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3ヶ月後

 廃屋に大志を置き去りにして3ヶ月が経った。季節はすっかり秋めいて、そろそろもう一枚上着を追加するかと言う頃である。

 あれ以来、学校の行き帰りに大志を見かける事も、しつこいメールもなくなった。それ以前に福が大志の事をすっかり忘れていた。薄情なアマである。

 「セクハラじゃね? その発言」

 学校帰りである。福は制服姿だ。チェックのスカートに灰色のブレザー。三つあるブレザーの一番上のボタンは福の巨乳ではじけそうだ。蝶結びにしたネクタイがかわいい。

 しまった、夏服も描写しておけば良かった。でも、制服でもグローブは付けてるんだな……。

 「ファッションだからね。あっ」

 小さいディバッグを肩から垂らし、アイス片手に作者に文句をたれつつ道を歩いていた福が足を止めた。ブランド品を扱うブティックのショーウィンドウの前。

 

 「いやーん。このヴィトンのポーチちょーかわいー」

 特価の張り紙のある小さいポーチに福の目が釘付けとなった。

 しかし、女性の大多数はどうしてブランドとか期間限定とかの言葉に弱いのであろうか。作者などは服や鞄は『着れればいい』、『必要なものが入り、持ち易ければいい』の類であるので、あんな小さなマーク一つ付いているだけで値段が万単位跳ね上がるブランド品など、売るほうも買うほうも気が知れない。

 「ブランドはステータスよ。女の品位なのよ」

 値段の高いものを持つことイコール人間の品位が上がるとは思えんが……

 「ほっといて。あーん、ちょっと足んないなー」

 福沢諭吉先生が3名ほどいらっしゃらない事は、ちょっとではない。

 「くそー。こんな時あいつがいれば……」

 あいつとは福が悪霊の巣におびき出し放置した哀れな青年、恭二屋 太志の事か?

 「ちょっとぉ。誤解されるような言い方しないでよぅ。少し懲らしめてストーカー行為をやめさせようとしただけじゃない」

 お財布代わりくらいにしか思い出されない、悲しい大志青年であった。

 

 「そー言えば、あれから酷い目にあったって言う噂も聞かないわねー。よ~し、連絡付いたらこのポーチおごらせよう」

 この主人公でこの先やっていけるのだろうかと言う作者の不安をよそに、福は鞄から携帯を取り出した。

 「……、……、あ、もしもし、恭二屋さんですか。仙堂ですけどぉ、大志君いますか」

 相手は大志の母親であるらしい。もう少しマナーをわきまえた会話が出来んのかね? まったく、最近の若い娘は……

 「説教中年」

 ぐっ。

 『3ヶ月くらい前からですかねえ。青い顔して帰ってきたと思ったら、それ以来見る見るやせて、顔色もすっかり変わって、食事に手も付けないんですよ』

 「え゛……」

 状況からすると悪霊に取り憑かれ、生気を吸い取られている最中と思われるな。

 『最近はお友達と毎晩どこかに出かけて行って……』

 ここで福は呆然として携帯を切った。

 

 「ヤバイ。まずい」

 どした?

 「こんなにじわじわ苦しめるなんて思わなかったよー」

 取り憑かれちゃえーとか言ってたくせに。

 「涼さん、急いで怖がらせるって言ってたもん」

 はて? そんな事言ったっけ。

 「ちょっと反省して、あたしにまとわり付くの止めて貰えばそれでよかったのに」

 あの筋肉変態悪霊家屋放置プレイでそんな意図は絶対に伝わらないと思うが……。

 しかし、涼は怖がらせて奪取した魂が報酬になると言っていたではないか。一気にスパンと取り殺しちゃう分には問題無いのか?

 「殺す!? なんで!?」

 いや、なんでって……奪取とは奪い取る事だぞ。魂を取られた人間は、普通、生きていないと思うが?

 「ダッシュって。ちょー急いでってことじゃん。必要なのは恐怖のエネルギーだから急いで怖がらすのがいいって事じゃないの!?」

 

 ……。

 ちょっと待て。

 ・奪取、奪い取ること。力ずくで取ること。

 ・ダッシュ、dash。激しく突進すること。特にスポーツで、短い距離を全力疾走すること。

 話の流れからすると、どー聞いても前者だと思うが?

 「やだ。やだよぅ。あたし人殺しになっちゃうよう。ど、どうしよう、作者ぁ!」

 どうしようって……まず、国語を勉強する事だろう。

 「ふざけてる場合じゃないよ。他の人も巻き込んでるって。助けてよう」

 福の顔から赤みが消え、目に涙が浮かんでくる。しかし、助けてと言われてもなあ。

 「ふえっ。ママもパパも……弟も人殺しの家族になっちゃうよぅ。えっ、えっ」

 あー、もう。とにかく、あの廃屋に行く事だ。現状が判らん限り対策の立てようがあるまい。

 「う、うん!」

 福は携帯をバックにしまうと、あの廃屋に向かって走り出した。

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