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筋肉おやじ③

 建物の二階、広いフロアに場所を移して話を聞くことになった。日は完全に地平線に没したが、3人の真ん中にポツンと置かれた蝋燭が、あたりをちらちらと照らし出している。

 幽霊女は名前を涼と名乗った。体育座りの福の正面で正座から半身を崩し、左手で体重を支えて座っている。作法には(もと)るが和服ではなんとも男心をくすぐる座り方である。

 「 『もとる』ってなによ?」

 ……悖るとは道理にそむく、反する事である。辞書を携帯しろよ。

 「作者がいれば辞書代わりに教えてくれるからいいじゃん」

 ふざけんな。

 

 聞けば涼はここで、この筋肉おやじにレクチャをしていると言う。

 「なんのレクチャしてるんですか?」

 おやじに出されたお茶をすすりながら福が聞いた。

 「悪霊の」

 「はぁ?」

 「だから、悪霊とはどうあるべきって言う基礎を教えてるのね。正しい悪霊になるために」

 「正しい悪霊って……」

 その意味で言うと誤った悪霊と言うのもいる事になるが……。悪霊と言った時点で、もう何か誤っている気がする。

 筋肉おやじは名を今谷 松千代と言うそうだ。

 「いまたに まつちよ……未だにマッチョ……死んでもいまだにマッチョって事?」

 「ねー、笑っちゃうでしょ」

 享年三十二歳。元このボディビルジムの経営者。

 「ボディビルのジムだったんだ。ここ」

 趣味のボディビル好きが高じ、借金してジムを立てたはいいが、先を考えないあほな経営と不況の為にあっという間に倒産、破産。

 「まあねー。ここ国道からずいぶん外れてるし。駅からもすげー遠いし」

 首を吊るが首周りの筋肉が邪魔をし、一晩かけてやっと絶命。誰でもいいから迷惑をかけてやろうと、現在は五級悪霊を目指し涼のレクチャを受けている。

 

 「五級悪霊? 悪霊にもランクがあんの?」

 「そりゃあるわよ。悪霊促進協会の検定でね」

 「悪霊……促進協会って……」

 出来れば促進してもらいたくない協会である。福は苦笑いを我慢できなかった。

 「なによー。悪霊が互助会作っちゃいけないっつーの?」

 「いえ、そんなこーとーはぁ……」

 作ってはいけない……と作者は思うぞ。

 「ちなみにぃー。あたしはぁー。自慢じゃないけどぉー。三級認定の悪霊」

 自慢になるかどうかすら判らない、得体の知れない認定である。

 

 「三級……三級の涼さんがあんなに怖いとすると……」

 「あら。あんなに怖いなんて、うれしい事言ってくれるじゃない」

 「じゃ、リ○グの○子とか、お○わさんとかは1級?」

 「いや、あの辺になるともう、1級より上のS級ねー。あと将○っていう爺さんもいるけど古すぎてボケちゃって……」

 俺……ぜってー祟られるな……読者の皆様! 作者は良い作品をお届けする為、危険を顧みず執筆活動を行っております!

 「やーい。祟られろー祟られろー」

 こ……こいつはッ!

 「ね。さっきからホント、誰と話してんの? 大丈夫?」

 「あ、あはははは」

 悪霊に心配されてやんの。

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