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転生騎士物語  作者: aogami
第一章 〜神の恵み〜
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旅立ちと別れ


こんにちは皆さん!お久しぶりですね!


あら?私のことをご存知ない?


そんな…私悲しいです…


私ですよ!

バレンタインデーに死んだ…


俺だよ!!!!


まずはこの世界への転生を果たした俺のことを聞いてほしい。


小さい頃は親から色々可愛がられたんだけど、なんだかこの世界はおかしいんじゃないかと思うことが多々あった。

でも、それが確信に変わり、この違和感はなんなのか、それが分かったのは4歳だった。


俺の生まれた家庭はどうやら貴族のようなんだ。

まぁ、後から詳しく話すが貴族の中でも低レベルと言われる感じの貴族だった。


で、話を戻すが4歳の時に俺は母親になぜドレスばかり着させられて髪を長くさせられるの?って聞いたんだ。


そしたら俺のマミーは不思議そうな顔でこう返した。


「だってあなたは女の子だもの〜!」


びっくりした。


一瞬、聞き間違いかとも思った。


そういえば、ずっと男と思って生きてきたから疑いもしなかった。

髪を伸ばすのもドレスを着させられるのもこの世界の独特な文化と思ってた。


俺はマミーから女だと告げられ、鏡へ走った。

鏡に写る俺の顔は…女だった…


でも、アソコを触ればすぐ分かるだろとか言われそうだが、俺の家庭は教育熱心なもんで日常のなりふりから色々指摘される。

アソコなんて触って確認すればもう多分めっちゃ怒られる。

てか、子供だから小さくて、ないように感じると思ってた。


話を戻すが、鏡に写ってたのは日本人とは全然違う顔の、可愛い女の子だった。

青い目に金髪の長い髪、白い肌。

うん、自分に惚れそうなくらい可愛かった。


だけど、まぁかわいいと思う程度で別に変なことは思わなかった。

というより、男の時の思考とはけっこう離れてた。

つまるところ、女の思考になってるってことだな。


でも、そんなことより俺はなんでこんな事になっているんだろうって考えた。

そしたら、一つの答えに辿り着いた。

てか、これ以外ない。


それは、あの神(笑)のボーナス特典のせいじゃね?


ってことなんだ。

うん、まぁ普通に考えたらそうなる…


あいつぜってぇぶっ殺すッ!

皆さんならこの状況、別にいいんじゃね?とか思うかもしれません。

でも、聞いてください。

これを聞けば皆さんはあの神をブチのめしたくなるはずです。


私は前世で童貞と呼ばれる存在でした。

と、同時に変な思考を持つ人間でもありました。

なので、20歳までにはそれを卒業するという目標を掲げて彼女づくりに奔走してました(まぁ、全然だめだめだったんですが)。

なので、私はその目標達成の為に自分に試練を課したんです。

それが、問題なんです!

私は童貞を卒業する、その時までオ○○ーをしないと決めて実際にそれを一回もしたことがないのです!

でも、今、女になったせいで私の目標は永遠に達成することが不可能になりました。

正直、新しい世界ではハーレムとか作ってやるとかいう野望もありました。

でも、はい全部パーです。


皆さん、少々気持ちの悪い話になってしまい申し訳ありません。

ですが、まぁそういうわけで私はあの神(自称)をちょっと恨みます。

たしかに新しい人生を歩ませてくれる事には感謝ですが、女になるってのは少し余計でした。

まぁ、それを上回る感謝はしてるんですけどね。


ということで、私は女として生きていく事になりました。

まぁ、美少女って部分は助かりました。


今は17になったので、今までの事を色々話していこうかと思います。

まず、私の名前はレーヌ・ダンケル、ダンケル家の4女として生まれました。

前世の記憶を引き継いでいるということで、昔から天才だの秀才だの呼ばれて結構いい気分で過ごしてました。

家族にも不平不満はなく、姉は全員2歳づつ離れており、末っ子ということもあり皆んなから可愛がられてよかったです。

父は24、母は23で私を生みました。

若いながらも没落せず、領民にも慕われる貴族の一家です。


私の生まれた地はヴェーデル王国の首都スーホルム。

元の世界でいう所の北欧に位置しており、私も純粋なヴェーデル系人種です。


現在、私が17の時点での年号は西暦1798年です。

この世界では西暦の始まりを神の降臨、そして123個のお告げをした時から数えるようです。

ちなみに、この世界の西欧は聖神教と言うものを信仰しており、聖神教の中でも派閥があるようで、色々争ってるみたいです。


ここからは経歴です。

7歳の時に国立スーホルム神学校に入学しました。

スーホルム神学校は国内ナンバーワンの頭のいい学校で、そこを13歳の時に主席卒業。

その後は南にある大帝国、聖ライツ連合帝国の帝都ベルクールにあるエテン・ドルク大学に入学。

明日に卒業を控えてます。


まぁ以前の人生とは比べものにならないくらいの人生を歩んでなに不自由なく暮らしてます。

まぁ挙げるとすれば大学にいる時に受けた差別のせいでほぼ友達がいなかったことくらいでしょう。


あ、言うのを忘れてましたが、この世界の時代は元の世界の中世から近世にかけてくらいです。

まだ倫理観のあまり発達していない時代ですので、女ということや人種の違いで差別を受けるのはよくある話です。

でもまぁそれにも負けずに強く生きています。


それから最後に、この世界には世界人口の1割ほどが魔導士であり、魔導士の国がライツの南にあるほどです。

そして、私もなんと魔導士でした。

魔導士といっても魔力がずば抜けて天才とかいう訳ではなかったので魔導士として生きる道は諦めております。


さて、ここまで長々と読んでいただいてありがとうございます。


そして、私から一言…




楽すぎるッッッ!!!


こんなにも順調すぎる転生者っているもんなのね!

てっきり努力して色々掴み取って冒険だとかそんなことになると思ってた!

なに!?エリートで終わるの!?

エリートの人生で一生が終わるの!?

なんかイヤ!!!


というわけで、私は魔導士ということとエリートという身分な訳でさらなる高みを目指します。

はい、世界征服です。


まぁ、無理だとか言われそうですけど、なんかもうここまで来たらそれくらいできそうですよね。

なんでやります。

できるかできないかはさておきやってみます。


ということで、私は明日の卒業にあたって、まず進路を決めました。

祖国ヴェーデルに戻って親に今後のことを話した後、再びライツに戻ります。

そして、そこでライツ国籍を取り、帝国地方管理監督官をまずは目指します。

帝国地方管理監督官とはまぁ簡単に言うと帝国という国の目の届かぬ場所をしっかり管理して反乱を起こさせないよう指揮する人ですね。

そこから、まぁ色々試行錯誤して国を乗っ取りたいなって感じでやっていきます。




西暦1798年4月12日


卒業から数日が経つ。


私は今、ヴェーデルに戻りました。

ヴェーデルのガロンという港町で昼食をとってます。


やはりヴェーデルはいい。

ライツは技術こそ発達して首都は高い建物が立ち並んでますが、このヴェーデルの国はカラフルな美しい建物がよく目に入りますね。

やはりこちらの方がいい。


とまぁ、久しぶりの祖国に見惚れるのもほどほどにして行動を起こしましょう。


私は乗り合い馬車の発着場に向かう。

そこは街の中心地から少し離れた所にあり、4台ほどの馬車が止まっていた。


その一つの比較的綺麗な馬車を選んで近づく。

屈強な姿の男が馬の毛並みを整えている所であった。


「もし、この馬車はどこまで走ってくれますか?」


こちらに振り向いた男の顔はけっこう怖い。

私を睨みつけるような目を見せていたが、やがて…


「お嬢ちゃんかわいいね!どこまででも行くよ!予約客もいなくて困ってた所だったし!」


怖い顔から一変、すごく爽やかな笑顔をこちらに見せきた。

多分、内面はすごく優しい人なんだろう。


「ありがたいです。では、スーホルム郊外の場所までお願いします。スーホルムに近づいたら詳しい場所をまた伝えますので」


「了解、了解!ささっ!暗くなる前に出発しよう!」


そう言って私は乗り合い馬車に一人で乗った。

他の客は御者が言っていた通り誰もいない。


「一人だから広々と使ってね!」


前方からそう語りかけて来たが、一応貴族なんで、そんな品のないことはしない。

荷物を足元に置いてちょこんと座った。


「君いくつ?かわいいね!」


「ありがとうございます。17です!」




御者の人と他愛もない話をしながら途中寝たりして5時間後には実家の前に着いていた。


「じゃあまたね〜」


御者の人はけっこういい人だった。

私はそんな事を思いながら門を開けて屋敷へと入っていった。

我が家!とうとう帰って来た!

そんな気分でいっぱいだった。


そして、玄関を開けて大きな声で叫ぶ。


「たーだーいーまー!!!!」


すると、みんなが出迎えてくれた。


「おーかーえーりー!!!!」


それからはみんなでワイワイと夕食をとった。

あらかじめ本日の夕刻頃帰ると手紙を書いていたので今までにないほどの豪勢な食事が用意されていた。


もう食べて食べて食べまくった。

学生という身分上、控えてた酒も飲みまくる。

周りを見れば家族のみんなもベロベロに酔っ払い、ガツガツと目の前の物を貪り食っていた。




気がつけば、ベッドの上であった。


ああ、やっちゃった。

酔っ払いすぎた。


家族に迷惑をかけていなければいいが、なんて事を思ったが…


「いや、多分みんなも酒飲んでたから私より暴れただろうな…」


そう呟いてその日は寝た。




次の日、朝の7時に起きたが、みんなはまだ寝ていた。

全く、予想通りだ。

酒癖の悪さでは父母姉は私の遥か上をいく。


愛に包まれてるのはいい事だ。

でも、もうちょい貴族らしくなろうぜ?




10時頃、庭が見える大きな窓のある部屋で紅茶を飲んでいたら、母と父がやってきた。


彼らは昨日の狂騒人間とは思えないほど落ち着いている。

そして、私の向かいに二人とも腰掛けると、


「おかえり」


と落ち着いた声で改めて私にそう言った。

なので私も、


「ただいま」


と返す。


母達は私に色々聞いてきた。

帝都の様子や友達関係、そしてもちろん恋愛についても。

実のところ、いろいろな男性から食事などのお誘いは受けたが、元男という立場からしてあまり乗り気にはならなかった。

なんか、仕方ないよね。


そんな感じで父母としばらく話をした後、私は本題を切り出す。


「でね、お父さんお母さん。私、帝国の武官になろうと思ってるの…」


父母はさっきまでの穏やかな表情から一変、マジかって顔になる。

まぁ予想はついてた。

というのも、帝国とヴェーデルは数年前に血で血を洗うような戦争を繰り広げていた。

戦争の結果は帝国の勝ち。

それ以来、ヴェーデルは大きく弱体化した。


そのことから、私が帝国にいる時、私への差別は他人種に比べて酷かった。

なので、私がエテン・ドルクへの進学を希望した時も反対された。

なので、今回もいい反応はされないであろうことはわかりきっていた。


「レーヌ、お前がそれを望むなら反対はしない。ただ、ヴェーデルと帝国のどちらにも情をかけるのはやめなさい。帝国の役人になるなら最後まで、その使命を全うしなさい」


「お母さんの意見もお父さんと一緒かな」


その返答は意外なものだった。

てっきり今度こそ猛反対を受けると思っていたので、私がポカンとしていると、


「おいおい、天才さん!しっかりしなよ!なにポカンとなっちゃってるんだよ!」


お父さんが笑いを交えて話しかけてきた。

私は咄嗟に、


「あ、ありがとう!頑張るね!」


そう答えた。


こんな事を他の家庭で言えば縁を切られてもおかしくない状況で、この父母はこんなにも優しい事に改めて私は幸せを実感した。


と同時に、前の世界では感じた事のない出来事に私は感動した。

ここに私の不満は一つもない。

父母の愛を存分に感じれた事に。

前の世界ではそうじゃなかったから。


私はこの日から二週間、家族との最後の時間を楽しんだ。

この二週間を最後に私はもうこの幸せを感じれなくなるかもしれないから。


そして、この二週間の間にヴェーデル人の離脱の宣言書と、大学にいた頃に学長から貰っていた『聖なるライツ連合帝国皇帝への忠誠と誓いを込め、新たなる帝国臣民への加入の審査を嘆願する誓約書』も書いた。


姉達にも帝国へと行くことを告げた。

姉達は涙して私へ頑張るよう言ってくれた。

ああ、本当に幸せだ。

心の底から感じれた。


そして、二週間はあっという間に過ぎていった。




西暦1798年4月27日


出発の日の朝、私の家族、ダンケル家はみんなで食事をとった。

以前、エテン・ドルクへの入学式へ向かう日の朝もこうしてみんなで朝食をとった。


でも、この日は前とは違い、みんな涙を浮かべて食事した。

私自身も。


朝食の途中でメイドさんが、3枚の手紙を届けてくれた。

3枚の手紙は1枚目がヴェーデル人の離脱を認めるもの、2枚目が帝国臣民正式加入にあたっての審査会への招待状とそれに関しての注意書、そして3枚目が今までヴェーデルでお世話になった人達からの寄せ書きの様なものだった。


寄せ書きには家族はもちろん、使用人さん、メイドさん、地元の友達、領民の皆様、スーホルム神学校の先生方、様々な人が私の将来の期待とこれまでの感謝をこめた言葉を送ってきた。


ああ、この世界に転生できて私は本当に幸せだ。

沢山の人から沢山の愛を授かった。

それがなによりも嬉しいことだ。



私は朝食を食べ終えると、3枚の手紙を大事に鞄に仕舞って我が家の馬車に乗り込んだ。

この馬車と専属の御者さんにはスーホルム神学校に通っていた時、毎日、私と姉達を送ってくれた。

とても、思い出深い馬車だ。


最後の馬車はガロンまでの5時間の乗車。

最初こそ昔のように楽しく御者さんとお話しをしていたが、ガロンに近づくにつれて二人とも口数は減っていき、到着した頃には二人とも涙と鼻水で顔がドロドロだった。


御者さんは私が見えなくなるまで手を振り続けてくれた。

私もそれに応えて手を振って別れた。


晴れ渡る春の日の昼頃、私はこれまでの思い出と新たなる希望を胸にガロンの船舶乗り場へと向かった。


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