第9話 女の子
書きあがったので早速投稿しますね。
金曜日の女子更衣室。体育の授業が終わり、女子たちが着替えをしている。汗をかいた神楽が体育服に手をかける。
「はぁ。シャワー浴びたい」
神楽はひとりごちた。梅雨にはまだ入っていないものの、6月は外で運動するとそれなりに汗をかく。体育服を脱ぎ、下着姿になる。タオルで体を拭う。ブラで隠された大きめの胸。くびれたお腹。形も大きさもいいお尻。細くもなく太くもないバランスの取れた脚。体つきはとても気をつけているため自信がある。タオルで全身を拭い、制汗シートを取り出す。匂いが強くないものだ。制汗シートで拭きながら、神楽は再びため息をつく。
「はぁ。シャワー浴びたい」
「ん? 土御門さん何か悩み事?」
隣で着替えていたクラスメイトの女子が神楽に話しかけてきた。女子更衣室は少し騒がしいため、言葉が聞こえずため息だけが聞こえていたらしい。
「いえ、悩み事ではないのよ」
「そうなの? なんかため息が聞こえてきたから」
「ため息ですと? それはいけませんねぇ。我らが話を聞きますぞ」
周囲の女子たちがあざとく聞きつけて神楽に視線を向ける。
「何? 体の悩み?」
「いえ、違うのよ」
「だろうね。神楽ちゃんが体で悩んでたらあたしたちはどうすればいいの! 絶望? 絶望だよね!?」
ある女子の言葉に周囲の女子たちが一斉に頷く。神楽の体に羨望のまなざしを向け、自分の体を見て絶望する。
「くっ! なぜ大きくならないの!」
「このお肉いなくなれ!」
「あたしは大丈夫」
「いや、あんた相当太ってるぞ」
「嘘でしょ!?」
「私はもう諦めた・・・」
女子たちは神楽と見比べる。
「土御門さんおっぱい大きいよね」
「柔らかそう」
「何そのくびれ。肌も白いしすべすべしてそうだし」
「なんか最近神楽ちゃん可愛くなったよね。前から綺麗で可愛かったけど、今は何て言うか、大人っぽい?」
「わかるわかる! 大人の色気ってやつ」
「女の私たちでも襲いたくなるよね」
「ちょっと触っていい? 触るよ? というか触らせろ!」
えっ、と驚く神楽をよそに荒ぶる女子たちが群がる。そして、神楽の体が蹂躙される。ぐへへへへ、と欲に塗れた声が聞こえてくる。神楽が抵抗してもオヤジと化した女子は止められない。触り方がいやらしい。優しくじっくり、舐めるように触ってくる。
ようやく解放されると神楽は息を荒げ座り込む。下着を脱がされている。周囲の女子たちが神楽に向けて一斉に手を合わせる。
「「「ごちそうさまでした!」」」
「お、お粗末様でした」
神楽は立ち上がり下着をつけ始める。顔は赤くしている。
「いやー絶品だった」
「また触らせてね」
「あ! お礼に私のも触る?」
「いや、あんたのは全然釣り合わないから」
「そういえば、なんでため息ついてたの? もしかして男?」
女子たちが一斉にキラキラして目で神楽を見てくる。否定しようとするが、暴走した女子たちの速さには敵わない。
「土御門さんの好きな人」
「う~ん・・・男子を寄せ付けない感じがあるかな。神楽ちゃんこんなに可愛いのに」
「そういえば、リア君と仲いいかも。授業中チラチラ見てたりするし」
「そうなの!? 知らなかった。でも、その気持ちわかる。リア君かっこいいよね。私も時々見てる」
「いや、あんたリア君の真後ろの席だろ。四六時中見てるくせに」
「あは。バレた? テヘペロ」
「「「キモイ」」」
「みんな酷い!」
神楽を無視して話が進んでいく。話を聞きながら制服を着ていく。
「神楽ちゃん放課後リア君と何かしてるよね? 何してるの?」
「あ~。彼から魔法を教わっているのよ。まだ私、魔法を使えないから」
「いいないいな! 私も教わりたい!」
私も私も、と周囲の女子たちが声を上げている。神楽は申し訳なさそうな顔をする。
「私と一緒は止めたほうがいいわ。みんな気絶してしまうから」
「あ~。土御門さん魔力多いもんね。私何度か倒れちゃった」
「ごめんなさい。迷惑をかけて」
「いやいやいいよ! 土御門さんは一番頑張っているし」
「ありがとう。授業ではもっと気を付けるわ。みんなも彼に教わりたいなら昼休みとかはどうかしら? 質問だけでも勉強になると思うし」
「そうだね。今度聞いてみよ」
女子たちがみんな一斉に賛同する。みんなで一斉に聞きに行くらしい。
「で、どうなのよ? リア君とはなんもないの? 告白されたりとか」
女子の一人がにやにやしながら聞いてきた。神楽は思わず、好きだと言われた夜のことを思い出した。必死に動揺を隠す。
「なんもないわよ」
「ふぅ~ん? 顔赤いけど?」
「わ、私は恋愛系の話が苦手なだけよ」
必死で言い訳をして彼女たちから秘密を隠す。あんな女誑しの悪魔なんて好きになるわけがない、と必死で自分に言い聞かせる。しかし、最近ふとした時に彼の顔が浮かんでくる。今も話に出て浮かんできた。必死でリアの顔を叩き蹴って踏みつぶして頭の中から追い出す。
「神楽ちゃん可愛いわ~」
「何というか、ツンデレ?」
「わかるわかる。男どもにはもったいない。私がもらっていい?」
「あんたはだめよ。私がもらうから」
「独り占めはだめ! みんなで共有しなきゃ!」
話が変な方向へ進んでいく。そんな彼女たちに神楽は微笑みながら優しく忠告する。
「みんな? そろそろ時間大丈夫かしら?」
「「「やばっ!」」」
クラスの女子たちは慌てて制服を着始めた。
▼▼▼
その日の放課後、神楽は家庭科室のベッドで横になっていた。リアに手をつながれ、体内の魔力を動かしてもらっている。グラは今日も職員会議でいない。神楽とリアの二人きりだ。
「あぁ~。そこ気持ちいい。そのままそのまま」
「はいはい。わかりました」
リアは神楽の言う通りに魔力を制御する。今はまだ、彼女の凝り固まった魔力をほぐしている段階だ。リアは神楽の魔力を自由自在に伸ばす。最初に比べてだいぶ動くようになった。あらゆる方向に伸ばし、リアは魔力制御を一旦止める。
「あれ? どうしたのかしら?」
「第一段階終了です。次の段階に進みたいと思います」
「次の段階?」
「ええ。次はストレッチではなくマッサージです。ここ数日で神楽さんの魔力は鉄の塊からゴムの塊にまで柔らかくなりました。これからマッサージをしてゴムの塊から徐々にスライムの塊に、最終的には水のような液体にします。この例えは理解できますか?」
「非常にわかりやすいわ」
「よかったです。これからまた少し魔力の動かし方を変えます。気分が悪くなったら言ってください」
「わかったわ」
「では、始めますよ」
リアが神楽の魔力を動かす。今度は伸ばすのではなく、振動を与えながら揉むような感じだ。
「あん! ちょ、ちょっと! ひゃっ! 何よこれ! はぁん!」
「どうしましたか?」
体がビクついて、少し喘ぐような声を出した神楽をリアは心配そうに見つめる。神楽はもじもじして言いにくそうにしている。
「何というか、くすぐったいような気持ちいいような。って何を言わせるのこの変態!」
「理不尽な! はぁ。言いたいことはわかりました。どうしますか? 続けますか止めますか?」
「続けるわ。でも・・・」
「わかりました。神楽さんの周囲に僕から見えないよう結界を張ります。防音にもします。何かあったら反対の手で僕の手を叩いてください。すぐにやめますから。これでいいですか?」
「ええ」
リアが神楽の周囲に結界を張る。外から中が見えず、中の声が聞こえない結界だ。
「神楽さん聞こえますか? 外からの声は聞こえるようにしています。準備が出きたら僕の手を二回叩いてください」
リアの手が二回強く叩かれる。
「では始めます」
リアが手の痛さを無視し魔力制御を始める。神楽の魔力をもみほぐし、振動を与え柔らかくする。揉む強さや振動の速さなど変えながら神楽の魔力をゆっくりと解きほぐしていく。リアの握る彼女の手から、彼女が体をビクつかせたり、もじもじと動かすしぐさが伝わってくる。リアは彼女の魔力を解きほぐすことに集中していった。
下校時刻40分前、一時間ほど彼女の魔力をマッサージしていた。あれから止められることなくずっと魔力を動かしていた。時折、彼女の体が大きく痙攣したような感覚があったが、止められることはなかった。リアは魔力制御を止める。そして、外からは見えない神楽に声をかける。
「神楽さん。今日の魔力制御は終了です。もう手を離してもいいですよ」
リアは結界の中に声をかけるが、握った手が離されることはない。
「しばらく落ち着くまでそのままでいいですよ。貴女が大丈夫と思ったら僕の手を三回叩いてください。結界を解きます。出られるようにもしていますので、勝手に出てきてもいいですよ」
リアはしばらく神楽を待つことにする。中で彼女がどのような状態になっているかよくわかっている。彼が司るのは色欲だ。彼女の感情からすべて伝わってくる。彼女は魔力のマッサージをすると性的快感を感じるらしい。
男のリアとしては申し訳ないと思う。これなら気分が悪くなるほうがいいのかもしれない。せめてもの償いとして、リアは握っている手を通して魔法を発動させる。汗などを乾かす洗浄魔法と呼ばれる魔法だ。そして、神楽の合図があるまでじっと待つのだった。
10分後。リアの手から神楽の手がほどかれる。結界の中から神楽が出てきた。平静を装っているが、顔は赤い。リアは周囲に張り巡らした結界を解く。
「お疲れ様です」
「え、ええ」
神楽はリアを見ることができない。目を逸らす。
「これから数日はこれが続きます。大丈夫ですか?」
「が、頑張るわ」
「そうですか。少し話があるので座ってください」
促されて神楽は椅子に座る。ただ、リアとは距離をあけてできるだけ近寄らないようにしている。
「さて、明日から週末です。土日はどうしますか? 練習を続けますか?」
「そういえば、そうだったわね。学校休みね」
「はい」
今日は金曜日だ。明日から二日間高校は休みである。
「明日は少し忙しいわね。朝から夜まで家の用事があるの」
「わかりました。日曜はどうします?」
「出来れば練習したいわ。早く力をつけたいから」
「場所はどうします? 神楽さんの家にしますか?」
「私の家はちょっと・・・。あなたの家はどうなの? べ、別に変な意味はないからね!」
「えーっと、僕は大丈夫ですけど。神楽さんがいいなら」
「私は気にしないわ」
「では、住所を送りますね。時間はどうします? 午前10時はどうでしょうか?」
「それでいいわ」
「決まりですね」
二人の話がまとまった時、リアの結界を通り抜けて家庭科室のドアが開かれる。
「まだ二人ともいたのか。金曜の放課後なのによくやるなぁ」
職員会議や仕事が終わったグラが家庭科室に戻ってきた。
「グラ、お疲れ様です」
「おーう。で、リア? お前は何をしたんだ? 土御門が発情してメスの匂いぷんぷんさせてるんだが。とうとう女に手を出したか?」
「出してません! 貴女にはデリカシーというものがないのですか!」
「あるに決まってるだろ。今のはわざと言ったんだ。なあっ? 土御門」
ニヤニヤしながらグラが神楽を見る。リアもつられて神楽を見ると、彼女は顔を赤くし、キッと睨みつけてきた。
「この変態っ! 女誑しっ! 色欲悪魔っ!」
「なんでですか!? 最後のは合ってますけど」
「くくく。こいつのことよくわかってるじゃないか土御門。何かセクハラされたら、嘘でもいいからあたしに言えよ。知り合い全員に連絡とって、こいつのこと襲ってやるから」
「嘘はだめですからね神楽さん」
「大詰先生・・・。数日前、リア・クルスに胸を触らせろ、スカートの中に手を入れさせろと言われました。私、怖くて怖くて・・・」
神楽が上手な泣きまねをしながら、グラに嘘を告げる。
「ほうほう。さて、色欲? これはどういうことかな?」
「グラ! 貴女も神楽さんの嘘に気づいているでしょう? 神楽さん! それは僕は言ってないでしょ! 神楽さんから言い出したことですよね!?」
「お前も男だからな。そういう欲はあるだろうけど、流石に最低だぞ」
「ちょっとグラ!?」
「いつでもお前のこと襲えるんだぞって脅してきて・・・」
「それも似たようなこと神楽さんが言い始めましたよね!? そろそろ止めてください。口元が笑ってますよ」
「あら? つい楽しくなってにやけるのが抑えられなくなったわ。私もまだまだね」
神楽はあっさりと泣きまねを止める。普段通りの彼女に戻っている。
「土御門。お前結構やるな。リアを動揺させるの難しいんだぞ」
「あらそうですか? この間、思いっきり動揺して顔を赤くして慌ててましたけど」
「ほう。それはいい話を聞いた」
「二人とも、僕で遊ばないでください」
リアの言葉は二人に聞こえていない。グラは神楽に近づき腕を回してリアに背を向ける。そして、小声で相談をする。
「おい。今度リアを慌てさせたとき動画か写真を撮っておけ。高く売れるぞ」
「売れるんですか?」
「おいおい。リアを狙ってる女の話を軽くしただろ。ガブリエルを筆頭とする天使たち。東ヨーロッパを支配する吸血鬼の真祖。ロマノフ帝国の帝室。特に最初の二つはいくらでも金を出すぞ。軽く億を超える」
「えぇ!?」
「出来るだけあいつを盗撮しとけ。バレないようにあたしがお前のスマホに魔法をかけておく」
「わ、わかりました」
「任せた」
二人は相談を終える。リアは不思議そうに二人を見ている。
「何やら相談をしていたみたいですが、ほどほどにしてくださいね」
「大丈夫大丈夫! リアには関係ないから」
「そうそう。女の子同士の会話よ」
「女の子・・・土御門。お前いい女だな。よし、お菓子をやろう」
女の子と言われて機嫌がいいグラは、どこからともなくキノコとタケノコのチョコレート菓子を取り出し、神楽の手に押し付けた。
「あ、ありがとうございます」
「キノコタケノコ戦争ってものがあるが、どっちか選ぶんじゃなくて両方食べればいいだろ。どっちも美味しいんだし」
「は、はぁ」
ニコニコ笑顔のグラと戸惑った様子の神楽。二人の様子を見ながら、リアはため息をついて声をかける。
「はぁ。お嬢さんたちそろそろいいですか? 下校時刻が近いので家に帰りますよ」
はーい、と世界創生から生きている悪魔と女子高生の二人のお嬢さんが返事をした。
お読みいただきありがとうございました。
次の話ができるまでしばらくお待ちください。




