主人公 福②
探しても作者はおらんぞ。
「ちげーもん。別の人を探してんだもん」
幼児っぽい声で『ちげー』とか言うな。あのー。
「なによ」
いや、だからさ。気になんないの?
「だから、何がよ」
あんた、作者と話してんだよ。と、言う事はすなわち、自分が二次元世界の住人って事がわかるだろ。驚かないの?
「二次元世界ってなに?」
自分が物語の登場人物で、作者の頭の中にしかいないって事がショックじゃないのかって聞いてんの。
「かんけーないよ。あたしはあたしで、ここで生きてるもん。自分で息して、自分で考えて、自分で行動してるもん」
うーむ。コギト・エルゴ・スムか……作者の頭の中を一つの小宇宙として考えた場合、その内在する設定と人物が……
「小人? エスカルゴ?」
何を聞いとるんだ。『コギト・エルゴ・スム=我思う、ゆえに我あり』デカルトと言う偉い人が言った言葉で、簡単に言うと『周りの世界全てが嘘臭くても、嘘くせーと思ってる自分がいる事は間違いないよー』と言う意味だ。たぶん……
「そうそう。小人のエスカルゴだよ」
理解してないな……。わざわざ調べて説明してやったのに。まあいい。では、自己紹介でもしてもらおうか。
「えー。なんでー? 誰によ」
作者と、この物語を読んで下さっている読者様にだ。
「めんどくさ~い。あんた作者ならあたしの事知ってんでしょ。やっといてよ」
……まあ、本来、それは作者の勤めかも知らんが、なんかむかつくな。
彼女の名前は鬼瓦権三郎四郎左衛門。身長百m、体重六万トン。口から放射能熱線を吐き、ギザギザのシッポがチャームポイントの歌って踊れるナイスガイだ。
「ちょっと待てィ、このやろう!」
なんだよー。人任せにするからこうなるんだろー。
「子供みたいだな……あたしは仙堂 福。十五歳の女の子。高校一年生。こんでいい?」
ずいぶん簡単な紹介だが、取り合えず勝った気がするので良しとしよう。
ん? 今の説明で、一つ気になったのだが、十五歳だな?
「うん」
高校一年生? 誕生日が来てないのか?
「そ、そうだよ」
ふーん。誕生日はいつ?
「別にいいじゃん」
当てて見せよう。四月一日だろう。
「あー。気にしてんのに~」
究極の遅生まれだな。デカルトの話の時からバカだバカだと思っていたが。やっぱり。
「四月一日生まれってあたしだけじゃないだろう! 失礼だぞ」
確かにそうだが、会話してるだけで誕生日を簡単に見破られる奴はお前くらいなもんだ。さて、名前、年齢、学年、誕生日の他に続けて自己紹介をして貰おう。
「……」
おーい。福~ぅ。……すねちゃった。しかたない。以降は作者がやろう。
「さっきみたいに嘘言うなよな!」
わかってるよ。これ以上やったら読者様が混乱するだろ。
まず、髪。髪型は肩よりすこし下くらいのロングを左右後方でまとめている。トロリと滴るキャラメルソースを思わせる艶やかに茶色がかった髪だが、染めている訳ではないようだ。
顔は……まあ、ヒロインなのでましな方だ。
「『まあ、ヒロインなので』ってなんだよ!」




