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ヲタク高校生は恋できない  作者: 悪ッ鬼ー
第二話 ~秘密~
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第二話 ~秘密~(5)


「行ってきます」


 いつもと同様、完全に復活した僕は扉を開け、清々しい朝の日を浴び―――――


「って雨!」


 さっきまで小雨だったからか、雨だとは気づかなかった。扉を開けたと同時に大雨になり、傘無しでは登校できない状況だ。

 一旦家に戻り、全ての水を弾き飛ばす、水に絶対的耐性を持っているスパァ・アイティム(スーパー・アイテム)。傘なる物を装備し、いつもの道を通い登校した。

 ジメジメとしている中の電車はつらい。冷房は付いているが、人が密集している電車では無意味だと思い知った。蒸し暑いし、濡れている奴もいるから気持ち悪い。いつもの天国さとは全然違い、今日は地獄とも言える場所に変貌を遂げていたのだ。

 電車が学校近くの駅に着くと、人の波に流されて改札口を出ると、やっとあの地獄から抜け出せた。

 そこから少し長い。そして、そこそこに急な坂を徒歩で登りきる。登りきると、直ぐに学校の校門が見えてきた。

 そこには、北上先生がやはり傘を片手に立っていた。そこを足早に過ぎようとすると―――――


「よぉ、通。元気になったな。駅伝大会が終わったら二回分補習だから覚えとけよ」


 そんな言葉になんて貸す耳は持たず。僕はそそくさと校舎内へ足を運んだ。

 中に入ると―――――


「おはようございます」


 天ノ河(善)が現れた。

 天ノ河は、クラスの学級委員長でありながら、生徒会にも入っている。

 顔も美形で完璧とも言えるのに、何故ヲタクなのだろう。ヲタ友としては良いとは思う。でもうざくて、裏の素顔がこんなと秘密を明かされた時には本当にショックだった。

 僕は元気な挨拶をした天ノ河に、聞こえないふりアンド気付いてなかったふりをして、その場を去った。

 自分の教室に急いで行くが、そこに繋がる廊下にも困った人間が・・・・・


「あ、浅林くんおはよう」


「花園、いつも思うがそれわざとだろ?」


 ストーカー娘こと花園だ。

 今日、家を出る前に気付いた。僕の靴の中に一通の手紙があることに。その内容は―――――



 私は君が早退していると聞いたので、先に休みを頂いて先回りをしていました。そして、私は駅は浅木くんと一緒と言いましたが、実はストーキングのためだけに同じ駅で降りてました。



 だそうだ。手紙の時は丁寧語なのな。と、それはいいとして、僕の靴に入れたのは僕が早退した日に入れたのだろう。だが、たったこれだけのためだけに手紙を用意するなんて、何かウザイ。そのせいで僕は脱水にまでなったんだ。ふざけている。


「花園さんと馴れ馴れしく触れ合うな外道め!」


「うぉあ」


 いきなり後ろから強い衝撃が加えられ、前にいる花園にぶつかろうと―――――


「いってぇ!」


 花園は華麗に避け、僕は顔から床に落ちようとしたが、ギリギリの所で手を前に出し、顔面直撃を免れた。が、パチッと、気持ちの良い音がした。手がヒリヒリする。


「お前!花園さんを襲おうとしたな!」


「誤解だ!やめろ!」


 後ろからだったので分からなかったが、胸倉を掴まれた時に顔が分かった。そいつは、いつも花園の周りをウロチョロしている。花園までとは行かないが、花園の学内ストーカー。名前は知らんが同じ二年なのは分かる。

 正直に言って気持ち悪い。女子の言い分も分かる。


「なぁにが誤解だ。花園さんの方に倒れて行っただろうが!花園さんお怪我は?」


 俺に話しかける時はうるさいのに、花園に話しかける時は優しく。鬱陶しい。

 一方、この男から話しかけられた花園は―――――


「大丈夫、どっか行って」


「はい!」


 そして、その男は花園に言われるがまま、立ち去ったが、出てくる前の教室に入り、ずっとこちらを見ている。

 これはもう恐怖しか感じない。故に逃げるしか選択肢はない!

 僕は花園の方に歩いていくと、花園との距離わずかの場所でダッシュ!急いで自分の教室に入った。他クラスの生徒が他クラスに入ることは校則違反になる。故にこの教室内は安全だ。


「ここは安全だぁ」


 自分の席に座り、思いっ切り脱力する。本当に今日はもう疲れた。このまま寝てしまいそうだった。


「浅木くん、今日はどうしたのかな?やけに私や花園さんを避けようとしてたけど」


「いや、熱中症とかから解放された後に、お前達のテンションに付いていくと濃すぎて胸やけを起こすからだ・・・・・ってのは二番目の理由だけど」


「一番目は?」


「あぁ、一番目は・・・・・」


 って待て待て待て。これって言っていいのか?花園がストーカーって事を。

 花園は天ノ河も尾行していたらしい。それで、天ノ河が気持ち悪がったら・・・・・

 いや、これはあいつ、花園がまいた種だ。あいつに片付けてもらおうか。


「一番目はな・・・・・少し耳を貸せ」


「分かったわ」


 そして僕は、耳を近づけた天ノ河の耳元で、誰にも聞こえないようにそっと囁いた。


「一番目はな、花園がストーカーだからだよ」


「知ってるわ」


「気持ち悪いだろ?って、は?知ってんの?」


「えぇ、人の気配には敏感なのよ」


「映画の時もそうだけど、お前女とは思えないな」


「女に思えないって・・・・・」


 流石に失礼だっただろうか。でも、僕と天ノ河の仲だし、このくらいで怒ったりは―――――


「やっぱり浅木くんって、男好きなの!?」


「ちょ、何言ってんだよ!」


 天ノ河は怒らなかった。が、それくらいやばい状況になった。

 大声だったから教室にいた人達が僕の事を見てくる。

 その場にいた男子も女子も引いていた。


「あ」


 対し天ノ河は、「言っちゃった」みたいな声出す。


「皆これは違うんだ!僕はホモなんかじゃないからな」


「じゃあ、男も女もどっちでもいける変態か!」


 誰かは知らないが、そんな事を言い出したもんで更にざわついた。

 人の噂も七十五日と言うが、さてどうなのか。もっと短い期間で治まってくれないかな。

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