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6.全員集合

6.全員集合



「じゃあ、ステアは何であの部屋で眠っていたのかも、どれぐらい眠っていたのかもわからないってこと?」

「ええ、そうなんです。自分が眠る前の記憶がほとんどなくて…唯一ある記憶と言えば、」

「言えば?」


『この部屋は君の敵意のある人間には開けることはできないんだ。だから、君に危険が迫ったらここに逃げ込むといい。』


「と、いう声だけです。」

「それは誰の台詞?」

「それも思い出せないのです。」

メイドのスリィと彼女がお城で出会った人の言葉をしゃべるうさぎステアは、この不気味なお城には似合わないようなきれいな庭を歩いていた。

庭にはたくさんの花と植木とオブジェが見るものを和ませていた。

「でも、とにかくスリィがあの部屋のドアを開けてくれなかったら、私はこれからも永遠とあの部屋で眠り続けなければならなかったでしょう。

スリィ、どうもありがとう。」

「え?いや、でも、本当に偶然だから…。」

少し、庭に見とれていたスリィは、ステアの思いがけない言葉になんだか気恥ずかしさを感じ、あたふたとしてしまった。

そもそも、彼の部屋には必死の思いで逃げ込んだだけなのだから。

ステアはやんわり微笑んで、彼女から視線をそらし、城の中を見た。

「ところでスリィ、あなたの探している仲間はどんな人なのですか?」

「え〜と天使だから白い翼があって、縦ロールで青いつなぎを着ていて…。」

「…じゃあ、彼は違いますね。青いつなぎは着ていますけど。」

「へ?」

スリィが中を見ると、そこにはあのセシルと彼の攻撃から逃げている少年の姿があった。

少年は青いつなぎを着ていて、ストレートヘアーでそれはスリィのよく知る人物だった。

「ブルーム?!」

「彼も仲間ですか?」

「彼も、というか彼は探していた仲間の身体の人格で、彼は普段はいないんだけど、でも一応彼に一緒に旅をしていて…。」

「??」

「とにかく、彼も仲間だから、助けないと!!」

セシルの手にはあの拳銃が握られており、それに加えて黒い物体たちもブルームを追い詰めていた。

スリィは周りを見渡し、近くに置かれていたテーブルセットの椅子を持ち上げ、それを勢いよく窓に向かって振り下ろした。

激しい音をならし、窓は砕けた。

スリィはひょいと窓を飛び越えるとステアの方に振り返った。

「ステアは危ないからここで待ってて。」

「スリィ、でもあなた丸腰でしょ?どうやって奴らと戦うのです??」

「誰も戦いに行くつもりはないわ。」

スリィは余裕のない笑みを浮かべた。

「ちょっとは敵の数減らしてあげないと…こう見えても逃げ足は速いの。それに…。」

「それに?」

「そろそろあいつも帰ってくるわ。」

そう言ってスリィはステアにウィンクした。

そして、ブーツの音を響かせて走っていってしまった。

「スリィ……。」

ステアはその場でしばらく心配そうに彼女を見送っていたが、やがて彼は庭の奥に走っていった。

「ブルーム!!」

「スリィ?!バカ、何で今出て来るんだよ?」

「あんたが一人で追われてるから分担してあげようと思ったのよ!」

スリィに気づいた何体かの黒い物体が彼女にめがけて擦り寄ってきた。

彼女はブルームと反対方向に走る。

「おやおや、メイドのお嬢さんもいたのですね。」

セシルの冷たい声がしたかと思うと、銃声が響き彼女の頭上で何かが割れる音がした。

スリィはとっさに前方にジャンプした。

すると、そこに螺旋階段の飾りの一つが落下した。

「二人とも、どこに逃げようというのですか?」

セシルの声を無視し、二人は柱の影で合流した。

「で、何であいつに追いかけられてるの?」

「実は……。」


さかのぼる事小一時間前、セシルの身体を乗っ取った天使のサニーとブルームはお城の中をいろいろ捜索していた。

そして、王座のある塔で、王座に座るガイコツを発見した。

ガイコツにはボロボロになったドレスが着せられていて、とても不気味な様子だった。

サニーがそれに近づくと、突然、彼は頭をおさえてうずくまった。

「サニー?」

「ブルーム、早くここから逃げて、セシルの意識が…くっ。」

サニーは懐にしまってあった、セシルの銃を投げ捨てた。

「はやく行け!!」

「サニーこそ、はやく俺の身体に戻れ!!」

「そんな暇はないんだ!僕が彼を食い止めている間に…っ!!」

「サニー!」

その場にうずくまるサニーを見て、ブルームは少し迷ったが、すぐに出口に向かって走った。

今まさに彼が出口から出ようとしたとき、ドアに銃弾が撃ち込まれ、ブルームは静止した。

「残念ですね。」

ブルームはゆっくり振り返る。

すると、転がっていた銃を拾い上げ、銃口をこちらに向けているセシルの姿があった。

サニーの姿はどこにも見えない。

「私がこんなに早く目を覚ますなんて、予想外でしたか?」

「ちぃ…。」

ブルームは絶体絶命である。

ふと、彼の背に何かが当たっていた。

ドアノブである。

しかも、さっきの銃の衝撃か、それとも元からなのか、ドアから外れかけている。

恐らく、強く引くと簡単にドアから抜けてしまうだろう。

ブルームは迷うことなくドアノブを強く引き、外れたそれをセシルの方に思いっきり投げつけた。

対応の遅れたセシルはそれを銃で撃った。

その短い間ブルームはドアに体当たりし、そのまま螺旋階段をドアのソリのようにして滑り降りていく。

途中で、ドアが限界に来たのでそこから床に飛び降りて軽々と着地した。

すると今度はブルームの姿を確認した黒い物体が、彼に迫ってきた。

セシルも銃を片手に階段を駆け下りてきている。

とりあえず、ブルームは逃げることにした。


「と、いうわけなんだ。」

「なるほど。」

ちなみに長い話ではあったが、スリィに説明したのはわずか数秒の間のことである。

「サニーは?」

「まだ行方不明だ。」

「そう、じゃあとりあえず。」

「また逃げるか。」

二人は別々の方向に再びダッシュした。

スリィの逃げた方向にたまたま黒い物体が一体。それをよけようと方向を変えるともう一体。

スリィが「やばい」と思ったとき、彼女の前にいた黒い物体の上に何かが落下してきて、黒い物体は倒れた。それは土のたくさん入った植木鉢だった。

見上げると階段の上でステアがぴょんぴょんしていた。

「ありがとう!!」

スリィは再び走り出す。

スリィはそのステアのいる階段周りを走った。

よってきた黒い物体めがけてステアが鉢や庭道具(先の鋭いスコップ等)を落とす。

なかなかのチームワークである。

「調子に乗るな。」

セシルは銃を下ろし、両手を合わせたかと思うと何事かをぶつぶつ呟いた。

するとステアのいる階段が一瞬揺れた。

「え?」

その後すごい音とともに、階段が折れ、崩れ始めてきたではないか。

ステアは階段から投げ出され、固い床に向かって落ちている。

階段はスリィの真上に崩れ落ちている。

「きゃぁ〜〜〜!!」

「わぁ〜〜〜〜!!」

「ははははは……?」

スリィとステアの悲鳴とセシルの冷淡な笑い声と階段の崩れる音は途中でぴたりとやんだ。

見るとスリィの足元に魔法陣が現れている。

彼女の真上で階段の瓦礫は静止していた。

そして、ばさばさと羽ばたきが聞こえたと思うと、ステアを抱えたサニーがゆっくりと地面に降り立った。

そして、階段の瓦礫はスリィをよけ、セシルの方に飛んでいった。

「何?!」

セシルはすばやく何かを唱えると、これらを自らの後ろにはじいた。

「魔法は今まで温存していたのかい??」

黒い羽根が降ってくる。

螺旋階段の一つにナーレスが不適な笑みを浮かべて立っている。

「おのれ……。」

セシルは恐ろしい形相でナーレスをにらみつけた。

ナーレスはスリィたちの元に降り立った。

スリィも立ち上がり、ナーレスを先頭に3人と1匹はセシルと対峙した。

ナーレスはまっすぐセシルを指差した。

「全員集合。覚悟しやがれ。」

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