5話「さぁ、去ね。」
あぁ~前振りが長い間んじゃ^~
引き続き日代視点です。
そして引き続き解説回です。
ご了承ください。
冷笑……?
冷笑って……誰が……?
嬢ちゃんって……?
私?
「なぁ、いい加減うちの相方いじめるのやめてくれねぇか?
日代をからかいだすとキリがないんだよ」
……ん?
「仮に日代がそんな狂人だとして、
その事実によって起こる変化は日代に対する好感度だけだぞ?」
「……楓くん?」
「もちろん減少だぜ?なぁ日代?
とりあえず青筋際立つ拳を引いてみないか?
平和になるぞ。」
私はため息一つ吐いて拳を収める。
それは楓くんの言葉によって引いた拳でなく、
私を正気に戻そうと態と煽る彼の態度に対する感謝によって引いたものだった。
私が正気に戻ったことに気づいたのか、
No.11だったソレはつまらなそうに溜め息を吐いた。その諦めの態度を皮切りに楓くんの尋問が始まった。
「はぁ~もういいよ、はい、本題に入ろうじゃねぇか」
「懸命な判断に感謝しておくとする。
まず、1つめ、改めて質問する。
ここはどこだ?」
「森羅、No.11が言っていた通りの場所だ」
「2つめ、ここから出るためにはどうすれば良い?」
「招待状に書いてあった通りさ、お前らのクラスメイトがいくつかのグループになってこの森羅にいる。
そいつらのhide-and-seekを暴くんだよ。」
「招待状はこの紙切れのことだな?
次はその紙切れとhide-and-seekについて質問だ。
この紙切れの裏に現れたhide、seekはなんなんだ。」
「お前なぁ紙切れ紙切れって言うが……
はぁ……まぁいい、ちゃんと説明してやる。
お前らのクラスの人間は他の人間に比べて異質だ。
だが、お前らの誰一人それを公に明かすことをしない。確かに明かさずとも今後の人生に悪影響を与えることはないだろう。
その異質がhide-and-seekの原型だ。」
「原型?」
つい口を挟んでしまったけれど今回は愚問には終わらなかった。
「hide-and-seekってのはつまるところ、
お前らの異質さを更に人間離れさせた超能力のようなものだ。
だから元はお前らが公に明かさずに隠していた、
ただの異質さだ。
その能力のhideは隠す力。
そしてseekは暴く力だ。」
「その能力の発動条件は?」
「そんなもん人によるとしか言えねぇな。
だが、そうだな、そんな質問をするってことは既に何か気になることがあったってことだろ?
言ってみろ」
「察しが良いな。
そうだ、日代の能力は分かるな?」
「あぁ、慧眼だろ?
今回のseekの中で1~2を争うほど強力な能力だな。」
「慧眼っていうのは洞察力であって観察力とは違うって認識で良いのか?」
いつの間にか私の話になっていて、
しかも得体も知れない、私の能力?の考察をしているのでとても気になった。
凄く気になった。
だけど我慢することにした。
「もう能力の分析を始めてるやつがいるとはなぁ、あぁその通りだ。
ちなみに俺に発動条件は分からない。
元はお前らの異質さだからな。
俺なんかよりよっぽど理解してるはずだぜ?」
「あぁ、それは既に自分の能力で確認した。」
ねぇ、やっぱり楓くん少しは説明してくれないかな?
我慢するにも限界があるんだよ?
説明が欲しいのは君より私の方だと理解しているかい?
「日代、そんなジト目で見ないでくれ。
ちゃんと後で説明するから。」
だが、私は!ジト目をやめないッ!!
その私の決意を他所に、楓くんは溜め息交じりに質問を続ける。
「3つめ、他の連中の能力を暴くのは分かったが、俺らのこのグループの割り振りはどういう采配によってのものだ?」
「お前ら、ここに来る前に互いの異質さに気付いていただろう。
元から知ってる相手の能力を暴いても仕方がないだろ?」
「ふむ、次いで4つめ、お前は暴くと言ったが具体的にどこまで暴くんだ?
能力の名前?
能力の効果?
それとも……」
その言葉を続けようするところでNo.11だったソレの口角がしなやかに頬まで上がっていった。
「能力の原型……のようだな……
はぁ、骨が折れる厄介事に巻き込まれたもんだな。」
「原型を暴くってつまり、
相手がなぜそれを秘め事とするのか、
或いはその異質さが露見した時にどんな影響があるのか、
本質を見抜くってこと……だよね……?」
No.11だったそれは手を叩き笑いだす。
「よく出来たじゃねぇかガッハッハ!
嬢ちゃんもちゃんと考えてんだなぁ!」
明らかにバカにされているが、
気にするだけ無駄だとここまでで学んだ。
「はぁ、それをするには信頼をさせなきゃ普通だったら知る由もない。が……」
「そうだ、
それを可能にするのがhide-and-seekだぜぇ~!!
アガるなぁ~??」
うわぁ……面倒臭そうな性格だぁ……
「お前の性格鬱陶しいな。」
まさか私の思っていることをド直球で言うとは思わなかったよ楓くん……
「まぁいい、あと2つ3つで質問は〆だ。
能力の発現、No.11との遭遇、そしてお前との遭遇、それら全ては条件によるものだな?その条件を全て教えろ。」
「くぅ~っ!勘が鋭いねぇ~
いいぜ?教えてやるとも、
能力の発現はチームメイト全員が各招待状を読むこと。
No.11との遭遇は森羅をいくら歩いても回帰してしまうことに気付くこと。
そして俺との遭遇は1番簡単だ、
No.11の名前を訊くことだぜぇ?超簡単だろ??」
「えっ、それって……」
「あぁ、それ相応の知識がないと全て達成出来ないな。」
「ガッハッハッ!だからお前ら二人が異常なんだよ!
たった二人でそんなこと気付ける人間はいねぇのさ!
特にお前、道草楓ぇ!
お前、俺と遭遇する前に絶対に能力使っただろ?!
断言しよう、今回のhide-and-seekにおいて随一の汎用性を持つのはお前の能力だぜ?」
「その断言は余計だな。黙って俺の質問に応えてろ。」
「お前はすげぇ口が悪いようだなぁ~?!」
「親の教育の賜物だ。」
楓くん、それ自分のご両親をバカにしてることになっちゃうんだけど……
「ほら次だ、この森羅の規則性を教えろ」
「まぁ~そりゃここまで気付いてりゃそりゃ気付くはな。」
「当たり前だ。俺たちが夕方だ、と認識してから既に2時間は経っているにも関わらず、日が一向に動いちゃいねぇ。」
「あぁ、その通り、ここ森羅の日は普通じゃない。
約4時間ごとに朝、昼、夕、夜。
4つの日の位置にランダムに移動する。
つまり、夜を4時間過ごした瞬間、太陽が真上にあるなんてことがあり得る。
それから、植物は見ての通りだが、動物もいる。
ただ、この森羅に適応した動物しかいない。
それがどういうことかは分かるよな?」
「それは良い情報だ。
初めて胡散臭いお前に感謝するところだった。」
「そこは感謝しても良いんだぜぇ?
ガッハッハッハッハ!」
「チュートリアルが終わったら暴き合いに即参戦なんだな?」
「あぁ、その通りだ。」
「そうか、俺の質問は以上だ。」
さすが楓くん、期待を裏切らない……
目に見えて分かる程に不服そうな顔をするNo.11だったソレに同情をする。
絶対最後は自分の名前を訊いてくると思ってたんだろうなぁ……
「おい、」
「あぁ、チュートリアルお疲れ様だったな。さぁ、去ね。」
「おい!!」
その呼び掛けに取った行動は見たまま、無視だった。
「楓くん……」
「なんだ日代?」
「いや……ソレどうするのかなって……」
「おい嬢ちゃんも俺をソレとか言うな!
扱いが雑過ぎじゃねぇか!?」
「日代安心していい、大丈夫だ。
こいつは俺がいずれぶっ殺す。
名前も明かさず偉そうにご高説を垂れる礼儀知らず且つ、俺をこんな意味の分からねぇ場所へ拐った罪は重すぎる。」
安心するような言葉がどこにも見当たらないけれど……
それにも関わらずソレは気持ち悪い笑みを浮かべており、
目の端でその光景を捉えると溜め息交じりについボソりと呟いてしまう。
「私の方がこの状況の意味が分からないよ……」
「あぁ!ぶっ殺しにくるのかぁ?!
なら名前は教えねぇ!いつでも殺しに来い!
無礼千万で結構だぁ!!
頑張れよぉ道草楓ぇ!!!」
異様に高いテンションで楓くんに励みを贈るとNo.11の白い瞳は急速に小さくなりつつ、黒に覆われた眼は白く晴れていった。
2秒もかからずして黒に埋まっていた金色の瞳がNo.11に戻っていた。
とんだチュートリアルの案内妖精だった……
ようやく導入が終わりかな~って感じです。
また別キャラの視点の導入をどっかで挿し込みます。
新宿に跋扈し、春を謳歌せし者共、楽しそうでほんま羨ましい。(新宿マックにて)
韓国のり美味しい。