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殺害決定!  作者: 明智 烏兎
第五話 反魂の代償
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鬼萌との再会

「え、え~っと……つまり君は、“萌ちゃん”って事? 強の妹で、半年前に亡くなった」

「そうだよ真君。あはっ、久し振り!」

「うっぷ……」


 神社での衝撃過ぎる再会から、今は宇佐美家二階、真の部屋へと場所を移している。

 そりゃそうだ。親友のこんな痴態、これ以上衆目に晒す訳にはいかないからな。

 いやまぁ、真も本当はこんな変態、部屋に入れたくは無かっただろうけどさ。


「鬼君が鬼さんを降霊し、鬼さんはそのままお兄さんの肉体を借りた……という事ですか?」

「そうだよ宇佐美さん」

「うーん……素人には降霊術なんて無理だと思います。何者かの手引きがあったのでは?」

「そうなの? そんな事より真君っ! ねぇねぇ見てー、わたしの制服姿! じゃじゃーん、初お披露目です! 可愛い?」


 弾みをつけて立ち上がった萌はその場でクルンと一回転。ミニ過ぎて目のやり場に激しく困るスカートの裾を摘まみ、白い布地を見せつける。ついでにそこからはみ出た棒状のモザイクも、惜しげもなく。

 その拍子に弾け飛んだ第二ボタンが、水乃の額にヒットした。


「か、鏡見てないのかな?」

「いたた……お、恐らくですが、鬼さんはお兄さんの肉体を借りて生前の姿に化生していると、そう思い込んでいるのではないでしょうか。幽霊は見たいモノしか見えないという説もありますし……」

「え? 化粧? してるよ~。薄~く分からない程度にだけどねっ!」

「どうせなら誰だか分からない程度に厚化粧してください」


 真の泣訴に苦笑する水乃は、すぐに表情を引き締めて言う。


「真様。この冗談めいた状況、実は結構問題なんです。鬼さんは『幽鬼』としての側面より、『怨鬼』としての側面が色濃い。降霊術が不完全だった事……そして何より、大きな未練が彼女の魂を歪ませています。このままでは、鬼君の肉体が鬼さんに奪われてしまう可能性も出てくるでしょう」


 おいおい、それはあらゆる意味で阻止しなければマズイじゃないか!


「マジかよ……どうすりゃいいんだ?」

「上様、ご安心召されませ。『幽鬼』を成仏せしめる手立てと申せば、答えは一つ」

「なるほど、未練を断ってやりゃいいってワケか。さすがは火柩、伊達にあの世は見てねぇぜ」


 内緒話に業を煮やして、強……もとい萌が頬を膨らませる。


「さっきからコソコソ何話してるのかなぁ……せっかくこの世に戻って来たのに、真君ってば余所余所しいし。それに……そのちっちゃい子は何なの? わたし、真君は宇佐美さん一筋だと思ってたから仕方無く身を引いたのに、いつの間にかそんな子供侍らせてエッチな格好させて……もしかして真君ってぇ、変態さん?」

「テメェに言われたくねぇよ!」


 全くだこの変態野郎!


「真様落ち着いてください! 今の言葉にはヒントが隠されています」

「え……あぁそっか! 萌ちゃん、火柩の事が見えるんだな!」

「いえ、そっちじゃありません。今の台詞の中に、鬼さんが抱える未練の正体が隠されていたんですよ。つまり……鬼さんは真様の事をお慕いしていたようですね」


 仕方無く身を引いた、という部分か。それは確かに、大きな未練になっていそうだね。


「オレの事を……そ、そうか。そう思うと何だか急に可愛く見え」

「逢いたかったよ真君。ウフッ!」

「ねぇよ」


 そう言うな。親友の身命が懸かっているんだから。


「まぁまぁ。ここは一つ、同じ幽霊である拙者にお任せあれ。もし萌殿、其方どのような用向きでこちらに参られたので?」

「うにゅ? 何でここに来たかって事?」


 人差し指を顎に当て、小首を傾げる萌。


「左様にござりまする」

「それはねぇ、真君にもう一度逢いたかったからだよ。真君に逢って、わたしの想いを伝えたかったの。す……好きでした……って」


 好き“でした”、か。どうやら危惧するまでもなく、萌は自分の立場を良く理解しているようだ。

 そう……萌はすでに、亡き者なのである。


「分かってるの。真君には初めから宇佐美さんが居たし、今はもう、わたしはお化け。この身体もお兄ちゃんに返してあげないと、ね。でも……でもね! 最期に一度だけ、思い出を作りたい。わたしと真君の──魂に残るように」


 溢れる想いを、言葉に託す。

 これはかなり萌えるシチュエーションじゃないか。叶えてやれよ、真。


「萌ちゃん……分かったよ。萌ちゃんの頼みなら、何でも聞く」

「……本当に? 本当に何でも聞いてくれる?」

「あぁ、何でもだ」


 大きく頷きを返す真を見て、それまで不安に曇っていた萌の表情も明るくなる。


「ありがとう真君! それじゃあ早速、しゅっぱぁーつ!」

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