7話「……………すみません」
投稿時間を守れない系男子です。
ほんとすみません。
「まってね~まってね~」
真白は右手を額にあて
左手を俺に突き出して
1分ほど呻くように俺を制していた。
「ええと、真白?」
「まって、ほんと、すぐに正常になるから。」
「あ、あぁ、そのままでいいから聞いてくれるか?」
「うーん……」
「勝手に話すから一応聞いてくれ。
日が昼の位置に上がったぞ。」
「………」
「あと食事の目処がたったぞ。
さっきの野草も含めて、この森は食資源は豊富そうだな。」
「楓くんって、どこでそんな知識とってくるの……?」
「ん?まぁ、親父が変な奴なんだよ。
アウトドアと称して半年くらい無人島に山菜図鑑と10歳の息子を放り捨ててみたり、
週末に焼き肉と称して鶏、鴨、兎、猪、鹿やら解体する所から始まったり、
みたいな感じだ。」
「えー……」
「あ、まぁ、堅気じゃないんだけどな。」
「えー………って、えっ?」
「詳しいことは知らねぇんだけど、
家出る度に黒スーツのオッサンたちがお辞儀してることは普通じゃないことに気付いたのが中学生の時でなー。」
「あー、まぁ普通じゃないーね?」
「まぁな、それより、飯の準備だ。
日があるうちに食材は揃えとこう。
って他の奴も考えるだろうし遭遇出来るかもしれない。」
「やっぱりとりあえず交渉してみる感じ?」
「そりゃ、あの紙切れには手段を選ばず、
とは書かれてたんだ。
話し合いに限るだろ、こんなこと。
さ、動こう。腹が減った。
真白も肉は食いたいだろ?
さっき小川に出る前に兎みたいのがいた。」
「うん、食べたいけど、え?兎食べるの?
いや、解体の話してたし食べるとは思うんだけど、
え、狩るの……?」
「いや、狩ったことあるから大丈夫だ。」
「……いや、あの、あー……
うん、とってきてください……」
「あぁ、真白は乾燥した枝木を拾ってきてくれるか?」
「うん、それなら出来るよ……」
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私たちは一先ず、11番ちゃんを川辺の水がかからないところに寝かせて鬱蒼と茂る木々の中にそれぞれ入った。
意外と言うほどでもないが、枝はいくらでも落ちているのでモノの5分くらいで、太めの枯れ枝を片腕で抱えるくらいに集められていた。
「九分九厘、この枝たちに火を付けるつもりなんだよね……」
枝たちが火を付けられて可哀想ということではなく、この状況で火を付ける術を心得ているという楓くんへの呆れだ。
「最初はボーイスカウトかなにかやってたのかと思ったんだけど、予想の斜め上どころか予想外も良いところだったよ………」
なんだかこの状況下に自分がいるなんて思いもよらなかった。
いや、こんなフィクションの世界でしか
起こり得ない現象に自分がいるなんて、
そんな妄想は高校生になる前まではしていたけれど………
それは今この場のこともそうだけれど、
楓くんという人物を知った時から、
私の中で何か期待していたようにも思う。
実際に話してみて彼のその非現実的生活
には動揺以外の感情が表に出なかったと思う。
夢見がちに時間を持て余す思春期まっさかりな女子高校生がこんな局面に遭遇したらどう思うか、答えはごく当たり前だ。
「ご飯は大丈夫にしろ、
お風呂やトイレはどうしよう……
もしかして楓くんが気を利かせてくれて
一人にしてくれたのかな………?」
枯れ枝を幾ばか集めたところで一度道を引き返す。
「ふぅ、次は小枝ちゃんかなぁ」
はー、お菓子食べたい。
とくにチョコの……!
いけないいけない……
こういう場での無い物ねだりが一番良くない………
私が集めなくていけないのはチョコではなくて、小枝ちゃんだ。
バーベキューなどをしたことがあれば分かることだが、火を点けるにはまず紙や葉で種火を広げるところから火起こしは始まる。
つまり、今集めた太めの枯れ枝だけでは足りない。
そのための小枝ちゃんだ。
獣道、そんな道にもはや見慣れ始めてきた中、今一度水の渋きが聞こえる木々を抜けた先に出る。
「ん?」
川辺に座る少年が目に入る。
その少年は楓くんと同じ制服を着ている。
しかし、その少年は楓くんと違い、
明らかに体格が小さい少年だ。
少年はこちらに気付いたようで振り向いて手を振ってきた。
「ん、お?
ヒシロさんやん
おいっすぅ~」
その少年は楓くんと同じ制服を着ている。
森羅と呼ばれるこの場所で、私たちと同じ格好の人間はつまり、"クラスメイト"だ。
少年は何事もないように、教室での1シーンのように気軽に声を掛ける。
けれど、私はその声に応じない。
いや、応じる前に分からなかった。
「……………すみません」
漸く出た言葉は謝罪。
次に出た言葉は………
「………誰ですか?」
怒涛の導入は一先ず置いて、緩やかに展開していこうと思います。
急展開ってむずかしい。
オカカ美味しい。