた。

 

 『もう少しで着くから。埋め合わせじゃないけど、この前行きたいって言ってたパンケーキの店行こう!』

 

 ああああ好きぃいい!

 パンケーキの話覚えててくれただけでも感動でフルマラソン走れそうなのに、更に連れてってくれるの……!?

 あああ神よありがとうございますありがとうございます!

 力が湧いてくる……今ならあの必殺技が打てる……。

 もう眼前まで迫った土偶を睨み付け、息を整える。

 ストレス社会で戦い続け日々闇落ち気味の私が、幸せの最高潮に達した時に出せる光属性の奥義……。

 

 『今駅の反対側についた! すぐそっち回るから!』

 

 彼氏殿に朗らかに返事をし、通話を切る。

 土偶……彼氏殿が来る前に、お前を消す!

 全ての幸せパワーを手に集め、一気に打ち出す!

 

 「スターーライトうねびーーむッッッ!!」

 

 地響きのような轟音と共に真っ直ぐに打ち出された光が、土偶を直撃する。

 撃ち抜かれた土偶は、見事消し飛び辺り一面星のようなキラキラした破片が降り注ぐ。

 

 「ごめんお待たせ! 今駅で聞いたんだけど、巨大生物が出たんだって!?」

 

  振り返ると、慌てて駆け寄ってくる彼氏殿の姿が。

  神様ありがとうございます今日も彼氏殿は最高です素敵ですありがとうございますありがとうございます眩しくて直視出来ません。

 

 「うん。でも、魔法少女が助けてくれたから大丈夫!」

 

 にっこり微笑み、そそくさと乱れた服を直す。

 私の言葉に心底安心したように笑う彼氏殿。好き。

 

 彼氏殿は私に怪我が無いかしっかりチェックし、ぎゅっと抱き締め安心させるようにポンポンと背中を叩く。

 ひとまず落ち着けるところに移動しようと、私の荷物を持ち手を引いて歩き出す。

 

 あぁもう、スターライトうねびーむもう一度撃てそうです! 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ