主人公 福①
どうも。大間 雷蔵と申します。
普段はノクターンでHなお話を書いてるんですが、たまにはフツーのお話も書いてみたくなりまして。
Hなお話を期待された方がいらっしゃいましたらゴメンナサイ。
と、言う訳でこのお話はお子様でも安心して読めます。何かのタメになる事は絶対にありませんが。
肩の力を抜いて、楽しく読んで頂ければオッケーです。
それではっと、はじまり、はじまりぃ~。
暑い! とにかく暑い!
時刻は午後四時頃だと言うのに、容赦無く照りつける八月の太陽、四方から聞こえてくる油蝉の声、地面から立ち上る陽炎、噎せ返るような草木の匂い。不快指数はうなぎ登りだ。
ここは郊外からかなり外れた場所にある緑地。森と言うほど緑でなく、空き地と言うほど閑散とはしていない。数えるほどだが遠くに建物も見える。
都市開発が不況により中断され、このような無人化した地域が残されたのだ。その為、交通の便が悪く、最寄の駅まで一時間は歩く。道路もあるが、日中でも車はおろか人影すら無い。
突然、シュー、シューっと数回、茂みの中から何かの噴霧音が聞こえた。
「いないなぁ……暑ぅー」
噴霧音に続いて声が聞こえた。言葉にすると『可愛らしい』、『コロコロした』と言う感じの声。と、言うより幼い子供のような高い声である。
次にきょろきょろあたりを見渡しながら、片手に虫除けスプレーを持った人物が、がさがさと茂みを掻き分け、わずかな空き地に歩み出てきた。先ほどの噴霧音はこのスプレーからのものらしい。もう片方の手には、かわいらしいピンクのデジカメが握られている。
「気配はするんだけどな……」
その人物は単3電池ほどの虫除けスプレーを腰のポーチにしまうと、これも腰に付けたホルダーからペットボトルを取り出し、ミネラルウォーターで喉を潤した。
十代の少女のようだ。女と言うには色気が無さ過ぎるし、幼女と言うには手足が伸びすぎている。
黒いジャングルブーツにカーキー色のデニムホットパンツ。半袖ワークシャツに、つばの広いキャップを被っている。パンツとシャツは吸収した汗のおかげで肌にへばり付き、某炭酸飲料のボトルの如く素晴らしい曲線を持った凹凸をあらわにしていた。
むき出しの二の腕、太ももは茂みをかき分けて来ているので、若干の切り傷と虫刺されの跡が見て取れる。
ジャングルブーツを履き、虫除けスプレー持参と言う事は、最初からこのような場所に来ることが分かっていたようである。なのに、こんな二の腕、太もも剥き出しの服装をしている所から、彼女が多少ぬけている、または、考えが足りないと言う事が容易に想像できる。
「よけいなお世話よ」
滴り落ちる汗を拭う両手には、黒いフィンガーレスのグローブを付けている。この暑いのに。
「藪とか抜けるとき、手ぇー切っちゃったらやだもん」
……ちょっと待て。今、作者の説明に二度も受け答えしたな。
「うん」
『うん』って、また……つかぬ事を聞くが……えーと。まさか、今までの説明が聞こえているのか?
「聞こえてるよ。さっきから頭の中で『子供みたいな声』だとか『色気が無い』とか『汗でボディライン丸見え』とか。むかつくぅ!」
えー! いや、いや、いや。確かに漫画などで登場人物が説明的な表現に対し「ほっとけ」とか「しらん」とか突っ込む場面を見た事があるが……。
「だからなに!? あんただれよ?」
誰って……作者は……作者である。
「作者ァ?」
うむ。この物語の作者である。
「ふーん」
と、言うと彼女は再びあたりを見回し始めた。何かを探しているようだ。




