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俺達咎人と造られし世界  作者: 白咲 桜花
3/3

自由研究当日

 漢字だった部分が平仮名に、平仮名だった部分が漢字になっている箇所が多量にありますが、どうしたら気持ち程度読み易くなるかで迷走している為です。

 これから先ずっとこうなのでどうかそこだけは見逃して下さいお願いします。


 当日。私は軽い身支度を整え、集合場所に向かった。

「あ……」

 時間には遅れていない筈なのだが、其処には何もない所で手を忙しく動かしている彼——煌鐘 透——の姿があった。


 彼、煌鐘 透はクラスでは浮き気味の存在だった。

 鼻先まで黒の頭髪に、同色の瞳は何もかも見透かし呑み込む輝きのない。私よりも身長の高い彼の身体は女性の様に細い。斉木先輩談だと用事がない時は基本勉強かトレーニングばっかりだとは聞くが体型をみると、トレーニングよりもちゃんと御飯を食べているのかが心配になるばかりだった。

 学力もあまり良いとは言えず、定期テストは何時もオール三〇点——私達の学校は三〇点未満が赤点なので、本当にギリギリ——。授業に積極性はないものの、どんなに難易度の高い問題を必ず正解する。単位も提出物は必ず出す所と出席日数で何とか取っているらしい。


 視線の左上——現時刻——を確認するが集合時間にはまだ早い。遅刻した訳ではなさそうだ。約束の日には何時も十分、十五分早く来るのもあって余計にそう感じただけだろう。

「おはよう、煌鐘くん」

「おはよう。お前早いんだな。俺はもう少し遅いと思っていた」

 彼は視線を外す事もなく手を動かしながらそう言った。

「それ君が言う?」

 透は作業している手を止める事なく、そうだな。とだけ返した。


 ピロリンッ♪ピロリンッ♪


「ん?」

 コミュニケーションアプリからの新着メッセージが届いた事を知らせるベルが私の脳内に鳴り響く。利き手の親指と中指の腹を合わせ弾く様に指を離すと何もない所から半透明のホロパネルが現れ、通知が届いていたアプリが自動で展開した。

 最新鋭VR技術搭載型次世代携帯端末機『アイム ターミナル』——もしくはアイタミ——。それが今私達が使っている携帯電話だ。私は機械類が強い訳ではないので簡単なものになってしまうがざっと説明すると、人の髪の毛等からDNAを採取し、それを一つの端末として利用する。謂わば携帯端末人間といったところか。これが発売された当初、ネットでは某SF映画の時代到来だとか某VRが題材のラノベが具現化したみたいだとかと騒がれたものだった。無論、人のDNAを使うなど危険極まりないと安全面に関する論争は絶えなかった。因みにベルの音は基本本人にしか聞こえない——何でも公共施設でのマナーが年々酷かった為、本人しか聞こえない仕様にしたらしい——。

 メッセージは二件、まだ来ていない二人からだ。


 LINK 通知数貮件

 壱件目 ◯◯:具合ガ悪イノデ今日ハ休ミマス。

 貮件目 △△:御免ナサイ、親ノ急用ガ出来テ行ケナクナリマシタ。


「煌鐘くん、皆来れないみたい」

 彼は手を止めチラリと視線を向けると、そうか。とだけ言い指を空中でスライドさせ、次は手の平をスライドさせた——これら行為、指スライドは今立ち上げているアプリを閉じるもので平スライドはアイタミをスリープモードにするものだ——。

「そうか……もう開館してるよな」

「う、うん。開館してからもう三十分は経ってると思うけど……」

 彼はそれだけ聞くとくるりとこちらに背を向け歩き始めた。

「と、煌鐘くん⁉︎何処行くの!もしかして徒歩⁉︎」

 驚いて思わず尋ねたが、彼は何も言わず足を進める。

 走って追いかけるが途中商店街を抜けていく際に人混みにぶつかってしまった。私がもたついている間にも糸を通す様に人混みから抜けた彼は先々に行ってしまう。

「ちょ、ちょっと待って、煌鐘くん速い!せめてもう少しスピードを落として!」

 やっと抜け出す事に成功したがこのままだと辿り着く前に倒れ込みそうだった。




 あれから十分くらい経っただろうか。商店街からしばらく、大きく拓けた道に出た。辺りにはビルも無ければ車も走らない。住宅、それも木造一軒家がポツポツと見えるだけで、それ以外の全ては田畑が占めていた。蝉が鳴き、虫が跳ぶ。空気は澄み稲が爽やかな風と共にゆらゆら揺れる。それはまるで漫画やアニメで描かれる田舎みたいなものだった。

——透くん、一体何処へ連れて行こうとしてるのかな?

 彼は此処まで何も喋ってない。只々無言に足を運んでいる。たまに視線を感じるが、多分それは私がちゃんと付いて来てるかの確認だろう。


 約伍分経過


 国立電子技術文化保存博物館。

 現在日本にある博物館の中でも一番有名な施設であり、規模としては日本一。膨大な情報は電子技術の歴史のみならず、数多くの日本文化知識が展示されている。それは調べ物は図書館ではなく博物館。という常識が出来てしまう程だった。海外からも評判が良ろしいらしく、ブームが過ぎ去った今尚多くの外国人を見る。何でも死ぬ迄に見ておきたい世界の博物館トップに此処が取り上がったのが原因らしい。

 そんな如何にも施設に到着した訳なのだが、ハッキリ言うと俺は此処を電子技術を専門としている施設とは思っていない。何故ならこの施設は前述した通り電子系以外の情報も多く取り扱っているという点だ。専門以外にも強い博物館でそれはどうかと考えてしまう。

「凄い、バスより早く着いた……」

 ボソリと呟く遥。実を言うとバスでは此処に行くまでに三十分以上掛かるからだ。理由は走る道路が常に混むのと、各停留所から人が頻繁に乗り降りするのと、只単に時間が悪かったと言うのもある。

「さっさと入るぞ。欲しい資料によっては二、三時間は当たり前だからな」

「う、うん」

 目を痛める程白い壁にはめ込まれた漆塗りの目立つ扉を引き開けた。

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