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hide-and-seek  作者: 桐舌 柚柝
第一章 森羅の迷走
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6話「なんでナチュラルに呼べちゃうの!?」

楓くん目線です。

「異質」普通ではない。違う性質。

そんな言葉だ。

そんな言葉が俺には合ってしまう。

それは日代も例外ではない。


日代が俺を見つけた勉強会の帰り道、

俺の「異質」を偶々模試で見つけた、

ということだけではないことに気づいた。


確かに事実、結果的に俺の名前はその模試で(あらわ)になっていた。


しかし、それだけで気付かれるほど俺の「異質」は見付かるものではない。

それは18年間生きてきた中で自負していることだった。


隠す、隠れるに於いて俺は人並み以上に狡猾に思考し実行できる。

だが、それが見つかった。



そこで仮定した。

もし、日代が俺と同じように「異質」であるならどうだろうか。

例えば恐ろしく勘が鋭いとか、

探偵顔負けの推理が出来るとか、

あくまで例え話だ。

日代にそんな特技があるとは思えないし隠している素振りもない。




そもそも、あの帰り道の会話、

明らかに俺の本性すらも知った上で煽ってきていた。

観察力が優れているならそれは可能だが、俺の「異質」は行動心理学までなら誤魔化すことは容易だ。



だが、あの帰り道での状況下で俺は手も足も出なかった。

俺は自分の「異質」の性質上、

他人の目を常に気にする必要があった。

あれが教室の片隅であったならいくらでも誤魔化せただろう。


しかし、そうはならなかった。

日代に誘われあの場所へ行き、

仲良く会話に華を咲かせているように周囲から見えてしまえば、周囲からの介入という最悪な展開があり得た。


そのため、光井が終了を告げていない場合の展開は非常に危険だったと言える。


予想外だったのはその後にファーストフードを食べに行くことになったことだろう。

あの状況で二人話に持ち込まれたら正直逃場なんてなかった。


意図的にあの時の行動が行われていたとしたら、日代を「異質」と呼ぶには充分だった。


それは観察力というよりも、俺の心理状態を直感的に読み解いたその力は優れた洞察力というべきだろう。






日代の力がこの森羅に来て能力となった。



「日代、その能力……」



そう言いかけたところで言葉を止めた。


「どうしたの?」


と、日代は小首を傾げるが、俺はその言葉の続きがなんとなく出なかった。

なぜそんな能力が体現してるのか、

なぜ人を理解出来る異質にも関わらず、

俺だけが暴かれたのか。

訊きたかった。



「いや、なんでもない。」


「楓くん、それよりも……」


「あ、あぁ悪い、今の妖精もどきの説明なら今から……」


「いや、11番ちゃん(?)をどうするのか、

というのと……」



日代のお腹からクキューっと可愛らしい音がタイミングよく鳴る。



「あー、すまない。

というか、そうだな。

この場所は女子にしんどいか……

まず、この場所を動く。

その11は俺が運ぼう。

どっちに行くかは……」


「じゃあさっきと同じ方向に行きたい!」


「その心は?」


「どこ行っても仕方のなさそうな雰囲気が楓くんから出てたからかな」



それはどんな雰囲気なのかとツッコミを入れたいところだが、直感的なものなのだろうな……

日代の能力の詳細は分からないが、

その直感は情報が極少ない時には頼りになるかもしれない。



「まぁ、どこ行っても仕方ないのは確かなのだが、

木の傷痕がどこで途切れているかも知りたいからな、日代の提案に賛成だ。」



「おっけい!

じゃあ行こっか!」



日代の謎の溌剌さが再始動し、

それに少し遅れをとる形で俺も歩き始めた。


雑談を交えながらの散歩であったが、

先程の目が黒くなったNo.11。

会話の途中では面倒になって「目黒」となった、アイツとの会話を簡単に説明しながら歩いた。


話の途中で見覚えのある、

食べられる木の実や野草を日代に採ってもらいながら歩き進めた。


感覚的に2kmほど歩いたところで傷痕がなくなっていた。



「傷痕がなければ元来た道も何も分からなかったな。」


「うーん、ほんとうに、こんなこと気付ける人早々にいないと思うんだけど……」


「少なくともうちのクラスに俺を除いて2名以上は気付けたヤツがいるのか……」


「目黒は、クラスメイトみんなが異質って言ってたけど……

私そんなこと感じた人は楓くん以外にいないよ……?」


「まぁ、俺もまさか見付かるとは思ってもなかったしな。

意図的に自身の異質さを隠していたとしたら、うちのクラスメイトたちは確かに驚嘆に価するが……」


「あのお調子者の光井くんも公言されない異質さを持っているってことだもんね……」


「まぁ、アイツはまとめ役でもあるからな、何かとんでもない秘め事の1つや2つあるかもしれないが……」



ただのクラスメイトだと思っていた人たち全員が、俺や日代と同じように突出した能力を持つなんて想像もしなかった。


いや、自身より劣ったものだから、とバカにしていたのかもしれない……


そう思うと周りに目を向けず人畜無害を気取っていた自分が恥ずかしく思えてきた。



「みんなそれぞれ表に出てない部分が多いってことだね!

クラスメイトだけど分からないことだらけだよ?」



日代はそう言ってニコニコしていた。

その表情は次の瞬間、不意を突いた行幸によって驚きと喜びの混ざった表情に変わった。



「さっきからザーッザーッて音が静か過ぎて風かと思ってたけど……

この渋きの音、もしかてだけど川かな!?」



一瞬考えに耽っていた俺に周囲を見渡させるには充分な言葉だった。

日代の元気な問いには「あぁ」とだけ応え、周囲に動物の足跡がないか見渡しながら歩みを進めた。





「さすがは日代だな……

こっちの方向に来て正解だった……」



数分歩くと、そこには小川があった。



「まぁね!そんな私からのお願いだよ楓くん!

私だけ呼び捨てにさせるのはアンフェアなので私も呼び捨てで呼んでください!」



日代は歩き疲れたのか、思ってもないようなことを言いながら大きめの丸い石にドカッと腰かけた。


「あぁ、真白、わるかったな、それからありがとう。」



日代あらため、真白に謝辞を述べると、

ドカッと座った姿勢のまま硬直し、

なぜか顔を紅潮させていた。


時間にして2秒程の硬直後、

石の上に預けていた体重を足に移動させ、

力強く立ち上がり憤慨しはじめた。




「なんでナチュラルに呼べちゃうの!?

私でも自然に呼ぶように頑張ってたんだよ……!?

そんなナチュラルに呼ばれると寧ろ呼ばれる方が恥ずかしいのですけど!!」


「…………俺にどうしろと?」




あぁ、思春期か………

真白のその怒りの真意に対し、

なんとも他人事のように感じてしまった。

後書きに書くことが浮かばないです。


鮪ほぐし美味しい。

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