レギオンでの滞在
西暦1798年4月29日 晴れ(午後からは曇った)
今日は難民のパレードだった。
ポカルド人がランウェーへ起こした反乱の戦火拡大のせいで2ヶ月前から難民が沢山押し寄せてくる。
帝国はスパイ容疑のない人間(魔導士は除く)に入国許可を出した。
今日の昼過ぎには、もう定数を超えて、そこからは入国拒否を告げるだけの簡単な仕事だった。
それにしても疲れた。
ちっとも休憩時間が取れなかったからだ。
まったく、北の人間なんて入国させずに野垂れ死なせたらいいだけなのに。
でも、いい事もあった。
ヴェーデル人の客船が昼前に到着して、それに乗ってた奴らの入国審査は良かった。
彼らは言葉遣いがなっている上、臭くない。
そして、なにより美人が多かった。
確かレーヌとかレークとかいう名前の女はとくに綺麗だった。
今までに見たことないくらいにな。
身長は160くらいで少し小柄だが、俺の好みの顔をしてた。
どうやら彼女、帝国臣民の審査会に行くらしい。
あの美貌があれば審査員に体売るだけで合格だろうよ。
だが、まぁ胸がないのは残念だ。
胸は断崖絶壁って感じだな。
17って言ってたしもう胸がデカくなることはなさそうだ。
北方入国管理官ハンス・ウルリッヒの日記より
西暦1798年4月29日
「はぁ…疲れた…」
もう日が沈んでしばらくした頃だった。
長い長い入国審査待ちのせいで足が痛い。
どうやら、ポカルド人達が反乱を起こしたせいでランウェー領の東から沢山のポカルド人達が難民として押し寄せて来たそうだ。
彼らは言っちゃいけないのかもしれないが、不衛生でとても臭くてやっていられなかった。
そんなこんなでやっとオスワンダ公領のレギオスという街へ入れた。
審査会の日は4日後なので2日後に馬車に乗って、1日前に審査会のある街まで行くことにした。
街はあまり広くはないけど、宿屋があるので2日滞在することに困ることはない。
それに、ここは帝国領でも北の方なのでヴェーデル人の同胞やランウェー人、ポカルド人など北方人種が沢山いるので、あまり差別されることはない。
「じゃあ早速、宿屋を探さないと…」
私は街についてと宿屋についてを誰かに聞こうと周りをキョロキョロ見ていると、
「やぁ!そこのお嬢さん!」
背後から声がした。
振り返って見てみると、あまり高貴には見えない少しボロっちいチュニックを着た男が立っていた。
「宿屋でも探してるの?かわいいね!一緒に割り勘で部屋をとらない?」
男はそう言って来た。
一緒の部屋に泊まりたいのが本命なのか、割り勘で安く済ませたいのが本命なのか分からないが安全を優先して断ることにした。
「いえ、残念ですけど、部屋は1人で使いたいのでお断りさせてもらいます。せっかくのお誘い申し訳ないです」
「いやいや大丈夫だよ!ならせめて宿屋に案内してあげるよ!もう暗いし外にいると危ないよ!」
たしかに、今、自分のいる場所は人通りの多い道だが、危ないと言われれば危ない。
宿屋に案内してもらうくらいなら、親切の範中だろう。
「本当ですか?ありがとうございます」
「いえいえ、なら、ついて来て。大丈夫!変な所とかには連れ込まないから!一緒に泊まる人はまた別で探すよ!」
そう言って彼は私の前を歩いて行った。
私も遅れを取らぬように彼について行った。
「ヴェーデル人?ランウェー人?」
「ヴェーデルです!」
「ああ!そうなんだ!通りで綺麗なわけだ!」
「いえいえ、そんな」
と、まぁ言ってはおいたが綺麗な事など私が一番知っているよ。
なんたって私自身が一番綺麗だと思っているのだから。
てか、この顔は、あの神が設定したのかな。
だとすれば、あの神(偽物容疑アリ)は中々にセンスがいいかもしれない。
「あ、言い忘れてたな。俺の名前はリカルド・ボス、オールラン人なんだ」
「へー、オールラン人ですか!」
オールランというのは帝国の西側にある地域に住む人達だ。
前の世界で言う所の低地地方だろうか。
それにしても、オールランは帝国に侵略されてから30年だが、反帝国感情を持つ人が多いと聞く。
彼は違うのだろうか。
だが、聞いたら失礼かもしれないから、聞くのはやめておこう。
「ここは、いい所だ。オールラン人はいないけどヴェーデルやランウェーの移民達が多くいるから移民同士仲良くしてくれるんだ」
「たしかにここは北方圏ですし、元々、ランウェーの領土ですもんね」
「うんまぁ、そうだね。だけど、ここは同時に犯罪も多い。それも、ライツ人富裕層に対してのね」
「それは、怖いですね」
「うん。だけど、ヴェーデル人やランウェー人はそれを喜んでいるよ。ライツ人は自分が一番だと思い込んでるから、みんな毛嫌いしてるよ。まぁ僕はそうでもないけど」
「大変そうですね…」
「そうだね…あ、着いたよ。ここさ」
そこは4階建ての建物で清潔感ある宿屋だった。
中は質素な雰囲気で、暖炉があり、とても暖かい。
4月の末とはいえ北方である以上、やはりまだ肌寒さが残っていたのでありがたい。
「じゃあ、僕は一緒に泊まる人を探すからバイバイ!」
「ありがとうございました。さようなら!」
私は親切な彼に礼を告げるとカウンターに向かって2泊したいとお願いした。
「1泊で30ゲルです」
ゲルはライツの通貨で1ゲルが大体100円くらいの感覚だ。
なのでまぁ、安い宿ではある。
私は10ゲル銀貨6枚を置いて、案内について行った。
案内された部屋は、2階の正面道に面した所だった。
私は中に入って荷物を片付けると、ささっと体を濡れたタオルで拭いて、寝巻きに着替え、ベッドに入った。
こんな時はゆっくりお風呂に浸かりたくなるが、この世界ではシャワーはもちろん、風呂のある宿屋なんてない。
公衆浴場に行こうか迷ったが、もう疲れていたし今度に行くことにした。
「はぁ…お風呂が恋しい…」
ベッドに入ってしばらくすると、すぐ寝てしまった。
西暦1798年4月30日
私は道路の方から騒ぐ声が聞こえて目を覚ました。
まだ、朝は早い頃だ。
窓から道路を見ると窓から見て左側の方にみんな走って行っていた。
「なんだろう…」
私はさっさと朝の身支度をすると、公衆浴場と朝食を食べに行くついでに騒ぎの現場を見てみようと、みんなが向かって行く方へついて行った。
街の人達が沢山集まって何かを見ている。
「おいおい…またかよ…」
「また、ライツ人がやられたみたいだ…」
「オルカット家の長男だとよ…」
人々が眺める中心にいたのは、首から血を垂れ流し、倒れている高貴な服の男。
その周りには自警団が数人立っており、死体を調べている。
「レーヌちゃん?」
背後から誰かに名を呼ばれて振り向いた。
そこにはリカルドが立っていた。
「あ、リカルドさん!昨日はありがとうございました。それにしても、ひどいですね」
リカルドは少し間を空けて。
「ああ、そうだな。うん、最近はよく起こるな」
と、答えた。
「このあとはどこか行くのかい?」
リカルドは続けて尋ねてきた。
「今から朝食と公衆浴場へと思いまして」
「そうなんだ。なら、一緒に浴場近くの食堂まで行かないかい?」
「ええ、ぜひ。ありがとうございます」
昼頃までリカルドと共に過ごした。
朝食を食べた食堂でリカルドと昼まで話した後、彼は仕事があると去って行った。
その後、公衆浴場へ行き、風呂に入った後、宿屋へと戻った。
戻るともう昼を少し回った頃だった。
やる事がなくなった。
街を見て回ろうかと思ったが、リカルドが連れて行ってくれた食堂までが少し遠かったので、もう歩き疲れた。
「さて、何をしよう…」
そんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。
誰だろうか。
心当たりはほぼない。
少し、不安に思ったが思い切ってドアを開けた。
そこに立っていたのは、街の衛兵と神父様であった。
衛兵は背が高く、長い槍を持っていた。
神父様は初老の男性で、背が低く白い髭をたくわえていた。
そして、神父様が口を開いた。
「突然すいません。昨夜に起こった殺人事件について話を聞いてまして…」
朝に見た事件のことを彼らは聞いて回っていたようだ。
だが、私が知っていることは何もないので相手の質問に答えるだけとした。
「そうでしたか、なんでもお聞きください」
「昨日は、いつ頃この宿屋へ来ましたか?」
「日が暮れて少し経った頃だと思います」
「なるほど、こんな所にまでどうして来たのですか?もっと港や馬車乗り場の近くの宿屋へと行かなかったのですか?」
「昨日は街で会った親切な男性に案内されました。彼も宿屋を探していたそうで、一緒に部屋を借りないかと誘われたのですが、遠慮して代わりにここを案内されました」
「なるほど、その男の特徴や名前を伺っても?」
「名前はリカルド・ボスです。オールラン人だと聞いています。職業までは分からないです」
そう答えると神父様も衛兵も顔をしかめる。
「オールラン?オールランの住民はいないぞ、それに昨日、この街に来た人間にもオールラン人はいない」
私は何を言っているのか、よく分からなかったが、少ししてすぐ理解した。
なるほど、彼はおそらく旅行者で金を持っていそうな私をターゲットに絞った訳だ。
でも、一緒に泊まることを拒否されたことで昨日は代理として、あのライツ人を殺したわけか。
まぁ最悪のケースの仮説だけど。
「なるほど、という事は少なくとも彼か私は嘘をついてると思われますね」
「うむ、まぁ君も疑いはない事はない」
「だが、まぁ君はそのオールランの男とやらに気をつけるのだぞ。今日のところはこれで引こう。もし何かあれば教会まで来なさい」
「わかりました」
そう言って神父様と衛兵は帰って行った。
そして、それから少しして宿屋近くの食堂へと向かった。
3階建ての建物で1階と2階が吹き抜けになっているような構造で3階は宿屋のようだ。
中は仕事終わりの人達で溢れかえっており、活気に満ちいてると言った様子であった。
奥の方に席を取り、食事を頼んだ。
今晩は鶏肉を食べることにした。
この世界の食事ははっきり言って味が薄い。
うん、ほんと薄い。
どれくらいって言われれば、鶏肉の味付けは塩を少しとかそれくらい。
ヴェーデルにいた時は、料理人に頼んで味付けを濃くしてもらってたぐらいだ。
しばらくして、料理が運ばれてきた。
山盛りの鶏肉料理。
味は薄いが腹は十分満たされる。
しばらく、1人で食事していると、
「お、奇遇だね」
そこへやってきたのはリカルドだった。
やはり、といった感じだが、どうやって私の位置を確認してるのだろう。
それだけが唯一気がかりだ。
「こんばんは!」
「ああ、こんばんは!今日は長話に付き合わせちゃって申し訳ないね。でも、君はとても話が面白いからつい色々話しちゃうよ」
「そうですか?嬉しいです!」
なんて話を続けて結局、1時間くらい、また彼と話をしていた。
彼は私が聞き上手だと言うが、どちらかと言えば彼が話し上手なのだ。
怪しんで見ているとしても話が面白いのでついつい聞いてしまう。
今日は夜も昼も彼の妹の話を聞いていた。
彼自身の話も少ししたが、彼はすぐ妹の話に戻す。
なんだか、話の内容的にも話す素振りからも、本当に悪い人なのか疑いを持つほどに良い人に思える。
彼は話が終わると、もう夜も遅いからと近いけど宿前まで私を送ってくれた。
元男の私でも分かる。
このリカルドという男は優しくて多分モテる。
もしかすると、そういう一面を見せて私を油断させようとしているかもしれない。
が、結局彼は何もせずに宿屋の前まで私を送ると去って行った。
追いかけようかとも思ったが、まぁ安全第一ということで、この日は帰ってそのまま寝ることにした。
西暦1798年5月1日
いよいよ出発の日が来た。
これから向かうは、ここから馬車で9時間ほどの都市、ドレルク。
ドレルク公領の首都でもある南方で最も大きな都市だ。
朝の用意をさっさと済ませると、歩いて数分の馬車乗り場へと向かった。
まだ朝早くであった為、馬車の数は少なかった。
レギオンは交通の要所である為、馬車乗り場はとても広く、案内所があった。
案内所は小さな木の小屋で、中に入るとデスクに男が1人座っていた。
「すいません、一番早く出るドレルク市行きの馬車はいつ頃出ますか?」
男は少し居眠りしていたようで、私の声に驚いた。
「ええ!寝てませんよ!いやなんでもない!はいなんでしょう?ドレルクですか?えーっとドレルクは3回後の鐘のなる時間に出発するのが一番早く出ます」
「そうですか、ありがとうございます。それに乗りますので、どの馬車か教えていただけますか?」
男は予定書の紙に目を通しながら言う。
「この馬車は、えーっと、まだ来てませんね。私が到着したら伝えますので、名前を教えてください」
「レーヌ・ダンケルです」
「はい、了解しました。レーヌ・ダンケルっと…では、料金ですが105ゲルとなります」
私は100ゲル金貨と5ゲル銅貨を机の上に置いた。
「はい、たしかにお代金いただきました。では、2回目の鐘の鳴る頃には、こちらへ来ておいてくださいね」
「はい、ありがとうございます!」
私は礼を告げると案内所から出た。
そして、まだ時間があるので昨日の食堂でお茶でも飲もうかと、そこへ向かった。
昨日と同じ食堂の同じ席でお茶をしていた。
客はまばらであまりいない。
宿屋から持ってきた荷物を机に載せて中を整頓していると、
「やぁ!僕たちはよく会うね!」
リカルドが席に近づいてきた。
いつ入ったのか分からなかったが、とにかく彼は席へと近づいて勝手に私の向かいへ座った。
「ほんと奇遇ですね。今日は何していらっしゃったのですか?」
まぁ奇遇とは言っておいたが、内心はそんなことこれっぽっちも思っちゃいない。
しばらく、リカルドと話した。
1回目の鐘が鳴ってしばらくした頃、そろそろ店を出ようとしていた時、私は思い切って聞いてみた。
「あの、リカルドさん。質問してもいいでしょうか?」
「なんだい?」
「あなたは本当にオールラン人なのですか?わたしは正直、あなたの事を不審に思ってます。私に何度も会うことも、とても偶然とは思えませんし。一体何が目的なんでしょう?」
言い切った。
心臓がドキドキする。
彼の表情はニコニコしていて、さっきまでと何も変わっていない。
私は顔が少し強張っているかもしれない。
しばらく、間を空けてリカルドはゆっくり口を開いた。
「そのことなんだけど……………」
次の瞬間、リカルドは突然立ち上がって、どこから出したのか分からないナイフを私に向けてきた。
そして、震えた声でこう言った。
「動くな…し…静かにしろよ…殺されたくなければ…お…お前の持っている荷物を全て寄越せ…全てだ」
ああ、やっぱりか…
正直な意見はそれだった。
目的は何にせよ、私の事を狙っていたのは当たっていたようだ。
私は言われた通り、動かず、喋らず座っていた。
リカルドは震えたナイフを持つ手を顔に近づけて何かを言おうとした。
しかし、それは食堂に入ってきた衛兵と自警団の声に遮れて、聞き取る事は出来なかった。
「ベン・アッカーバーク!殺人を行った容疑で教会簡易裁判所まで来てもらう!」
決め手は何だったのか分からないが衛兵達は私の目の前のリカルド・ボスこと本名ベン・アッカーバークを捕まえる事に決めたらしい。
私の目の前に立つベンさんはプルプルと震える手を私に向けたまま、私の隣まで近づいて来た。
そして、
「た…立て………近づくな!近づけば…この小娘は死ぬぞ!」
と、私と衛兵達に言った。
野次馬達が店の中に入ってきて、みんなが私とベンさんの方を見てる。
ベンさんは私の首にナイフをつけて、衛兵達に対峙している。
はぁ…本当に面倒だ。
馬車に乗ったら9時間も身動きが取れず座り続ければならないと言うのに、最後のティータイムすら自由にさせてくれないとは、なんとも迷惑な人だ。
「仕方ないですね…」
私は心の声が漏れてしまった。
でも、まぁ本当に仕方ないし面倒だ。
馬車が出発するまで、あと少しというころ、私は馬車の前で昨日の神父様と衛兵長という方と握手していた。
「君の勇敢さは本当に尊敬する。長時間、馬車に乗る前だというのに、あんな事になってしまって申し訳ない」
神父様はそう言って頭を下げた。
それに続いて、
「申し訳ない」
と言って、衛兵長さんも頭を下げた。
「いえいえ、捕まえられて何よりです」
そう私が返した。
その直後、鐘の音が鳴り響いた。
そして、私の乗る馬車の御者さんが叫んだ。
「ドレルク行きの馬車は発車します!ドレルク行きの馬車は発車します!」
「では、私はこれで。また今度」
私はそう言って馬車に乗り込んだ。
乗り込むと、すぐ馬車は発車した。
中は人が詰まっており、少し暑苦しい。
私は体を捻って振り向き、馬車の小窓から外を見た。
神父様と衛兵長さんが手を振ってくれていた。
「お元気で〜!」
「旅の成功を祈ってます!」
と、神父様、衛兵長さんがそれぞれ言った。
私も小窓から手を少し出して手を振った。
どんどん2人の姿は遠ざかっていった。
2人の姿が見えなくなる頃、体を戻して座り直した。
「はぁ…本当に疲れた…」
私がぼそりと呟くと、前にいたおばさんが、
「そんなに疲れることって何があったんだい?」
と笑顔で尋ねてきた。
なので、私もこれから始まる長旅の仲間と親睦を深める為にも笑顔で話を始めた。
雲1つない晴れ渡る日の昼前のことだった。
西暦1798年5月1日 快晴
今日は仕事終わりに行った酒場で面白い話を聞いた。
なんでも、4番通り沿いの食堂で連続殺人犯のベン・アッカーバークが少女にナイフを突きつけて殺そうとしたらしい。
なんでも、妹の病気の治療費を稼ぐ為に半年ほど前から金持ちのライツ人ばかりを狙って殺人を行っていたらしい。
本人はいつもリカルド・ボスって名前のオールラン人の旅人だと被害者達には言っていたらしい。
で、その日も、その少女を殺そうと機会を伺ってたらしいが情をかけちまったのか、うまい機会がなかったのか知り合ってからも中々、手をかけなかったらしい。
でも、今日の朝、なんと妹が、兄の犯行が書かれた日記を自警団に渡した事で事件が発覚したらしい。
で、ベンの行方を聞いた自警団と衛兵が食堂に突入したって話だ。
ベンは教会簡易裁判所から死刑が下されたらしく、明日の昼に刑が執行されるらしい。
で、肝心のナイフを向けられた少女なんだが、なんと、男が油断してる隙に手と頭を持って魔術で電流を流して気絶させたらしい。
見た人の話によるとすごく速く、可憐な手捌きだったらしい。
少女は、か弱そうな美しい姿をしていたにも関わらずそんな事をやってのけたので、今や、この街のヒーローらしい。
でも、少女はそのあと、誰も見ていないらしくて旅人か何かだと噂されていたよ。
俺も一目見たかったな。
今日は難民がようやく減り始めたんで仕事が楽だったから休憩の時に見に行けばよかったと思ってるよ。
美しくもカッコいい少女か…
あ、でも、みんなあの少女の不満な点を1つ言っていたよ
なんでも、あの少女は貧乳だそうだ。
残念だが、俺の好みではねぇな。
北方入国管理官ハンス・ウルリッヒの日記より