表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

第7話 聖女の逸話

評価とブクマありがとうございます。

励みにさせて頂いています。

 『知識』スキルで検索してみると闇の生き物に心を乗っ取られた巨大な国力を持つ隣国との戦いにおいて、アルフォード国の先鋒の将にキスを送ったという逸話が残っているようである。


 その人物は相手に心を乗っ取られもせず戦い生き残り、見事闇の生き物が居た敵国の王宮までの道筋を切り開いたそうだ。


 うわっー。先代の聖女……なんてドラマチックな逸話を残してくれるの。なんらかのスキルを使って、心を乗っ取られないようにしたのだろうが……。


 その後、男と聖女が結婚しているところをみると完全な洗脳状態に陥っている男の状態を隠すためだと思われ、男がべた惚れだった話がいくつも残されている。


     *


「シェル様。陛下……これは……。」


 団長がジッとみつめてきて何かをつぶやく。まただ。シェルと呼ばれる女性が居たことは確からしい。しかし『知識』スキルを持ってしてでも検索できない。どういうことなんだろうか?


「よかった。わしの記憶違いじゃなかったんだ。よく似ておるじゃろ。」


 そのシェルという女性と私が似ているらしい。


 もしかして、女神の言っていたこの世界が前世だという話は、私のことなのだろうか……?


 まさか……ね……。私の心が清らか? ないわ……それはないわ……。


 そんなこと言ったら、友達全員から総ツッコミされること請け合いだ。


「だが、その名前は出さないほうがよい。この方は『聖女召喚』で召喚されたショウコさんだ。よいな! アダムス。」


 サンジェーク陛下はこの団長と顔見知りらしい。わりと気安く声を掛けている。


「ショウコ…………さん……ですか。」


 何処に行っても聖女さま聖女さまと呼ばれることに辟易していたから、名前で呼ばれると何か新鮮ね。でも、『鑑定』スキルで確認したところ、この方もサンジェーク陛下と同じ年のようである。


 正式には、アダムスアップル・ユーストリングス様。ユーストリングス公爵家の当主で先々代の国王の孫にあたるのだとか……。


 う……うっ……。父親と同じくらいのひととキスしてしまった。いくら金髪碧眼の超美形でも、名前が甘ったるそうでも、これだけ深い溝の皺はちょっと……。


 あれはノーカウントノーカウントよね。忘れることにしよう。


     *


「あっ……ショウコさん……何回やっても傷が塞がりません……」


 別室から戻るとセイコさんが泣きそう……いや……泣いていた。もう救護室の負傷者の手当ては終わったらしい。


 いや……ちょっと待て……外に溢れていた負傷者は10名以上いたはず……いまごろ、負傷者の隣で……頭が痛い……って思いながら……座り込んでいると思っていたのだけれど……まさか……


 私は改めてセイコさんに『鑑定』スキルを使ってみる。


 うわっ。


 やはり『聖女』スキルは聖魔法チートらしい。魔力が全く減っていない……。


「…………ずるい。」


 思わず自分のことを棚にあげて呟いてしまう。神に基本スキルを与えられている『勇者』の称号を持つ人間は、属性魔法である火属性・水属性・風属性・雷属性の魔法に関しては同じように呪文を唱えるだけで、この世界の魔術師よりも少ない魔力で使えてしまう。


 だが無属性である聖魔法や闇魔法はスキルポイントを使用させられ、さらにその世界の魔術師と同様の魔力消費と訓練が必要だった。それで、いったいどれだけ苦労したことか……なのに……本物の『聖女』スキルの持ち主はこれである……。


「あっ……塞がりました……。」


 ちょっ。


 ちょっと待って!


 私はセイコさんの方向に近付いていく。


 この世界の『治癒』魔法はその大きさに見合わなければ失敗して魔力を消費するばかりのはず……それなのに、目の前の傷は確かに……塞がっている……


 だが、負傷者の顔色は一向に良くなっていない。


 私は慌てて『鑑定』スキルで傷口を見てみると……内部で出血しているらしい。


 このバカ聖女め。表面の傷口だけ塞ぎやがった。


 傷口の上から中級の『治癒』魔法を唱える。


 ふー。よかった。内部の出血が止まった。


 下手をしたら、傷口を抉り取ってから、『治癒』魔法を唱え直さないといけない可能性もあったのだ。


 火傷などで内部の傷が先に治り、表面上の死んだ皮膚がそのまま取り残され痕が残ってしまうことがよくあるのだ。その場合、傷口を抉り取って『治癒』魔法を唱えることが必要になる。


 本当にその方法しか完全に治す方法は無いことはわかっているはずなのに……火傷の治癒に失敗して泣きついてきた前の異世界の兵士に施したときには『鬼』『悪魔』と罵られたのは懐かしい思い出だ。


 私は親切心から治してあげたというのに……あんなに楽しかっ……心を痛めていたというのに……なんて言い草と思ったけど……頑張って、その場に居た10名の兵士たちに施してあげたのよね……


「ごめん。もう一度、やって見せてくれるかな?」


 近くに居た負傷者のところまでセイコさんを連れて行く。


 セイコさんは、お手本どおりに傷口を掌で塞ぎ呪文を唱え掌を上げる。


 やはり……『鑑定』スキルで傷口を確認すると『内部出血あり』の文字と共に『1/20』の文字が表示されている。


「『鑑定』スキルで傷口を見て! ほら、ここに『内部出血あり』と表示されているでしょう? この場合は傷口に指を突っ込んで呪文を唱えてみて……。」


「本当! えっ……傷口に指を入れるのですか?」


 バカ聖女め。無茶苦茶嫌そうな顔もできるのね。まあ、日本での常識からすると傷口にバイキンを入れるみたいで躊躇するのも分かるけどね……。


「早く!」


「は、はい。」


 セイコさんは言われた通り、傷口に指を入れて唱えると指を引き抜く。傷口の『内部出血あり』の文字の横に『1/20』の文字が現れた。どうやら、正解のようだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ