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hide-and-seek  作者: 桐舌 柚柝
第一章 森羅の迷走
3/12

2話「最期の晩餐」

道草くん目線でっす。

ようやく物語が進み始めて一安心。

心地よい微睡みの中、その霞みがかった空間に人の声のようなものが聞こえる


「み…くん…」


次第にその声はハッキリと耳に届き俺はその声に反応し起き上がる。


「道草くん!」


「ん……日代か……?ここは……?森?

教室で寝てたはずだが……

てか俺はどんだけ寝てたんだ…?

もう夕方じゃねぇか。」


「分からないの、私もさっき起きて、気付いたら道草くんが隣にいたから、慌てて起こして……」


 

 何気なく周りを見渡すとここが樹林であることが分かった。

木はそれぞれ十分に太く、数多に枝分かれしたその木は自然の力強さを体現したようにエネルギーを発しており、その存在感に俺と日代も圧倒された。

 

 まず、この場所樹林の存在は明らかに異様である。

 それもそのはずで、俺らの学校は23区内に設立された私立高校であり、周りには山林などはないし、樹木を植えるスペースすら怪しい都会中の都会とも言えるその場所を学舎とし利用していたが、この場は全く相反した空間に置き換わっている。


 もうひとつ異様な点を上げるならば、

俺と日代は、二人で森の中で恋人よろしく仲良く眠るなどという関係ではない為、

この時点で事の異様さがすぐに理解出来てしまう。

女性との交際経験もなければ男性との交際経験もない俺にとって現状は実にありえないのだ。


「日代、この場所で目が覚める前の最後の記憶ってなんだ?」


「記憶?うん、あの、光井くんが寝始めて、私も皆も寝始めて……みたいな感じだったと思うけど」


「だよな?俺もだ。

それが気付いたら夕方の森の中、ここがどこかハッキリさせたいがとりあえずは後回しにしよう。」


「え、でも、どうすれば…」


緊急事態に混乱して何をどうすればいいか分からなくなっているようなのでなんとか宥める。


「落ち着いて考えてみろ、俺たちが何故ここにいるのか、こんなことになっているのか、考えられる可能性なんざいくらでもあるが、今やるべきことはそんなことを考えることじゃねぇ。」


日代は俺の話を聞こうと耳を傾け、

早くも落ち着きを取り戻していた。


「まず、この森の夜は安全かどうか、または近くに町や村、人のいる集落だっていいが、とにかく一夜を過ごせる場所があるかどうか。

今この時点で考えるべきは今晩をどう過ごすかだ。大丈夫か?」


そう、今考えるべきはこの先の心配ではなく眼前の現状打破であり、

それ以降のことは、情報が少ない今はあとで考えるしか出来ない。


「うん、ごめんね、やっぱり不安になって頭の中パニックになってた。」


普通なら混乱するのが当然の事であり、

謝る場面でもないと思うが、日代の元来の人柄の良さを感じるな。


「まぁ、なんだ、日代の前では俺は隠れる必要はないからな。なんとかする。」



日代も俺の言葉に小さく頷き微笑する。



「話は変わるが、日代は寝る前に携帯はポケット、或いは手に持っていたか?」


「んー、HR前だったしバッグにしまってたよ?」


「そうか、さすがは優等生だな。

俺はスマホ依存症だからな、ずっとポケットに突っ込んであるのだが……」



そう言って普段スマホを入れている方のポケットに手を差し込む。

そこから二つ折りにされた紙を取り出す。



「道草くん?」


「ん、あぁ、俺さ、スマホやティッシュ、ハンカチも普段持っているんだよ。

なんなら腕時計も着けているんだがな?」


「うん、私も腕時計はいつも着けてきてるよエチケットもちゃんとしてるよ!」



そう言って日代が自分の手首に目をやり小首を傾げ、ポケットを両手でパンパンするとクシャッと紙が潰れるような音がすると日代の表情は更に疑問の表情に変わる。



「あぁ、俺も日代も腕時計がないな。

ハンカチやティッシュもない。

なのに、この紙切れだけが何故かポケットの中に入ってるんだ。」


つまり……


「つまり、誰かが意図的にこの紙を入れたってこと?」


「まだ推測だが、まぁそういうことだな。」



日代と意思の疎通を図り、完全に落ち着きを取り戻したことを確認すると俺は紙に軽く目を落とす。


「そうなると、あれだね、ちょっと犯罪臭がしてくるね……アハハ……」


苦笑いでそう話す日代に現実をつきつける。


「安心しろ、既に犯罪だから。」


そう言って2つ折りにされた紙切れを日代に渡す。


「hide-and-seek……?」


「言っとくが俺は黒幕じゃないぞ?」


俺を訝しむ日代に対して溜め息が出そうになるのを抑え、続きを読むように促す。


 

『hide-and-seek

秘め事、それは他人に公言出来ない特技である。秘め事を暴け。味方を増やせ。手段は選ばずただ暴け。それが可能な能力を貴様らは得た。さぁ、勝者がこの森を抜けることだろう』



「どうやってかはともかく、とりあえず誘拐された説は濃厚だな。

この紙切れ、日代のポケットにも入ってるな?」


「あ、うん、あるかも?さっきポッケ叩いた時変な音したし……」



 日代が紙切れを取り出すとそこには同じことが書いてあったが、本当に一言一句違わないか日代に自身の紙切れを読ませると異変が起きた。


 俺と日代の両方の紙切れがうっすらと青白く発光し始めた。何事かと思いその現象を眺めていたが、結局光はすぐに収まってしまった。



「……日代なにしたんだ?」


「え!え!私のせいなの!?何もしてないよ!?」


「別に疑ってるとかじゃないから気にするな。」


「んー釈然としないよ……?紙読み終えたら急に光りだしたんだもん……」


「まぁ、だよな。」



日代を軽くからかって満足した為、異変のあった紙に再度目を落とすと紙にも変化があった。


「日代、この紙切れの裏側になんか追記されてるぞ」


「え、今光ったからってことかな?」


「さぁ?現実的に考えたらあり得ないが、今のところあり得ない現象しか起きてないからな。」



紙切れに新たに追記された内容を日代の紙切れと見比べるように読むと、書かれていた内容は文章などではなく箇条書きのように記載されていた。


『 カエデ ミチクサ


  HIDE:隠匿

  SEEK:文武最良    』


『 マコトヒシロ


  HIDE:なし

  SEEK:慧眼      』


「はぁ、これが能力というやつか……?」


「ゲームみたいな展開になってきたね……?」



今は日代もゲームをするのか。

という感想よりも理解に苦しむ現状に模範解答を渇望している。



「はぁ、夕飯美味しいもの食いてぇな。」


「最期の晩餐みたいになっちゃうからそういうのやめよ!?」



遂に現実逃避をしてしまった俺を責める奴は誰もいないだろうに。






サブタイトルは登場キャラのセリフにしているのは単に考えるのが面倒だからです。


鶏そぼろ美味しい。

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