第二話 ~秘密~(4)
帰って来て、食事をとり、風呂に入り、課題を終わらせる。ベッドの上で二一世紀最大の発明。スマホを片手に、窓際の壁に背を預けていると、何故か僕は窓の外を見た。そこには、電柱とアスファルト製の道路。それとぉ?電柱裏に隠れている何か―――――
「花園がいる」
花園は、僕の視線に直ぐに気付き手を振られた。
「はぁ、何してんだよあいつは・・・・・」
流石に、こんな真昼間に花園を置いておくのも気が引ける。花園だって女の子だ。俺と同じで熱中症になって倒れらたりしたらそれこそ迷惑だ。
だが家に入れてしまうのも気が引ける。故に、ずっと家に居る婆ちゃんに、少し風に当たると称し、花園と外で話す事にした。
「何してるんだよ」
「ずっと待ってた」
「聞いてねぇよ、て、まさかだと思うけど、俺が帰って、それに付いてきてから、二時間ずっとか・・・・・?」
「まぁ」
「馬鹿かお前は」
正直呆れた。これがストーカー女だと分かっていても流石に呆れる。まぁ、知人だから呆れるだけですんでるが、知らない人からすると追放ものだろうな。
「通。誰かと喋っているのかい?」
「え、いやぁ」
少し騒ぎ過ぎたからか、婆ちゃんが家から顔を出した。
「あらまぁ、そちらのお嬢ちゃんは?」
「花園 美甘です」
「自己紹介がお上手ねぇ。さぁさぁ、上がりなさいな」
「ありがとうございます」
「美甘ちゃん、なんで外に居たの?」
「えっと、通くんが早退したって聞いて。えっと、メールして外で待ってたから」
そして、花園と婆ちゃんの二人はそのまま家の中に入っていった。
ちなみにメールなんてされた覚えは一切ない。
「はぁ、まぁ良いや」
僕も、中に入ろうと、ドアノブに手を掛けた刹那。ガチャッ。と言う鈍い音と共に、背に寒気が走った。
「あんたは、こんな可愛らしい子を待たせた罰として、外で反省してなさい」
「ちょ、花園は俺に用事があんじゃねぇのかよ」
少しすると、ドアの内側から子供の歩いてくる足音が聞こえてきた。否、これは花園の足音だ。
「花園か!ここを開けてくれ!」
「大丈夫。ただ浅木くんの家を知りたかっただけだから。じゃあ、戻るね」
「おいおい、マジかよ」
そのまま花園はカギを開けずに戻って行った。
「俺は熱中症患者だぞ!」
そして、一時間は外に締め出されてしまった。
僕は更に脱水症状となり、だが、婆ちゃんのとっさの対応で何とかなった。全然俺は悪くないのによ、こんな目に遭ってさ。全く、この世界は俺に、ちと厳しいんじゃないかと思ってしまう。
しかし、それらのおかげで明日と明後日も学校に行かなくても良いようになった。全く、この世界は俺に、ちょっとだけ甘いんじゃないか?いや、これくらいが丁度良いのだ。
そんな事を、最初は思ってた。うん思ってた。でも、よく考えてみると、今は駅伝の練習があってるはずだ。たしか、この二日間、どちらも体育がある。となると、どちらも休めてラッキーと思えるかも知れないが、後々がキツイ。補講があるからな!一回の授業で十キロ程走らなければいけない。そう、合計二十キロ走ることになる。結構大変だ。
家に居ても、暇だ。もう元気にはなった。それ故に暇だ。
婆ちゃんは今日、手芸同好会の集まりがあるから、そっちに行ってる。飯も冷凍だ。テレビは詰まらない。スマホでもやる事が無く、アプリを付けて、無意識に付けるの繰り返し。この時、やることが無いのだと悟った。
「寝よ」
そして、夕方まで眠り、風呂に入り、夕飯を食べ、眠くはないが無理やりに寝て、暇な一日を適当に過ごした。
退屈で暇な一日と感じたのは、あの二人がいないからだろうか。いや、ただやることが無かっただけだ。
そして僕は気付いた。だったら、小説を書けば良かったじゃないかと。暇だからこそ小説を書けばいいのでは、と。
やることが無い事は詰まらない。この一日はその教訓を学ぶ一日になった。




