記憶の欠片から
ー研究室ー
腹を抱えて今にも椅子から転げ落ちそうなくらい笑っている浩然先生と、その人を見てやれやれとため息をつく瑠璃色の目を持つベイン先生、その隣でニヤニヤしながら立っているチェルシーがいた。
この人の笑い声、廊下まで響いてたな。
「いやぁまさか一般市民の学校にねぇ…wwしかも、雪杜の通ってる学校てw世の中何が起こるかわかんないねぇwww」
「もういいだろ浩然。これから忙しくなるんだ。しっかり働いてくれよ。」
「わかってるよベイン。僕もやるときゃやるさ。」
手をひらひらさせ、体勢を直しながら言った。
「よいしょ。そんなことよりも何やら隣が騒がしいね。」
確か研究室の隣は病室だったかな。
突然勢いよくドアが開き、
「雪杜君いる!」
「ソユンねぇさんじゃん!なになにぃアリス呼び出しぃ?なにしたの♪」
なぜ俺がなにかをした前提で話をするんだ?
「何もしてない。と、思う。俺何かやらかしましたか?」
「安心して、何もしてないよ。実は学校で被害にあった子達を看病と同時に記憶も消してたんだけど、1人だけ記憶が残ってる子がいて。パニックになっちゃったの。」
「わかりました。すぐ行きます。」
ー病室ー
目が覚めたら病室にいた。
あれ?なんで私ここにいるんだっけ…授業を受けてて、そしたら蜘蛛が…そう大きい蜘蛛が!逃げなきゃ!
ベッドから起き上がり走り出そうとした。
逃げなきゃ行かなきゃ!お姉ちゃん!
「Wait!落ち着いて!大丈夫だから!」
金髪の女の人が私を止めようとする。私は余計わけがわからなくなりその人を突き飛ばした。
どうして止めるの?助けて!怖いよ!
「鶴田さん!落ち着いて!大丈夫だよ。俺のことわかる?」
「…筑紫君?」
「そうだよ鶴田さん。ここは安全な場所だし、皆無事だよ。」
「そうなの…よかった…」
筑紫君だ。よかった。大丈夫。皆生きてるんだね。
気づいたら涙が止まらなくなっていた。
「あぁー!アリスが女の子泣かしてる!」
「いくら自分の顔が良いからって女の子は泣かせちゃだめだよ〜。」
扉の方からあの時教室で見た男の子と、大人の男の人がいた。
「やぁはじめまして。僕は李・浩然。よろしくね。」
「僕はチェルシー・A・ターナー♪よろしくアリスの友達♪」
チェルシーと名乗ったその少年は宙に浮いて一回転した。
「あれ?意外と驚かないんだねぇ。僕が最初チェルシーを見た時はびっくりしたよ?」
「多分…一度見たことがあるから…教室で。えっと私、鶴田 梓です。チェルシーさん?学校では、ありがとうございました。あと、筑紫君も。」
「いえいえ〜♪仕事だからね♪」
「どういたしまして。」
仕事?筑紫君も?チェルシーさんは、見た目は私より幼く見えるのにもう働いているんだ。すごいなぁ。それはそうと、なんか耳と尻尾が生えてる?生えてるよね!こんな人いるんだぁ。
「いやいやおかしいでしょ!Are you OK?頭大丈夫?」
先程突き飛ばしたしまった女の人が怒るように言ってきた。
え?私?お礼したのおかしかったのかな?
「No!そうじゃなくて!あぁもう!このわからず屋!」
「え?あの…ごめんなさい…」
「まぁまぁ落ち着いてマディ。ごめんね梓ちゃん。このおばさんちょっと短気でねぇ。」
浩然さんがマディと呼ばれる人を抑えてなだめている。
とても綺麗な人だな。大人っぽくて、金髪がキラキラひかってみえる。
マディが、一息をつき。
「浩然黙りなさい。Sorry.取り乱しちゃったわ。私はマディソン・ラミレス。マディよ。Nice to meet you.」
「マディ姉さんはね〜♪人の心が読める テレパス なんだよ♪」
「……え?」
…ちょっと頭がこんがらがってきた……