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ヲタク高校生は恋できない  作者: 悪ッ鬼ー
第三話 ~筋肉は恐ろしい~
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第三話 ~筋肉は恐ろしい~(1)


 僕がホモだと言う噂は七十五日も続かず、たった一日で風の如く流されていった。

 それだけ、僕に興味が無いのだろうか。だが、いつも学校の昼にやっている『闇の儀式』は、クラスの大体五分の一ほど。ほんの五人ほどの集まりは昼飯前の「お命頂きます」が流行っている。しかも、陰キャと言う部類の人間ではなく、陽キャと言うグループがだ。面白がってやっている内にそういう習慣が身についてしまったのだろう。皮肉なものだ。

 と、前置きはここまでにして、僕は今やばい状況だ。体育館裏で絡まれた。キン肉マンに。マジで筋肉バキバキの人間は恐いと思った。壁はコンクリートなのに、その壁に壁ドンされるだけで僕にはっきりと振動を与える程の力だったのだ。壁ドンと言っても、告白とかそんな感じじゃない。まず相手は男だし、顔恐いし、形相パナイ。あと、鋼鉄ボディだし。

 とにかく、今から殴りそうな勢いだった。

 逃げればいい。小説やアニメとかではそう思ってたけど、やっぱり足がすくんで動けないし、よくよく考えたら運動神経クソ中のクソ。皆無の僕だった。相手はこの体格だ。きっと足も速いだろう。

 つまりだな。逃げだすこと困難。かつ確実に殺される。イコール無理ゲー。

 ありがとう父さん母さん。いつも迷惑かけてごめんね。そして、語彙力クソで小説の感想では「餓鬼乙」とか言ったやつ、呪いに行ってやる!


「おい」


「ヒイィィィ!」


 とうとう殴られる時間だ。僕は思いっ切り目を閉じる。


「お願いだ!花園さんと仲良く出来るように仕向けてくれ!」


「殴らないで!って、え?」


 聞き間違いか?このゴリラがロリッ娘の名前を呼んでそいつと仲良く出来るようにしてくれっぇー!お願いします。浅木様ぁー!って聞こえたんだけど。

 と、後に言った事は冗談として、僕は驚き、普通はゆっくりと目を開けるべきだろうが、直ぐに開いてしっまった。

 よく、その筋肉ゴリラの顔を見ると―————


「昨日僕が花園と話している時になんかしてきたやつじゃん」


「んだと!」


「ヒイィィィ!」


 やっぱり恐い。一瞬花園と仲良くなりたいとか言って来たからもしかして恐い奴じゃないんじゃね?って油断してた!


「いやよぉ、花園さんの事が好き、何だけどよ。いきなり告白ってのもあれだろ?まぁ、と言う事で、た、このことを伝えてまたここに来てくれ。頼んだぜ。んじゃな」


 そう言って暴力筋肉ゴリラは立ち去って行った。

 面倒なことを押し付けられた。ま、今は放課後だし、明日でも良いよな。


「ん、声がして来てみたけど浅木くん。ここでなにしてるの」


 脳筋ゴリラが立ち去って数分が経つと、花園が何故か来た・・・・・


「い、いや、えっとぉ・・・・・ん?」


 お判りいただけただろうかぁ・・・・・

 ふと花園の更に後方。体育館の陰に、一つのデカい影が潜んでいる。あれは一体何なのだろうかぁ。

 まぁゴリゾウくんだよね・・・・・

 これは、訴えても良いのかな?明らかに不審者だろ。


「え、えっとぉ、あのだな。花園ぉ。落ち着いて聞けよ?」


「何?告白?」


「はあ!?」


ドスンッ!!!


 ゴリヤマくんがいた所から大きな音がした。そっちを見ると―――――

 体育館がえぐれていた・・・・・

 少し砕けた跡がある。これは来るときには無かったはずだ。

 これはヤバい。恐らく告白の単語反応したのだろう。

 それを撤回するまで帰れない。そして今強制的に、ネタ無くなってきたしゴリマッチョで良いや。そのゴリマッチョが僕にお願いしたことを果たさねばいけなくなる。


「ちょっと見てくる」


 僕が少しの間考えている時に、ゴリマッチョの方に花園が行こうとした。

 あれ?このまま放っておいたら、勝手に向こうで合流して、勝手に仲良くしてくれるんじゃ・・・・・これは行ける。

 そのまま小走りで行く花園を見送った。

 奥できょろきょろしている花園。ん?僕の予想では―――――


 「あーゴリマッチョくん、なにしてるの?」「お友達になってください」「良いよ!」「浅木、あんなひどい事をしてごめんな」「良いって事よ」「帰り道ご飯食って帰ろうぜ?俺の奢りだ!」「「わーい!」」


 って、なるはずなのだが・・・・・


「あれ。何もない。何だったのかな」


「ちょっと待ってろ」


 確かにあの時ゴリマッチョはいた。ここから向こうまでの距離はかなりあり、花園が覗きに行くまでの時間はそう掛からなかった。ゴリマッチョが逃げる隙なんて無かったのだ。

 正直意味が解らなかった。あの時見たゴリマッチョは幻覚だったのだろうか。

 まぁ、そんなものだろうと無理やり信じて、今のうちにこの場から立ち去ろう。あの短時間で相当疲れた。そう思い僕は背伸びをした。


「あ――――――」


 背伸びをする時、上を向く。その僕が見た先には、ゴリマッチョがいた。しかもゴリマッチョ下の壁には、へこみが出来ていた。そう。自力で登ったのだ。僕は改めて、筋肉は恐いと感じた。


「じゃあ私は帰るから・・・・・またね」


「お、おうおう。また明日な・・・・・」


 僕は驚きを顔に出したまま、「またね」と言う花園に手を振った。

 花園は、ゴリマッチョに気付かないまま校門に向かって行った。てか、あそこでゴリマッチョに気付かせておけば、ゴリマッチョの事言う必要なかったんじゃないか。そう思ったが悟られないようにしようと思った・・・・・


「あ、ありがとな」


 ズルズルズルと壁が擦れている音と共に、ゴリマッチョの声が聞こえてきた。


「あのまま気付かれていたら、恐がらせて嫌われるかんな。そうだ、自己紹介がまだだったな。俺の名前は松井まつい 五里斗ごりとだ」


「お、おう。どうもどうも」


 唐突に自己紹介をしてきたゴリマッチョもとい五里斗。一様前に出された手を握り挨拶をした。うん。手が潰されそうな程に痛かった。


「まぁ、明日でも良いから、花園さんに俺の事を紹介しておいてくれ。じゃあ、明日、またここに来いよ!良い報告待ってるぜ!」


「お、おう」


 そして五里斗は僕を置き去りにしてこの場を去った。


「面倒くせぇ・・・・・」


 そして、僕もトボトボと帰って行った。

 明日。そう明日。一応話しておくか。五里斗の事を紹介しなければ、あの握力で脳汁スプラッシュなりそうだし。まあ、五里斗は悪い奴には見えないし、花園が僕から離れてくれるなら本望。あとは、花園の答えが良い返事なら良いけれども―――――


 —————そして翌日。


「え、嫌だ。あの筋肉ゴリラでしょ?あれは生理的に無理だから、うん」


 花園がここまで言うんだ。本当に苦手なんだろうな。はぁ。


「そすか、じゃな。用はないわ」


 自分の希望をあっさりと裏切られ、その理不尽な怒りを冷徹に変換し、その場から即座に立ち去ろうとした。


「やっぱり、良いよ」


「は?」


 いきなり良いよと言われても何のことか・・・・・これは俺が鈍いだけか?


「そのゴリラに、ううん。竹井くんに会ってあげる」


 僕の表情で察したのだろうか。それで会ってあげると言っているのだろう。

 僕は花園と五里斗をくっつかせるために行動しているのだ。僕に同情して会ってそのまま五里斗に「さよなら」何て決められても意味がない。

 が、このままこっちから「もう会わなくも良い」と言うのも、やっぱり罪悪感が残り駄目だ。

 ここはこう考えよう。ワンチャンくっつけれるんじゃね?と。あと、松井の名前がグレードダウンしてるのには触れないでおこうか。


「じゃあ、今日の放課後に体育館裏、昨日の場所に来てくれ」


「昼休みでも良いんじゃないの?」


「いやぁ、相手も恥ずかしいだろうし、しかも、昼はお前女子共に囲まれているだろう?」


「分かった、じゃあ、放課後にまた」


「よし。じゃあ、またな」


 一旦これで、放課後まではゆっくりと出来るかな・・・・・

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