舞花視点
【瑞野舞花視点】
私達三人はいつも一緒だった
どこに行くのも、なにが好きかも、通った学校も、いつもいつも私達は一緒だった
私は私達が一緒に過ごす時間が一番好きだった、みんなはどうだったかはわからないけど、きっと同じ気持ちだったと思う
時がたって私達に由紀という新しい幼馴染みができた、彼女はいじめを受けていて、そのいじめを解決した明人と仲良くなり、必然的に明人と一緒にいた私達と仲良くなった
最初は名家の生まれの彼女と話すのを私と春乃は遠慮してたけど、いざ話してみると彼女が優しいということがすぐにわかって、気づけば三人とも気兼ねなく話すような関係になっていた。時々彼女が明人に向ける視線にモヤモヤすることがあったけど...
だけど、私達が12歳になり、もう明人に対する想いがなんなのかを自覚し始めたころ、突然私達の平和な日常は終わりを迎えた
私達家族が旅行から帰ってきた時、明人は一人になっていた
明人は、放っておくと今にも消えてしまいそうな顔をしていた
なにがあったかを明人に聞こうとしたけど、うわごとを繰り返すだけで答えは返ってこなかった、代わりにそばにいた春乃に聞くと、明人の家族が全員火事で亡くなったことがわかった
私は何度も何度も抱き締めた、私は怖かった、明人が自分の知る明人じゃなくなってしまうことが怖かった
数日経った後、明人はちゃんと話せるようになっていた、言ったことにも反応するし、ちゃんと受け答えもするようになった
だけど、あの、今にも消えていそうな顔は、無くなっていなかった
私は明人が自分達の前から消えてしまわないように、お手伝いさんとして引き取ることにした
他の二人も、自分が引き取ろうと主張していたけど、厳正なる話し合いの結果私が引き取ることになった
それから、私達は明人に、自分達が側にいないと何もできないと思わせようと、「貴方は私達がいないとなにもできない」とか「貴方は世の中で不要な存在」といったような言葉を言うようになった
最初は恩人である明人に暴言を言うことに難色を示していた由紀だが、詳しく説明するとすぐ納得した、というより、明人を失ってしまうという不安をまぎわらそうと、無理矢理必要なことだと思い込んだのだろう
効果は直ぐにでた、明人はなんでも言うことをきくようになったのだ
私達は安心した、これで明人はもう自分達から離れないと
だから気づかなかったのだろう、明人の目が深く淀んでいることに、明人の顔から感情が抜け落ちてきていることに
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「帰ってきてよ明人ぉ、謝るから、もうしないから、お願いだから帰ってよぉ」
いまさら気づいたところで、明人は帰ってこない、そんなことはわかっている、だけど、私は彼の名前を呼び続ける
手遅れだとしても、もう帰ってこないと知っていても
「明人ぉ」
私は、彼を呼び続ける
明人を守りたいと思うがために、大事なことに気づかなかった春乃
明人を愛していたのに関わらず、不安に抗うことが出来なかった由紀
明人を失うことに耐えきれず、最もしてはならないことをしてしまった舞花
この三人に救いはあるのでしょうか
あと一話、更新