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2.招待

2.招待



宿泊先を突然、謎の団体に襲われ、僕たちはとりあえず、国を囲んでいる山の一つに身を潜めることにした。

あの襲ってきたものたちは一体何だったんだろうか?

僕には黒くうごめく人間ではない物体に見えたが、攻撃していたナーレスは奴らの正体がわかったのだろうか??

聞きたいところだが、僕とナーレスが交代で見張りをすることになったため、残念ながら僕とナーレスは離れたところにいた。

僕の横ではスリィが小さな寝息を立てながら、すやすやと眠っている。

今回の旅は人間の彼女にとってはなかなかキツいものになってしまったようだ。

やがて、空から数枚の黒い羽根が何枚か振ってきたかと思うと、ナーレスがゆっくりと降りてきた。

「異常なし。交代だよ。」

僕は頷くと翼を広げ、ゆっくりと飛び立った。

ナーレスとスリィの二人っきりになるけれど、たぶんナーレスはスリィに何もしないだろう。

絶好のチャンスじゃないの?と、からかい半分で言うとナーレスがまじめな顔で「愛があってこそのなんとかさ。」と、答えたのを覚えている。

ああ、ナーレスはスリィが好きなんだな。

スリィはどうなんだろう?

それとも、実は僕の見ていないところで二人はラブラブなのかな?

あれかな、今流行のツンデレって奴かな(笑)。

そんなことを考えて、僕は一人で苦笑いしてしまっていた。

あんまり高く飛ぶと目立つので、木の陰に隠れるようにして、ゆっくりと移動する。

二人が休んでいるところを囲むように、ぐるりと何周か周って、異常のないことを確認した。

二人のところに戻る前に、僕は一本の高い木の枝に止まり、お城を見た。

もう深夜だというのに、お城の窓からは赤い光が漏れていて、不気味さを演出していた。

ナーレスの話では、王家は途絶え、国は村になったと言っていたけれども、人々はここを国だと語り、外から来た僕たちは謎の奇襲攻撃にあった。

何で、僕たちが?

いけない、考えていても今はわからない。

とりあえず、明日は国の人たちに話を聞いてみたほうがよさそうだ。

勝手に一人で納得し、僕はナーレスのところに戻ろうと、翼を広げ枝からジャンプした瞬間、銃声が響き渡り、僕の肩に熱い痛みが走った。

自分の考えに囚われすぎていたようで、周りに溢れている恐ろしい殺気に気づかなかった!

肩をやられ、うまく飛べなくなった俺はふらふらと地面に着地し、そこから走って逃げようとしたが、足がもつれ、結局その場に倒れてしまった。

足音が僕の方に近づき、僕の横で止まった。

「だれ?……」

「天使様ともあろうお方が私の気配にお気づきになりませんでしたか?

感傷に浸っているところを、お邪魔して大変申し訳ありませんでした。」

若い青年の声だった。

丁寧な口調だが、その響きは冷たく、僕を嘲笑っていた。

「本当に……邪魔してくれたよ…。」

僕は背中に冷たい汗が流れるのを感じながら、言葉を返す。

ゆっくりを顔をあげると、銀色の髪をした色の白い青年が、薄く笑いながら僕を見下ろしていた。

「初めまして。城の使いのもので、セシルと申します。」

きっと、さっきの銃声はナーレスにも届いているはずだ。

彼がここに駆けつけるまで、どうにか時間を稼がなければ。

「僕は別に君に名前を名乗るつもりはないよ。それより、何で僕を殺そうとするの?宿に現れた奴らも君の手下かい??」

僕の質問に彼は答えることはなく、かわりに僕の傷口を踏みぐりぐりとえぐった。

あまりの痛さに意識が吹っ飛びかけた。

「安心してください。殺すわけではありません。女王様の命令であなたをお城に招待いたします。」

「!」

僕が言葉を返す前に、銃声が再び響き渡り、僕は意識が完全に遠のいていくのがわかった。

やがて、奴は僕をゆっくり抱えると、お城の方に向かって歩き出した。


「俺の仲間に傷をつけて、勝手に持ち帰られるのは困る!」

ナーレスがセシルの前に空から降り立った。

「彼を放しなさい。」

後ろからはスリィがナーレスの召喚した魔物とともに立ちはだかっていた。

セシルはナーレスのほうに冷たい視線を向けながら、銃を手に取り、サニーの額にあてた。

「持ち帰るのはありません。少々手荒ではありましたが、皆さんをお城に招待しただけです。普通に招待しても来てくれそうになかったので、この天使様をえさにさせていただきました。今ここで、お二人が私に攻撃をされると残念ながら天使様の頭は吹っ飛びます。

それでもいいんですか??よくなかったら、道を開けていただきたい。」

ナーレスが左手に魔法陣を出現させる。

セシルはそれを一瞥し、

「あなたの魔法陣は確かに強力ですが、私だけでなくこの天使様も巻き込んでしまいますよ。

今かなりの重症を負っている彼に、それだけの攻撃が耐えられると思いますか?」

「……。」

ナーレスは魔法陣を消し、道を開けた。

「ものわかりがよくて大変結構。

後ろのかわいいお嬢さん、少しでも近づいたら天使様の頭に銃を撃ち込むので、そこでじっとしていてくださいね。」

「っ!」

「それでは失礼。」

セシルはサニーに銃を突きつけたまま、ゆっくりと歩き出した。

ナーレスの横まで来ると、彼は足を止めた。

「そう、先ほども申しましたが、お二人もお城に招待いたします。

明日の日暮れまでにお城にきてください。

私の名前はセシル。

城の者に私の名前を言えば、中に入ることができます。

来なかった場合は、この天使様の命がないとお思いください。

楽な死に方はさせてあげませんので、よくお考えになったほうがいいと思いますよ。

では失礼します。」

セシルはそういい残して、サニーとともに闇の中へ消えていった。

ナーレスはスリィの横にいた魔物を返還した。

「どうするの?」

スリィの問にナーレスは眉根を寄せた不器用な笑顔を見せ、

「もちろん、ご招待を受けるさ。サニーが怪我をしていること以外はおもしろい展開だよ。」

ナーレスは怒っている。

スリィはナーレスの殺気を感じて、やっかいなことになったなぁとため息をついた。

「何で、ヒロインの私じゃなくてサニーが囚われてるの??」

実はちょっと不満なスリィの呟きにナーレスが苦笑いしたのは言うまでもない。


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