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第2話 薬草園の管理者

「ポーションですか?」


 あれから3日ほど歓迎の式典などがあり、ようやく解放されたと思ったら、魔獣討伐の遠征に行く王国騎士団のためにポーションを作ってほしいと依頼された。過去の聖女が作ったポーションは効き目が格段に向上したものだったらしい。


 式典で気疲れすることが多かった私たちはその提案に飛びついた。なにせ式典の間中、ずっと付きっ切りでサンジェーク陛下が説明してくださるのだ。しかも何処に行くのも一緒、食事も一緒、トイレの前まで付いてきたときは拒絶したが叱られた犬のような表情をするのは止めてほしかった。


「では参ろうか。」


 やはりサンジェーク陛下が案内してくれるらしい。思わず陛下に見えないようにため息をつく。王宮には立派な薬草園が存在するらしい。籠城しても1年くらいは王宮に勤める魔術師や騎士たちに十分供給できるほどの広さがあると、道々でサンジェーク陛下が説明してくださる。


 はいはい。そうですともそうですとも……。


 とにかく薬草園に着くまでだ。我慢。我慢。いくらなんでも、市井の人間であるポーション作りの技術者に混じって一緒にいるということもあるまい。


     *


 はいはい。私が甘かったんですね。


 薬草園に到着すると早速、サンジェーク陛下がポーションの作り方の説明してくださる。聞いたところによると、この薬草園の管理者兼筆頭技術者はサンジェーク陛下らしい。まるでどこかの皇室のお仕事のようである……。折角、解放されると思っていたのにあんまりだ。


 作り方の説明や手本を見せるのにサンジェーク陛下が動いてくださるのは仕方が無いにしても、この体勢は無いんじゃない。私がいくら小さいからって、後ろからすっぽりと覆いかぶさるように手取り足取り教えてくださるのには参った。


 しかも説明するたびにこちら側を向いて楽しそうに視線を合わせてくる。まるで恋人どうしのようなやりとりだ。


 サンジェーク陛下は若いころと言わず今もイケメンだ。だけど私のお父さんの年齢の方にときめいたりはしない。私は恋人にするにしても40歳くらいが限界なのだ、それよりさらに一回り以上年上では全くもって対象外である。


 それに情が移るのが一番恐い。日本に戻るには彼と彼に近しい王族を犠牲にしなくてはならないのだ。


「あっ、ごめんなさい。」


 その度、作業のため腕を動かし肘鉄をかますのだが全然、懲りない様子で再び同じような仕草で顔を近づけてくる。最高権力者でイケメン。今まで拒絶なんかされたことも無いのだろう。


「そんなことよりも、この薬草は力を入れてすり潰したほうがいい。こんなふうに……。」


 そう言ってスリコギを握っている私の手を上から手を重ねてくる。


 ぞぞっ。やだ。寒気が走った。


 一通り、説明を受けて解放されたのが1時間後だった。


 次はセイコさんの番だ。セイコさんに手酷い扱いをできないように私の対面で作業してもらっているが、横に座って普通に接しているのである。今までの私への扱いはなんだったのだろう。


 初めこそ失敗の連続だったが、『知識』スキルを駆使してコツを習得して同じ材料でも、より効果が高くなる方法を調べ、より効率的なポーションの作り方を調べた上で『錬金術』スキルでより上位に当たる成分に変換する。


「凄い。やはり、貴女が聖女なのですね。」


 やりすぎたかもしれない。普通なら絶対できない下級HPポーションの材料から上級HPポーションを作りだしてしまったのだ。下級ポーションの数倍の効果を持つ上級ポーション。実は間に3段階ほどのランクをすっ飛ばしてしまっている。


 しかも、出来上がった数は想定していた下級ポーションとさほど変わらない数を作ってしまったのだ。


「もちろん、私と彼女が聖女と呼ばれている存在のようです。お疑いでしたの?」


 『聖女』スキルはチートだ。私より多くの失敗作を生み出したセイコさんだったが、自分の作品を『鑑定』したときに驚いたのなんのって……液状化もしていない失敗作と思われた山になったゴミが中級程度の効果を持っていたのだ。


 ビン詰めしなくていい分だけ、こちらのほうが効率的かもしれない。なるほど『聖女』の副次的効果ってこういうものか。試しに見本の下級ポーションを彼女に持たせただけで中級くらいの効果にあがったのは参った。


「もちろん、そんなことは考えていないぞ。」


 私はホッとする。私が突っ走りすぎたせいで、彼女が『聖女』じゃないと疑われてしまっては全く意味がないからだ。

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