桶狭間
人間五十年
下天の内をくらぶれば
夢幻のごとくなりけり
一度生を得て滅ぼせぬ者あるべきか
と述べ出陣した
と後世に語り継がれることになりました
桶狭間の戦い。
このいくさは
私。信長にとりましては
特殊な部類に入る戦いでありまして
それはどのように特殊なのか?
と申しますと
大将自らが死地に向かって突っ込んでいく
と言う
家臣が聞いたら卒倒するようなこと。
たとえるのでありましたら
将棋の王様が
なんの援護も無しに
相手玉目掛け突進するようなモノ
でありますか……。
大きな戦果を挙げることが出来たので
良かったとは言うモノの……。
軍議も早々に切り上げ
部屋に籠ったのも
私。信長の考えを家臣に悟られぬようにするため。
家臣にとって困るのは
大将が居なくなることでありまして
(後継者を誰にする?
と言う流動化した状況。
他国から見れば
介入するのに持って来いの機会を与えてしまうことになる上、
後継者争いに敗れた側に加担した家臣のその後が危険な状態となる。
そのため急に大将が居なくなる事態は極力避けたいと考えるモノ。)
これも
将棋の詰みに通じるところがあるのでありますが
飛車は相手に獲られたとしましても
戦いが続いている間でありましたら
再び相手側の飛車として活用されることになる。
ただそれは戦いが続いている間に限定されたことでありまして
これが
どちらかの王が詰まされたところで
戦場においての価値を失うことになる。
これは勝った側にも言えることでありまして
とは言え
飛車(重臣)はそのまま
重臣として高禄を得続けることが出来るのでありますが
一方、
困ってしまうことになりますのが
歩
でありまして
敵陣で戦果を挙げることにより、
成り上がることが出来なくなる。
立身出世を成し遂げる場を失うことになる。
これでは不平が溜まってしまうことになりますので
秀吉は唐入りを目指すことになった。
ここでうまくいかなかったことが
のち天下を治めることになりました
家康の追い風ともなるのでありますが……。
仮に私。信長が
500年前。
天下統一を成し遂げましたのち
どのような次なる一手を考えていたのか?
につきましては
後継者となりました
秀吉の流れからもわかりますように
海外への進出を目指すことになったと思われます。
何故か?
これは織田家が
他家とは異なるメンバー構成となっていることが起因となっておりまして
それは何か?
と申しますと
本貫地を持たない
農業に従事していない
年柄年中動き回ることの出来る
専業の武士団であったこと。
専業の武士団
と言いますと
格好良く聞えるかもしれませんが
要は
職業不詳の皆様が
仕事があるだろうから。
給料が増える可能性があるだろうから
と集まって来ました
扱いかたを間違えてしまいますと
社会の不安定要因になり兼ねない皆様。
(……秀吉もその一人だったのでありますけれどもね)
が軍団の原動力となっておりまして
仮に
フロンティアラインの喪失
いくさの場。
勝つことにより分配することの出来る
報酬となり得る土地が無くなりました。
平和な世の中になりましたので
別の仕事を見つけてください。
を素直に受け入れて頂くことは
まず不可能な皆様でありますので
これが
彦左衛門あたりでありましたら
不満はあっても
門外不出の本に
家康の秘密を暴露するところまでで
収まりをつけることが出来るのでありましょうが
そんな
先祖代々からの主従関係を
結んでいる様な家臣は
皆無
(放逐してしまった)
とも言えるのが
我が織田軍でありますので
傭兵隊長オドアケルのようなことになってしまうのでありましょうね……。
(……光秀もそうか……)
そんな不満分子に変容しかねないモノどものは
日本から遠く離れた
大陸へと渡らせるに限る。
とばかりに
戦線を拡大させることになるのでありましょうね。
補給のことは一切考えずに……。
で。最期……。
(歴史って大事だな……)
フト我に返って
(……桶狭間は何処に行った)




