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ヲタク高校生は恋できない  作者: 悪ッ鬼ー
第三話 ~筋肉は恐ろしい~
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第三話 ~筋肉は恐ろしい~(4)


 憂鬱だ。学校に行くことが憂鬱だ。

 いつも行きたくないと思っているのだが、今回はいつもの気持ちを遥かに上回る憂鬱さが僕を襲う。

 何故って、昨日の出来事が問題だ。

 昨日、あの後僕は、橘先生に説教された。対して花園と五里斗はそれぞれ帰って行った。長くなると察したのだろう。

 その時は橘先生の説教だけだったが、次は花園と五里斗から色々と言われると思うと恐い・・・・・。

 学校に行きたくない。行きたくはないのだが今日は持久走だ。これ以上補講に回したくない。


「行くしかないか」


 腹をくくり玄関の扉を開け、僕は家を出た。

 天気は僕の心を表しているかのように曇り。そして、学校に行くことを拒む、僕を表しているかのように向かい風も吹いていた。


「あれ、浅木くん?」


 道の端を重い足で歩いていると、よく知っている声が後ろから聞こえた。

 振り返ると天ノ河がそこにいた。変装していない、清楚系女子の方の天ノ河だ。


「な、何で天ノ河がここにいんだよ!」


「え?私の家ここの近くなんだよ。」


 全然知らなかった。幼稚園から中学まで全然会ったことが無かったからだ。どこから来たのか気になってはいたが、まさか僕の家の近くだとは全く思ってなかった。


「まぁ、少し遠い所に通ってたからね」


「そうなんだな。かなり驚いた」


「ちなみに花園さんもこの近くよ」


「あれってストーカーのためにこの地域だと嘘言ってたんじゃ」


「嘘じゃないわよ。だって、幼稚園から小学校まで花園さんと同じ場所に通ってたからよく知ってるのよ」


「あ、だから花園のストーカーの件とか知ってたんだな」


「そうよ。あの時、映画の時に久しぶり会ったわ」


「は?一年の時花園と会ってないのか?」


「同じ学校にいる事は知ってたけど、会っては無かった・・・・・」


 何故会って無かったのかは気になるが―――――


「あ、もう電車が」


 天ノ河のその一言で僕達は急いで駅まで向かった。


「でも、一度も電車でお前を見かけた事なんて無いぞ」


「それはそうよ。浅木くんみたいにギリギリに登校なんて、いつもはしないんだもの」


「あー、今日は寝過ごしたから会えた的な?」


「そうね。放課後も浅木くんが遅いし」


「俺が鈍間のろまみたいじゃないか」


「みたいじゃなくてそうだし。まず放課後は浅木くんが居残りだからでしょ?論外だよ」


「棘のある言葉でめっちゃ痛いんすけど」


 新鮮だった。朝から天ノ河と電車で辛辣な言葉を放たれることが。勿論悪い意味でな。

 電車が学校近くの駅に着き改札口を出ると、改札口向こうから元気のある声が聞こえた。


「あ!鶴音じゃーん!珍しいねこんなギリギリになんて」


 それは天ノ河に向けられた言葉で、間違いなく女友達だろう。

 天ノ河は僕の横を通り過ぎ、その女子のもとへ走って行った。


「そうそう、今日寝坊しちゃって。一緒に行こっ!」


 全然僕との対応が違った。なんか、悲しかった。

 この場面で使うんだろうな。・・・・・ピエン。


「何?さっきの男子彼氏?冴えないねぇー!」


 ん?

 僕は周りを見た。男子は沢山いる。僕なわけないですよねぇ―――――


「あんなキーホルダーを鞄に付けてて。オタクっぽーい」


 もう一度よく周りを見た。見る限りでは、鞄にキーホルダーなんて付けている人は僕を除いて皆無だった・・・・・

 つまりあの女が言っている天ノ河の彼氏?は僕の可能性が非常に高い。まず天ノ河の一番近くにいた男子は俺であって、確定と言っても過言ではない。つまり―――――


 —————僕が冴えない男子だと?


 あのアマが。天ノ河もあんな無神経なやつとは縁を切っちまえ。


「うわっ、睨んでるよ。怖いよぉう鶴っちー!」


 そう言うと、あのアマは天ノ河の背に隠れた。

 逆に天ノ河は、背に隠れたアマの方を向いた。


「あの人は彼氏じゃないよー。まず人にそんな冴えないとか言っちゃだめよ」


 叱った。可愛く。だが僕は口から胃液を出しかけた。

 いつもの天ノ河があんな感じで叱るなんて。いつもとのギャップで、僕には耐えられない嫌悪感が身体中を走った。


「やぁ、浅木ぃ。昨日ぶりだな」


 背筋に悪寒が走った。

 鋭い目から恐怖の目になり、声の主は分かるが、振り向かないと痛い目に遭うと予感した。

 振り向くと制服越しからでも伝わる筋肉を持つ男。知っていた。五里斗だ。


「や、やぁ、五里斗くん。花園さんとはどうだい?」


「今はそんな事より」


「あ、浅木くん。と、松井くん」


「は、花園さん!」


「よ、よぉ。花園」


 よりによって朝に五里斗と花園に会うなんてな。学校に着いてからなら何とかなったかもしれないが、もう逃げられない。これは、もう。怒られるか。

 だが、花園は僕の横を通り過ぎた。


「何してるの?早く行こ。遅刻する」


 何故だ。何故怒らない。昨日僕の間違った解釈で二人に迷惑をかけたのに。


「もしかして五里斗の恋が実ったり?」


「な、な、何言ってんだ!あるわけないだろ!俺が花園さんと付き合うなんてよ!」


 凄い動揺ぶりだ。でも確かにありえないよな。花園が五里斗のこと無理って言ってたし。


「まぁ、お前が花園さんを連れて来てくれたことで、花園さんと友達になれた。感謝はしてる」


 正直嬉しかった。とは思えねぇ。ただただ気持ち悪いだけだ。真顔で良く恥ずかしい事を言えるよな。五里斗が花園と友達になれたところで僕には何も関係ない。これから付き合いが変わるとかは無いだろうし、むしろ花園と五里斗が恋仲になって離れていってほしいと、非情ながらに思ってしまったのだ。

 だが、まぁこいつらがいなくなったら暇になるし、他に友達いないし、今のところは現状維持が良いのかもな。

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