悪役令嬢は味覚がおかしいようです〜流石にブドウジュースとレモンサワーは間違えないだろう〜
楽しげな夜会は、王子たちの言葉で一気に断罪の場と化した。
「アリン・カータレット伯爵令嬢、貴様との婚約を破棄させてもらう!」
「貴女がプリムラ嬢を虐めていたのは分かっているのです!」
「他にも沢山の方が、貴女に嫌がらせを受けていた、という証言をしています!」
「私、ドレスが気に食わないというだけで、ワインをドレスにかけられました!」
「私は、王子に近づいたというだけで、鞭打ちをされました!」
「「「「私達はアリン様を断罪します!」」」」
ざわめく会場、糾弾する少女たち。
王子に泣きつく少女、プリムラ。
その会場で、1人だけ場違いな者がいた。
その者はアリン・カータレット伯爵令嬢本人だった。
今、アリンはこう思っていた。
私の名前って、そんな外国風の名前だったっけ?。
と。
ていうか、いじめって何?。
私は自転車で爆走して、道路に突っ込んで、車に轢かれて死んだはずなんだけど。
まさか、これが噂の悪役転生?。
だけど、もう詰んでない?。
ここから巻き返す方法とか、私知らないよ?。
え?、何すればいいの?。
私、今、婚約破棄されてるんだよね?。
それなら、もうすぐ私はこの夜会から帰らなきゃいけないのかな?。
なら、勿体無いし料理でも食べようかな?。
よし、食べるんならここの料理を全制覇することを目標にしよう!。
最初はカナッペにするかなぁ。
理由は隣に置いてあるから。
おー、このカナッペ、何が乗ってるのか全くもってわからないけど、なんか美味しい。
あっ、たかそうなフルーツ、一口いただきまーす。
もぐもぐ
ごっくん
おいしーい!、なんか瑞々しくて甘くて、美味しい!。
おー、フルーツタルトにチーズケーキ、モンブランまであるんだ?!。
あ、なんか喉乾いてきた。
なんか、隣に飲み物あるし、飲むか。
ごくごくごく
おー、これは、
「ブドウジュース?」
「レモンサワーでございます」
「えっ?、あ、ごめんなさい、私、少々味覚がおかしいようで……」
(((((少々?)))))
この夜会にいる、アリン以外の人の心が揃った瞬間だった。
「おい!、アリン!、お前、俺のことを無視するとは、不敬だぞ!」
「あ、ごめんなさい、眼中にありませんでした」
「なんだとぉ!」
なんだとぉ!、って、思ったことをそのまま口に出しただけなんだけどなぁ。
てか、この王子、子供っぽいんだよね、やることなすこと。
まあ、子供なんだけどさ。
「あ、あと、私、そこのプリムラさん?、でしたっけ?、虐めていませんから、他の方々も見覚えありませんし、まあ、全員パッとしない、地味な顔立ちの方なんで、覚えていないという可能性も十分にありますけど」
「では、私、夜会での食事、全て一口以上食べたので、帰りますね、ごきげんよう」
とは言ったものの、私、帰る方法わかんないんだよねぇ。
そもそもアリンとしての記憶がないわけだし。
あーあ、誰かに聞くしかないのかなぁ?。
私コミュ障なのに。
はぁ、憂鬱だなぁ。
「な、なんだったんだ、あの女は……」