襲撃の始まり
目が覚めると、そこには精悍な顔つきの男がいた
「なんしてんねんレオンお前、のぼせるほど湯に浸かったらあかんやろがい」
俺は夜叉神様と話している間気絶していたみたいだ
シハンに介抱されていたらしかった。
「ほなぼちぼち行ったるか、お前もボケっとしてんと着替えーや」
「はい、迷惑かけます。行き先は決まっているんですか?」
「おぉ北の湖の辺によーさん居るさかい、どつき回したってんか」
とうとう僕らの初陣が始まる
シハンはパーティを組むことをあまり良しとしないタイプで、単独でBランクまでのし上がった豪傑
俺が入ることで余計な手間をかけては話にならない。
夜叉神様の力、存分に使わせて頂きます
目的地まで半分に差し掛かるころ
俺たちはいきなり背後から攻撃を受ける
「なんやゴラ!!」
「猿?」
猿型のモンスターのようだ、シハン曰くキャンキというらしい
木々を飛び移り鋭い爪と牙で襲いかかってくる
一撃はたいしたことないが、群れによる連携攻撃で何度もくらうと少し厄介だ
「こんな山ん中やと俺の火炎魔法は使われへんねん!お前の太刀もすばしっこいキャンキには当たりづらいやろうし」
撤退しようにもすでに退路は絶たれている
連携が取れており、目視できるだけで30匹は確認出来た
本来なら5、6匹での群れが多いのだが、この数は異常といえた
飛びついてきたキャンキを切り伏せながらもシハンはもどかしそうに吐き捨てた
「なんでこんな雑魚モンスターに苦戦せなあかんねんボケぇ!」
シハンは魔法が使えないもどかしさと攻撃が当たらないことで冷静さを欠いているようだ
こうなったら俺が頑張るしかない、今日買ったばかりの太刀をいきなり活躍させることになるとは
太刀を構え、思いっきり振り回した
俺の背丈ほどある大太刀が羽のように軽い
周りの木ごと眼前のキャンキ7匹ほどを八つ裂きにした
そのまま流れるようにバッサバッサと切り捨てていく
「・・・お、お前」
シハンが呆気にとられている間にキャンキの群れは全滅した
この太刀、何故か初めて使う武器なのにやけに馴染む
身体が勝手に最大限力を引き出すように動いてくれる。
「なんちゅー荒々しくも華麗な剣技・・・お前今の技我流か?」
「はい、使ったことないんで振り回しただけですけど」
実際その通りなので、褒められるのはなんだか気が引ける
俺の力というより夜叉神様の力だし
「お前には剣の才能がある、俺が言うんやから間違いない
お前俺と戦った時ステゴロやったし、剣で戦ってたら負けてたかも分からんわ。」
「俺はなんの経験もないんでシハンに稽古をつけて頂きたいです。もっと強くなればそれだけシハンの負担も減りますし」
「初めてでこんだけ強いやつに稽古つけたら俺が死んでまうわ、我流で極めろアホンダラ!
これでも俺七武人の1人に勝ったことあるんやけどなぁ・・・」
なんだか実感はないが剣才では今まで見た中で俺が最高峰らしい
元々剣は持っていなかったため、自身の才能なのかどうかは分からないがこれで満足出来るわけがない
なんと言っても俺が目指すのは最強なのだから。
シハンに今の技に名前をつけて方が良いと言われたため、急ごしらえで「回斬」と名付けた
色気のない名前と笑われたが至って真面目なのだ。
キャンキの異常行動とも取れる大群は少し気がかりではあるが、今の俺とシハンなら問題はないはず
キャンキの死骸から有益な素材を剥ぎ取り、俺たちは湖へと向かった。