第13話 聖女の血
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「オジさーん。それこっちね。」
料理が届けられるたびに『鑑定』スキルと『知識』スキルを駆使して奪い取る。こんなにスキルを連発したのって、初めてかも……。
ユーストリングス団長の前に残っている料理は臓物を使ったものばかりになっている。そうやって取り上げていかないと注文した料理の半分以上が臓物を使った料理だったからである。
「なんでい。わかるのかよ。からかってやろうと思ったってのによー。つまんねー。くそっ、しかも酒のつまみばかり残しやがって……。」
「じゃあ、これも頂くわね。」
私は、ユーストリングス団長のまん前にあった料理を奪っていく。臓物の煮付けだったが元の形状もわからなくなっていたし、『知識』スキルによると高級食材の一種で全ての料理で一番値段が高いと思われた料理だ。
「あーーーーあっ。」
「うるさいわね。じゃあ、私はこっちね。」
サンジェーク陛下がさらにその横の料理を掻っ攫っていく。こちらはこの土地の名物料理らしい。
「サンジェリーク。何しやがんだよ。これじゃあ、一杯飲み屋のメニューみたいじゃねえか。どうしてくれんだよ。」
「オジさーん。これ4つね。」
私は通りがかった店のオヤジに主食を頼む。パンの一種らしい。
「はいはい。頼んであげたわよ。これだけあれば十分でしょ。」
「ひでーな。なんていう組み合わせだよ。これ。」
「えっ。ご飯ものが食べたかったんでしょ。」
「本当に呑ませない気かよ。」
「もちろんよ。お・女3人残して呑んだくれる護衛はいないでしょ。」
サンジェーク陛下を女扱いするのはひじょーに不本意なんだけど……。
*
一時も気の抜けない夕食だった。隙をみせるとユーストリングス団長がワインを盗み取ろうとしてくるのだ。
私がワインを守りきった余韻に浸っていると急にユーストリングス団長の顔が真剣になる。そんな顔をしたって騙されないんだから……。
数人の男たちが入ってくる。と、隣のテーブルについた。
「おいオヤジ! ワインを高いほうからドンドン持ってきな。それに合うつまみもつけてな!」
見た目は貧相な男たちだったが、お大尽らしい。
「へえ。いい女揃えてるじゃねえか。酌しろよ。酌。」
私はセイコさんの腕を引っ張ろうとした男の腕をひねり上げる。セイコさんは余りのことで事態についていけないでいる。
「いてぇ。なにするんだよ。このガキ! 俺を誰だと思ってるんだ。ワンリーグ第99小隊のサード様だぞ。」
「そんなの知らないわ。私たちは、酌をするためにここにいるんじゃないの。解ったかしら。それとも、もっと痛い目にあって見なきゃ解らないかな?」
「待って! その子たちは男に馴れてないの。お酌なら私がしてあげるわ。はい。どうぞ。」
サンジェーク陛下が男にしなだれかかるように私と男の間に割り込んでくる。
よーやるわ。余りのことで呆れてみている。と、後ろから視線を感じ振り向く。ユーストリングス団長が睨みつけていた。そんなに嫉妬するなら、団長が出て行けばいいのに……。護衛する気があるのかしら……。
「おう。こっちも中々の美人じゃねえか。おいおい、お前の男が睨んでいるぞ。大丈夫か?」
次はどんな難癖をつけてくるのかと思ったら、肝が小さい男らしく団長の視線に耐え切れなかったらしい。
「いいのよ。それよりも、凄く羽振りが良さそうね。久しぶりにこの街に来たのだけど、なんか大捕り物でもあったの?」
「いいや。俺たちこの街を魔獣から守る自警団みたいなもんなんすよ。領主の甥のワン・ストリングス様に雇われているんすけど……報酬はこの街で何でも飲み食いできるだけなんすよ。」
男は気分が良くなったのかペラペラと喋りだす。しかし、どう見ても気味悪い光景なんだけど……。
「へえ。命がけなのに、それだけの報酬でよくやっていけるわね。」
「ほら、おれっちは志が高いから、この国の現状を憂いてましてね。こりゃ、なんとかしなきゃ……と思って立ち上がったんすよ。」
どう見ても志が高いようには見えない男がそんなことをのたまう。その男の装備なんかも結構、上等なものばかりで支給品のようには見えない。これは、何か裏がありそうね。
*
男はユーストリングス団長の前でコナをかけるほど勇気がなかったのか、サンジェーク陛下の酌で悪酔いしたのか。へべれけ寸前まで飲み食いして帰っていった。
私たちは、陛下と団長の部屋に移動する。
「あれが盗賊団の1人だよ。」
団長が部屋に到着するなり、爆弾をぶちあげてくれる。
「じゃあ何。領主公認の盗賊団なの?」
「そんなわきゃ……無え……だ…ろ…。」
途中で自信が無くなってきたのか……団長は尻すぼみになっていく……。
「それなら、調べなさいよ。ここはユーストリングス公爵領なんだからできるでしょ。」
「なんでい。知っていたのかよ。ここを任せているのは従兄弟なんだ。もし、ほんの少しでも関わっているのなら、ぶちのめす!」
いやいやいや。ぶちのめす以前に犯罪者なんだから裁けって。




