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主人公 福⑥

 さて、ここまでで主人公、仙堂 福と言う人物がおわかり頂けたと思う。要約すると、バカで巨乳で格闘マニアの霊能者。

 「バカで巨乳……」

 福の額に青筋が浮き出ているようだが続けよう。そして、過去どんなスーパーヒーロー、ヒロインも持ち得なかった空前絶後、天下無二、驚天動地、言語道断、反則寸前な超絶能力の持ち主。

 すなわち!

 『作者と話が出来る』スキルを持つ能力者なのだ!

 「……なんの役にもたたねー」

 福の右ほっぺが引きつっているが、そんな事は無い。人生経験豊富なオジサマが、いつなんどきもあたたかく見守ってあげているのだ。多感な年頃のヒロインとしては実に心強いはずだ。

 「説教臭いおやじから常に見張られてるだけじゃん!」

 ……作者もいい大人であるのでいちいち腹を立てたりはしない。

 「やだー。変態ストーカーおやじー」

 なにおう!

 

 「ふうー。やっと着いた」

 小道伝いにしばらく歩くと急にあたりが開け、廃屋が現れた。コンクリート作りの三階建て。以外に大きい。学校の体育館と同じくらいはある。ここに何があるのか。

 「雑誌の心霊スポット紹介に載ってたんだ。でも写真とずいぶんイメージが違うなぁ。そんなに古くないし」

 そう言う記事は雰囲気を出す為にピンポイントで『らしい場所』を撮って載せるのだろう。で、どんな場所なんだ? ここは。

 「うーん。確か、昔はなんかの施設だったけど、潰れちゃって責任者が自殺したんだって。それから幽霊が出るようになったらしいよ」

 陳腐、かつ、判で押したような設定だな。

 

 「よーし。ここで一発ドカンと撮ってェ。エルメス、ゲットだぜぃ」

 エルメスとはファッションブランドのHERMESの事か?

 「そーだよ」

 じゃ、この心霊写真で稼いだ賞金は……

 「うん、エルメスのバック買うんだー。あたしの趣味」

 高校生の癖に、趣味が高級ブランドバックの収集かよ。それでこの小遣い稼ぎか。

 「だって、家から貰うお小遣いじゃぜんぜん足んないもん」

 高校生にブランドバックをホイホイ買える額の小遣いを与える親は、崖っぷちで子供の背中にドロップキックをぶちかましてるようなものだ。へたすりゃ、自分も一緒にノン・ロープ・バンジーだぞ。

 だが、この小遣い稼ぎは危ないんじゃないか?

 「だいじょぶだよ。あたし、これで危ない目に会った事無いもん」

 フツーの人はさっきの幽霊でも充分あぶないじゃん。

 

 しかし、それならばけっこうかわいいのだから、モデルのバイトでもやればいい収入になるのではないかな?

 「やだ。怖いから」

 怖いって……この小遣い稼ぎの方が怖いだろう。

 「一度、街で声かけられて、ついてったらAVに出されそうになったんだもん」

 その巨乳じゃなあ……。

 「頭きたからその場で全員ぼこぼこにして、撮影機材全部叩き壊して帰ってきたけどね」

 かわいそうなAV撮影隊。……まあ、いかがわしい危険なバイトに手を出さないだけ立派である。

 

 福は入り口を探す為に建物を回りこむ。たどり着いた方とは反対に面した側にそれはあった。大きなガラスの開き戸は一部を残してほぼ全壊している。

 福がこの入り口から屋内に踏み入った頃には、日は既に半分以上沈みかけていた。

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