8話「ゴンちゃんって呼んで!」
楓視点
真白視点です。
兎のようなものと真白には言ったが、
実は俺が食べたかっただけで、
見間違えた可能性の方がめっぽう高い。
兎はそもそも草原や雪原など天敵をすぐ視認できるところを好んで生息する。
そのため、木々が少ないところに居る場合が多い。
しかし、この土地で兎が生息する場合、
間違いなく普通の習性とは違うはず………
「この手探りな感じ、懐かしいなぁ……」
何も分からず、ただ無人島に放り出された時以来のサバイバルだ。
「今度は半年以上を覚悟してかなきゃだな。」
久々のサバイバル生活に緩む口元を引き締め、慣れた手つきで動物の痕跡を指でなぞる。
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11番ちゃんの隣に座っている彼は
「この子妖精みたいだ。
森の中でコスプレとは……
ユウもコスプレしてたし……」
と11番ちゃんをチラ見しながら呟くと
再度こちらに目を向け何事もないかのように私に言葉を続けた。
「まぁまぁ、
座ろうよヒシロさん」
「いやいやいや、
この流れでそんなスッと座れないよ!
え、なんで私の名前知ってるの?
会ったことないよね?」
「マジかぁヒシロさんもかぁマジかぁ
山内ちゃんにも忘れられてたんだけど……」
彼から出た名前は予想外の人物だった。
「えっ、えっ?
山内って言った?
あなた、山内先生に会ったの?
この森の中で山内先生に会ったの?」
自分も頼りにすることのある、
大人気な担任の教師がここにいる事に
驚きと喜びが合わさり同じことを2回も訊いてしまった。
「いやいや、ここに来る前というか、
とりあえず座ってよ、積もる話があるし。
多分………」
「う、うん、あなたの話を聞きたいのは山々なんだけど、これから火を焚かなきゃいけなくて……」
「マジか、すごいなヒシロさん。火焚けんのかよ」
「いや、私じゃなくて楓くんが。」
「お、ん?楓くんって、あの道草楓くん?」
「どの道草楓くんかは分からないけど、
うちの学園には道草っていう名字は彼だけだったと思うよ?
あなたも同じ学校だよね?」
「うん、同じだよ。
というかクラスも一生涯なんだけど、
覚えてないかねぇ……?
でも、とりあえず、
火起こしするなら木拾うの手伝うよ。
僕もご飯をちゃっかりいただきたいし。」
そう言うと彼は腰をゆっくりと持ち上げながら「あ~、運動なんて中学生ぶりだってのにぃ~」と悲嘆していた。
彼が立つとその身長はより明確になる。
楓くんより15cm前後小さい私と同じくらいだ。
楓くんが平均的だと考えると男子にしてはかなり小さい背格好だ。
彼はその小さな背を伸ばし
「よし、行こう!」
と笑顔で私に声をかける。
「う、うん、行くのは良いんだけど、
せめて名前だけでも知りたいんだけど」
「あ、あぁ、そっか、ごめんごめん、
あー、でも名前なんてなんでもいいしなぁ
名無しのゴンベエからとってゴンちゃん
って呼んで!」
「そんなふざけた名前……」
「ヒシロさん、
世界中のゴンベエさんに失礼だよ」
「あっ、うぅ……」
軽く自己紹介を終えたところで再度森の中へ向かう。
「ねぇ、あの、ゴンちゃんも目黒に会ったの?」
「メグロ?鳥なんか見てないけど……
メグロとメジロの区別も付けられないよ?僕、自慢じゃないけど頭悪いからね!」
「それは確かに自慢ならないね……
えーっと、鳥じゃなくて、妖精さんみたいのに会ったよね?ここにいるってことは。」
「あ、うん、さっき川辺で寝てた子なら。」
「いや、そうじゃなくて、彼女以外の妖精さん、回帰現象に気付いたからここに居るってことだよね?」
「ん?え?あのコスプレしてる子が何人もこの森にいるの?
怪奇現象って、僕霊感なんてないよ?」
「いや、あの、回って帰る方の回帰なんだけど……
というよりも、さっきの妖精さんは本物の妖精さんだよ。
羽触れば分かると思う。」
「いや、コスプレイヤーって自分の衣装キズつけられたらスゴく怒るらしいから。
触れぬレイヤーにカメコ有りみたいな。」
「その諺の意味が分からないけど、
元が触らぬ神に祟りなしなら意味としてはあってる……よ?」
「いやはや、まぁ、あれだね。
お互いなんかスゴいことに巻き込まれてるってのはよく分かったし、うん、とりあえず枝拾っておけば良いか。
これは道草くんと3人で話した方が手間が減りそうだ。」
お互いに枝木を抱き抱えながら悩ましい表情を浮かべた。
「うん、まぁそうだね。
楓くんに参謀兼実動部隊の全役任せてるから……」
「あー、てことはあれかぁ、
道草くん本気出してるのかぁ……」
その言葉に耳を疑った。
既に楓くんのhide-and-seekを知っている……
その事の意味を理解出来ないほど
私も能天気ではなかった。
「なんで楓くんのことを知ってるの……?」
「え、まって、すごい剣幕してるけど、
僕何か悪いことした?」
動揺して手を大きく前に出して私を宥めようとしているが、その行動すらも訝しい。
「いいから、なんで楓くんのことを知ってるの?」
「いやいや、僕これでも道草くんの幼馴染みだし。あっちが僕のこと覚えていない可能性は高いけど!
僕も彼も鳴子学園の附属幼稚園、小中高だから!
なんか怒らせたならごめんて!」
幼馴染みというのは分かったけれど、
それでも分からない点が多い。
少なくとも楓くんの秘め事を知っているならチームを組まされるはず……
楓くんがそんなにもあっさりバレるような
行動は取らないだろうし、
まだ、ゴンちゃんを信用できる要素が1つもない。
「とりあえずさ、洗いざらい話すにしても道草くんがいる時にしよう?
そっちの方がヒシロさんも疑心暗鬼せずに道草くんと相談できるしさ?ね?」
一理ある。
というよりもそれが最適解だと思う。
相手は自身への信頼を求め
こちらは相手の素性を知りたい。
とにもかくにも楓くんと話し合わなければ私たちのグループがどうなるか分からない。
「ほら、ある程度拾ったし戻ろう?
難しいことは後で考えよう!
口下手だから説明不足なら色々問いただしてくださいまし!
これでも職質は受け慣れてるんだから!」
変な自己主張に困惑しつつも
それも私を宥めようとするための
行動だと思うと、優しい人なのかもしれない。と思えた。
とりあえず今だけは。
投稿時間守れない系男子です。
すみません。
梅干し美味しい