4話「案内妖精様のチュートリアル」
日代目線です。
カオスな展開にしてしまった。
俺好みの。
少量のSAN値減少多めです。
私は怒り心頭に達した……
わけでもないけど、
あまりに楓くんが私をからうので反発をしているのだ。
未だにからかうつもりで私に振り返るよう言ってるけれど、そうは問屋が下ろしません。
「君たちはこの森に迷い込んだのかな?」
「あ、あぁ、そうだが、ちょっと待ってくれもう一人の聞き手が聞く耳持っていないから。」
お次は声を変えて女の子の真似までして……
そんなに私をからかいたいのかな……?
なにはともあれ反省しない限り私は許さないんだから。
「日代、すまなかった、本当に今後はからかわないから、お願いがあるんだ……」
「お願い……?」
その言葉が気になり振り返る。
振り返るとそこには可愛らしい羽の生えたこれまた可愛らしい小さな子が浮遊していた。
「………」
文字通り言葉を失った。
「サンビちゃん……」
「日代……?」
「サンビ
ちゃん!」
「どうしたんだ日代……?」
「楓くん!
ド○クエの金髪ロールの妖精だよ!!」
「日代、落ち着け。
すまないが、そのキャラが誰なのか分からないから、認識の共有は出来ないぞ?」
「ご、ごめん!
でも死ぬほど似てるんだよ!!
服装は違うけど見た目は完全にそれ!」
「そうか、とりあえず話をするから、しっかり聴いててくれ。
すまないな、連れが興奮状態になってしまったが、多分もう大丈夫だから。」
私は妖精のその姿に見惚れてしまった。
それもそのはずで、私の好きなキャラに似てるというのもある。
しかしそれだけでなく、赤ちゃんのように綺麗で柔らかそうな肌や穢れのない無垢な瞳に神秘的な美しさが溢れ出ている。
「僕たちはこの森羅に人が迷い込むと導く為に産み出されるんだけど……」
「しんらって何……?」
理解が追い付かないせいで、もっと訊くべきことがあっただろうに、ふと気になった言葉について問いてしまった。
「うん、森羅万象の森羅。」
「ただの森じゃなくて森羅なのか?」
楓くんも私の愚問に便乗してくれた。
一気に問いただした所で一気に応えられるわけがない。
そのことを冷静に判断出来ているのだろう。
先程も落ち着けと言われたばかりなのに、と羞恥心に悶えそうになる。
「そうだよ。
どういう意味だ?って顔だね?
大丈夫、ちゃんと説明するよ。」
異様な話の展開が早さ、まるで私たちに説明することが当たり前のような口調だ。
「例えば、君たちが身近な森で迷子になったとする。
さて、数時間もその森を彷徨ったその時、君たちは本当に身近な森を彷徨っているのでしょうか?」
「それは植生で判断出来るだろ?」
ほぼ即答する辺りが楓くんのその特徴を現している気がする。
「そうだね、身近な森と同じ植生ってことは分かるね。
でも、僕が言いたいことはそうじゃない。
全く植生が同じというだけで木々がただ生い茂っているその場所を明確には出来ない、確証のない森、それを森羅と言うんだ。」
「んー、シュレディンガーの猫みたいな話だね……?」
「確かに、それっぽくはあるな。」
猫?そんなのと関係あるの?と妖精が小首を傾げているところに楓くんがあっ、と話を切り出す。
「お前は産み出されたと言ったが、名前はあるのか?」
その質問に私は今さら先ほどの楓くんと
同じようにあっ、と呆けた。
この子、凄く自然に話してるけど、僕っ娘だ……
「あぁ、あるよ。
僕の名前はNo.11だ。」
そう言った瞬間、
No.11と名乗ったソレの眼が真っ黒に染まり白目の部分が一切なくなった。いや、黒に呑まれていった。
その現象と同時にラジオのようなノイズがソレから発せられ、ノイズの音が小さくなるにつれて黒い眼の中心に白い点が浮き上がってきた。
その光景に感じたのは恐怖だった。
ナンバーを冠する奇妙な名前を持つ妖精、
ソレが生物として異常な変化をしていき、
ノイズを発する……
理解不能、その一言に尽きる展開だった。
私は楓くんの後ろに身を隠した。
僕っ娘だなんだと浮かれていた、
そんな空気感は既に一蹴されていた。
それほどまでに無意識下で恐怖していた。
身が硬直し背に一筋冷や汗が垂れることすら過敏に感じるほどその場の緊張は異常だった。
気のせいか、周りの木々が大きく揺れているようにも感じた。
黒く塗り潰された眼に生まれた
小さい白い点は次第に大きく形を為していき、
ノイズが次第に収まりつつあった。
No.11の白い瞳が宿ったと同時にノイズは収まった。
「あ?No.11がこんなに早く起動するたぁ予想外だぞガッハッハッハ!」
先ほどまで幼子の可愛らしくあった声を発していた口からは、今、品性のない笑い声が漏れていた。
「だがお前らは3番目だ!
さぁさぁ奴等は既に先手を打ってるぞ?
どうする!
何がしたい?
何を知りたい?!
さぁ訊きたいことがあるだろう!
知りたいことがあるだろう!
なんだって応えてやる!
これはそう、案内妖精様のチュートリアルだからなガッハッハッハ!!!」
地面を踏みしめていた私の足は力を失い、
楓くんの体に手を伸ばし自身を支えようと試みながら、腰が踏みしめていた地面に落ちた。
「腰が……抜けちゃったよ……」
私のその言葉に楓くんは無言で頭に優しく手を置き、私の顔を見て微笑を浮かべた。
その微笑に心の底から安堵をし息が漏れた。
吊り橋効果とはよく言ったものだ。
異変が起こり始めてからの鼓動の早さと言ったら尋常ではないからだ。
楓くんはNo.11に向き直った。
しかし、その表情は安堵をもたらしたものとは一変していた。
「まず、1つ、お前は誰だ?」
「おうおう、いいねぇ~!
さすがはあの女のクラスと言ったところだねぇ~!
どのグループにも一人は絶対にこの状況に動揺1つすらしない奴がいらぁ!!!」
「早く応えろ、質問ならなんでも応えるようなことを言ってただろ」
「お~~う怖い怖い、だが嫌いじゃないねぇ~!!
俺はNo.11!
ではないことは見たまんまだろう~?
見た目は目以外変わってねぇけどなぁ~
ガッハッハッハ!!」
「うるさい、やかましいな。
お前のせいで相方が腰抜かしちまったんだよ……」
楓くんのその言葉の続きに込められたものをなんと表現すれば良いか私には分からなかったけれど、
先ほどの異様な光景を目の当たりにした時とは違った。
刃に貫かれるように鋭く、血が流れ出たように冷たい恐怖を感じた……
「いい加減説明を求めてた所だ、返答次第で容赦はしねぇからな……?」
「おう、良い殺気だなぁ1番目も2番目にも殺気を放つような奴はいなかったぜ?
あぁ~いいだろうとも!
ちゃ~んと俺の正体は教えてやるさ!
でもそれはまだだぜ?今じゃねぇ。
さっきも言った通り、俺様はここに案内妖精様のチュートリアル講座を開きに来た。
お前の思った疑問を解消してやる。
そしてやるべきことを教えてやるよ。」
そうか、あの鋭く冷たい恐怖は殺気なんだ。
私は二人の会話の内容よりも自分が感じたあの恐怖の真相にのみ聞き耳を立てていた。
その真実を受け、感じることなど何もなかった。
しかし、私の頬は何故か引き攣っているように感じた。
「お?そこの嬢ちゃんも正気じゃねぇな?ハッハッハ!!
こんな時にそんな冷笑を浮かべる人間は早々いねぇぞぉ!」
冷笑……?
冷笑って……誰が……?
嬢ちゃんって……?
私?
つい出してしまったド○クエXのキャラ……
妖精のイメージがそれくらいしかないのでご容赦くださいまし……
作中通り楓くんは知らない設定なので多用する気はないです。
次回も説明回になります。視点はまだ決めてません。(明日投稿なのに。)
食べるラー油美味しい。