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俺達咎人と造られし世界  作者: 白咲 桜花
2/3

集合

 待チ合ワセ場所、廃ビルノ肆階ニアル壱室



 其処は所々ヒビが入った只々だだっ広い部屋だった。一部の塗装が剥がれたデスクやソファ、凹んだロッカー等が残された其の部屋には俺を除き三人の少年少女がいた。


 白の短パンに水色のパーカーを深々と被る少女。ピンクのショートヘアでに黒縁眼鏡を掛け、今ではもう珍しくなった折り持ち運び型折り畳み式情報端末『ノートパソコン』を見つめている。川井 佳奈出、十五歳。

 黒のハーフパンツに赤の半袖シャツ。金色の短髪に銀のメッシュを入れ、床に倒れ込んでいる少年。野澤 魁斗、十四歳。

 学校指定の運動着を身に付け、茶色混じりの黒髪のポニーテールを揺らし、余裕の笑みを浮かべている先輩。斉木 亜希音、十七歳。

                    以上



 普段は此奴等——にメンバーがもう一人いるが、其奴はまた来た時に——とほぼ毎日一緒である。といっても友達の集まり等という生温いものではない。只、同じ能力を持つ者達が、単に利害一致でパーティを組んでいるだけである。今、此の時点で誰かが裏切るという可能性は大いにある。

つまり、このパーティは信用出来る者は一人もいないという事だ。其れは此奴等も十分に理解している——。筈なのだが、今の状況を見るに本当に理解しているのか心配になる。

「三七六九戦中、全勝無敗で斉木さんの勝利です」

 川井がキーボードを打ちながら溜め息混じりにそう言った。

「うっわー、全っ然勝てねぇーッス」

 息を荒げ、其れだけ言う野澤。

「当たり前でしょ、黒帯五段の私に勝とうなんて、努力無しでは到底無理ね」

 斉木先輩の如何にもどうよ!という笑みには、呆れる事しか出来ない。

「あーっと。取り敢えず、一旦キリが着いたみたいだから、アイスにするか?」

 俺の何とも言えない言葉に、野澤は上体を起こし、斉木先輩は手を若干ガッツしながら此方を見た。



 二人はスティックアイスキャンディを一分もかからずに平らげた。川井は二人の代わりに濃いブラックコーヒーという、歳にしてはやや渋目な飲み物を啜っていた。

「そういやリーダー」

 野澤の声。

「ん、何だ?」

「今日は若干来るのが遅かったんで、心配したんッスよ。何かあったッスか?」

「約十五分の遅れ」

 確かに俺は、何時も此奴らより十分程早く来てる。其の理由は、誰かが何かしらの罠を張っている可能性があるからだ。此方の世界では俺達は余りにも脆弱な身体であり、たかが刃物や銃弾で身体を傷を付けられるだけで、容易く死んでしまうのだ。流石に此処まで来て、パーティの一人欠損等があってはならない。

 話がズレてしまったが、野澤は多分遥に捕まっていた為に遅れた事を、心配して訊いたのだろう。

「別に。特に問題は無い」

「ふーん。まぁ、リーダーがそう言うなら信じるッスけど」

と直ぐに俺の話を真に受けた。まあ、此処で嘘を付いても必要は無かった為、此の話は信用してもらっても良いのだが。

 そんな話をしてる内にもう一人が、俺達の敷地内に足を踏み入れた。

「どうやら待たせた見たいね」

 ロリータ服に金のツインテールを揺らしながら現れた人物。其奴は俺達のメンバー最後の人物、峰岸 紗里啞だった。

「ホント、おっそいッスよ。峰岸」

 野澤は呆れ、溜め息混じりにそう言った。彼女は突然怒り出す。

「アンタね……いい?年上には敬語を使うものよ。更に私はレディよ!言葉使いには気を付ける事ね」

「自分からレディって……それに、歳以外はオレの方が上なんッスけどねー」

「何か言った?」

「イエナンデモナイッスヨー」

 あからさまな棒読み。峰岸が再び噛み付くかと思ったが、

「あっそう」

で済ませた。否、多分気付いてないだけだ。

 未だブツブツと呪詛を唱える野澤に俺の分のアイスで機嫌を取り戻してもらい、皆で円を組む。

「じゃあ始めるか。いつものを」

「了解」

「おうッス!」

「オーケー」

「ええ!」

 皆の笑みと共に俺は呪文を唱える。

 悪魔の呪文を——


「コネクト・オン《E.a.》」


 蒼白い光が俺達を包んだ。




 彼と別れてから直ぐ、待ち合わせしていた友達——上島 美希——がやって来た。

「相変わらずアイツの前だとデレデレね〜」

 如何やらさっきの会話を聞いていたらしく、ニヤニヤしながら弄って来る。

「何々、『私の名前、覚えてくれてたんだ。君とは全然関わってないから知らないと思ってた』。だっけ?」

「——っ‼︎」

「結構、頰赤かったねー。嬉しかった?」

 若干屈み込み、私の表情を窺う光希。

 私は彼女から動揺を隠そうとするが、再び頰が赤くなっていく。

「おー、思い出しとる思い出しとる」

「もうっ、うるさいよ!そんな意地悪な人にはもう古典と数Aを教えてあげない!」

「え、マジでっ⁉︎それはご勘弁を!」

 慌てて手を合わせ謝る美希。冗談だよと声を掛けようと思った瞬間、今度は情け無い声で「遥ぁ〜」と言いながら私の躰を拘束。

「じ、冗談だよ。心配しないでもこれからも教えてあげられる範囲は教えるから」

「良かったー。さっきのがホントだったらマジで終わってたわ」

「でもなんで数Iが出来て数Aが出来ないんだろ?」

 私の素朴な疑問に美希は首を竦める。

「さあ?数Iは何か出来るんだよねー。何でだろ?」

「私に聞かれても……」

——聞きたいのは私なんだけどなぁ

 考えてはみたが、結局何故数Iが出来て数Aが出来ないのかは解らなかった。人によって苦手分野や理解は違うだろうし、私が考えても意味無いか。と無理矢理考える事を中断した。

 今日は久しぶりに友達と遊べるのだ。遊び以外の事を考えてはいけない。

「さ、行こ。最初は何処に行く?」

「ん〜とりま洋服屋かな」

「了解!ってあれ?洋服屋だから、コレってバス停を待ち合わせ場所じゃなくてショッピングモールの方が良かったんじゃあ……」

 私が不意に思った事を口にすると、美希は口笛を吹きながら身を翻し、猛ダッシュで逃げて行った。

「ももももしかして、透くんがココを通る事を知ってたの⁉︎」

「さーて何の事だか」

「美希のバカァ〜‼︎」

 私も直ぐに美希を追ったが美希に追い付く頃にはもうショッピングモールに着いていた。

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